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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
神保町「鶴八」訪問。
神保町「鶴八」久々の訪問。

先々週だったか昼間に電話したが出ない。アレ?と思ったら、定休日の水曜日だった。そうかそうかと思って仕事に戻ったら、知らぬ間に携帯に「鶴八」より不在着信あり。掛け直してみると「鶴八最後の弟子」が出た。休みでも何か仕事があって店に居て着信履歴を見たらしい。「今日はでも定休だよね」「はい、お休みです」「じゃあ、また電話します」という、なぜ掛け直したかサッパリ分からない会話であった(笑)

西大島「與兵衛」も水曜日定休だが、電話しようとすると、なぜか大抵、その日が水曜なんだなあ(笑)

この日は入店したらカウンタにはまだ誰も。菊正の冷酒を所望。お通しは、ハマグリの柱醤油づけ。のんびりと親方や女将さんと雑談など。台風やら仕入れの話。親方は、15号の時は計画運休が明けたので駅に行ったら3時間待ったとか。19号の時はさすがにキャンセルばかりで店も休業。まあ仕入れも大変だろうし。

いつも最初は白身の刺身と決めているので、親方が「鯛でいいですか」と切ってきた。ここで鯛があるのはそんなに高い確率ではないのだが、上品な旨味がある質の良いもの。身もまだプリプリに活かっている。

「鶴八最後の弟子」に豊洲の駐車場事情など聞くと、やはり足りなくて大変なのだという。彼はバイクで行っているのだが、「鮨竹」が自転車で豊洲市場から帰るのにすれ違ったと。配送は頼んでいるようだが、朝早くから仕事熱心ですな。「新橋鶴八」はタクシーで行っていると聞いたが。

つまみは、塩蒸し。旨味も香りも凝縮した仕事。北海道の天然ブリは癖の無い脂、噛み心地良し。サバはしっかり〆てあるが脂が乗って味わい深い。

お酒をお代わりしながら、台風の被害の事なども雑談。私自身は、武蔵小杉に昔、住んで居た事があるのだが、その当時は東横線の東側は、ちょっと荒んだような工場地帯で、JR横須賀線の駅も無かったしタワマンなど影も形も無かったなあ。ハザードマップ見ると浸水の予想されたエリア。元は川底などで地価が安いから工場地帯になっていたのかねえ。

この辺りで握りに。まず中トロ2。かなり脂のある部位。旨味もあり。ふっくらした酢飯に脂が溶ける。コハダも2。柔らかくネットリした身肉の旨味は、何時もながら鶴八伝来の美味。アナゴもトロトロでツメも旨し。最後はサッパリとカンピョウ巻で〆。店が立て込んで来たので早めの勘定。しかし美味かったな。

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「新ばし 笹田」訪問
先週、木曜の夜は久しぶりに「新ばし 笹田」。

入店して、まず冷酒は「醸し人九平治純米大吟醸」。ほんの少しの酸味の後でまろやかな米の甘さが口中に広がり、すっとそれが消えて爽やかな飲み口に。

笹田氏によると、台風襲来の前だが既に海が荒れており、魚が無くて仕入れが大変とのこと。土曜日には超大型台風19号が関東襲来見込みだが、店のほうからお客さんに連絡を取り「キャンセル頂いて結構ですよ」と説明しだいたいキャンセルを受けた。あと2組の返答待ちだとのこと。

おそらく土曜日は魚河岸でも魚が揃わないと思うので、キャンセルしていただいたほうが気が楽なんですと。確かに無理して来店してもらっても、帰りに交通機関が止まって帰れなくなったらお客さんが困るよねえ。

最初のお通しは、天然の舞茸、マツタケ、ホウレン草の和え物。ナガスクジラの尾の身は雑味の無い濃い旨味。アイスランド産。生姜醤油以外にごま油塩も添えられる。牛を更に濃くしたような旨味なので、ごま油で食するとなんとなくユッケ風に感じる。しかしやはり生姜醤油が一番かな。

きぬかつぎはネットリした旨味。秋を感じる。料理を出してきた「笹田の海老蔵」に元気かと聞くと「最近暴飲暴食が多くて体調悪いです」と。コハダのなめろう。コハダは塩だけで酢〆には回さず小骨を切るために、ミョウガと味噌を混ぜて叩く。この店でコハダを食するのは初めてだが、アジよりも癖が無く、最近コハダに凝っているのだとか。

壬生菜と油揚げの煮物はいつもの定番。出汁が上手い。

お造りは、淡路の鯛、塩釜のマグロ、北海道のつぶ貝。最近は海が荒れて大変だというが、ちゃんと良いものを揃えている。鯛はネットリと旨味あり。マグロも脂より旨味が濃い肉質。つぶ貝もコリコリと鮮度が良い。

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次は松茸と鱧の土瓶蒸し。松茸は岩手産。今年は松茸が不作。出るのも例年より一月遅れたのだが、出た途端に卸業者はもうそろそろシーズン終わりだと言っているとの事。夏の気候が影響するらしい。

焼き物は、鰆の塩焼き。身はフックラして上品な脂が乗っている。

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そして、松茸のフライ。パリパリした衣。松茸の香りが凝縮している。ウスターソースがこれまた実によく合うのだった。

ここで食事の準備。炊飯土釜で炊いた炊きたてのご飯。ちりめん山椒、お新香、ワサビ漬け、イクラ醤油漬け、赤出汁を添えて。お代わりはお焦げを入れてもらった。しみじみ旨いなあ。最後は何時もの甘味。冷製の白玉ぜんざいに煎茶。

勘定を済ませると雨が降っている。笹田夫妻の見送りを受けて何時もと同じ満ち足りた気分で帰路に。なんとか松茸に間に合って良かった。11月に入ると香箱蟹だ。




銀座「鮨 み富」訪問。
日曜日は、暑さも去ったので朝は外をちょっとランニング。気持ち良い気温。午後は録画したラグビー・ワールドカップの日本―サモア戦など観戦。ラグビーを見ると不思議な事に負けているチームを応援したくなる。終盤はサモアに肩入れしていた(笑)Underdogを愛好するイギリス生まれのスポーツだからだろうか(笑)

この所行ってないなと思い立って電話で銀座「鮨 み富」を予約。5時に入店するとまだ他のお客さんはいない。何時もの席に案内される。ほどなく外国人を一人連れたアテンド系会社員のグループ入店。

お酒は白龍の冷おろし。あっさりスッキリした飲み口。二杯目からもう少し米のふくらみがあるものに変更。

昨今の店の景気など聞きながらつまみを切ってもらう。開店したのが去年の夏だから1年ちょっとで店は安定軌道に乗った。三橋親方によると、やはり修行店の「銀座新富寿し」が閉店になったのが一番大きく、元の新富の客がなんだかんだで探して、殆どこの店に来てくれるようになったとのこと。まあむこうは閉店してしまったから、別に修行先の客を盗った訳ではないものなあ。

つまみは、まずヒラメ。そして北海道のブリ。脂のある腹の部分だが、癖は無く軽く感じる良質な脂。ミル貝はまな板に叩きつけると丸まってしまうほどの鮮度。

ふらりと予約無しの爺さんが一人で入って来て握りを注文。空いてれば何時でも入れるのも良い所。ただ「新富寿し」は何時でも必ず入れたが、ここは席数が少ないから予約したほうが安全だが。

漬け込みのシャコ、煮たアワビは古式な仕事。なかなか立派なサイズ。肝も添えて。

この辺りで握りに移行。ヒラメ昆布〆、シマアジ、コハダ、イワシ、秋刀魚。どれも1貫ずつ。〆ものは新富伝来の技。自分の腹具合に合わせて自由に頼めるのが良い所。握りは若干小ぶり。酢飯も赤酢使用とのことだがそれほど酢は立っていないおとなしい物。

勘定を頼んだ爺さんが、「Dancyu」観て来たんだよと。兄弟子はどうしたかと尋ねる。「新富」の昔のお客さんなのだ。「三井さんは今日お休みですが、この店で仕込みをずっと手伝ってもらってるんですよ」と。

親方によると、「Dancyu」効果もまだ残っているという。ネット使う世代だとこの店もすぐ探せるのだが、紙媒体もなかなか重要。最近、仕込みの手伝いに未経験者を入れたのだが、三井さんはなかなかの理論家で、仕込みにもまず仕事の理由から教えているとのこと。もう見て覚えろの時代じゃないんだな。

予約の3名様がご来店になったので、そろそろ帰るかと勘定を済ませて店を出てる。扉を出てすぐのエレベータに乗り込むと、先ほど入店した中の一人の女性が店を出て来て、「すいませんすいません」とエレベータに乗り込んでくる。びっくりしたが、「お元気でしたか」と名前を呼ばれてまたビックリ。

とりあえず1階まで降りて会話すると、なんと以前頻繁に訪問していた築地本願寺裏「鮨 つかさ」で働いていた女性であった。黒縁眼鏡をかけていたので分からなかったよ(笑)

「つかさ」は、そもそもフジタ水産の藤田社長に紹介されて随分昔に訪問したが、良い物を置いてあるし、親方の人柄も良い。気に入って何年も通っていたのだが、高橋司親方が突然の病気で倒れて急な閉店。それからすっかり顔を合わせる事も無くなってしまったのだった。しかし高橋親方も、病気からなんとか快復したと教えてもらう。とても懐かしい再会。「この店にはよく来るんですか」と聞くと、今回初めてなのだと。実に奇遇だが、嬉しい再会であった。一度高橋親方にもどこかで会う機会があればよいのだが。



「里山引退 佐ノ山襲名披露大相撲」見物写真日記
大相撲が千秋楽を迎えた翌週の土曜、両国国技館で、「里山引退、佐ノ山襲名披露大相撲」。

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そもそもは来る予定ではなかったのだが、5月場所の両国国技館で、引退相撲のチラシを自ら配っていた佐ノ山親方に遭った際、「引退相撲、頑張ってくさい」と握手したら、「お待ちしています」と言われてしまい、やはり行かなければいけないかなと思ってチケットを取ったのだった。取り組み表には協賛企業も多く掲載されており、佐ノ山親方は、なかなかの営業マンである(笑)

引退相撲は観客が一気に入場するので、開門の11時には大行列になる事は今までの経験でわかっていたので、両国駅横「江戸NOREN」で昼飯を済ませてから入場門へ。しかし中学生の団体が大行列をしておりビックリ。なんでこんな団体が。

後で館内放送があったが、埼玉栄中学校の生徒だそうである。しかし里山は奄美出身で埼玉栄中学は母校でもない。ただ日大相撲部出身。高校相撲の名門、埼玉栄高等学校の相撲部監督が日大出身。そんな関係があるのかな。

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と思って取組表の裏を見ると、日大の全面広告。里山はなかなか営業上手であるなあ(笑)

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取ったのは2階の椅子席。正面側

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2階の通路に人だかりがしているので見にゆくと、元豪風の押尾川親方であった。来年の2月が引退相撲。

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花相撲なので入場してくる力士も気楽なもの。阿炎もファンサービスを。

髪結実演、相撲甚句、十両土俵入りの後で、「里山最後の土俵入り」。息子さんを帯同して。

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土俵を一周すると司会者が「撮影タイムです」とアナウンス。この後も、随所で「撮影タイム」が入る親切さ。この後で「初切」が行われ、館内が湧いた後、「里山最後の取組」。人生最大の強敵、長男の瑛汰君に寄り切られて敗北(笑)

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琴欧洲の引退相撲でも息子さんとの一番があったっけ。十両取組の後、後援会長ご挨拶があり、いよいよ断髪式が始まる。前回も同じ趣向の引退相撲があったが、正面から東、向こう正面、西と方向を変え、どちらの方角からでも見てもらえるように工夫されている。

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断髪式には、元稀勢の里、荒磯親方も登場。息子さんも鋏を入れ、里山が土俵を一旦降りて、母親に髪を切ってもらう趣向も。最後は奥さんと二人の子供からの花束贈呈。なかなか心温まる式であった。里山は長い間は幕内に留まれなかったが、小さな身体で闘志あふれる相撲を取る印象的な力士であった。幕下での最後の一番になった、投げを打ち合いながら最後まで諦めずに顔から土俵に落ちて勝利した相撲は忘れ難い。

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引退相撲は開場時には同門の関取もいてファンサービスをするし、取組が終わって帰る時にもみんな気楽にファンサービス。なかなか面白かった。

芸術祭十月大歌舞伎、「夜の部」。
土曜日は、芸術祭十月大歌舞伎、「夜の部」に。夕方になってもまだ夏が戻って来たかのような陽気。

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最初の演目は、河竹黙阿弥作。「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」。大川端の場だけ出る事が多いが、今回は三人の吉三が終末を迎える本郷火の見櫓の場まで通しで。

歌舞伎座では、大川端の場しか観た事ないはずだが、後半部分にも記憶あり。以前何かの映像で見たのだろうか。

有名な大川端庚申塚の場は、朧月夜を背景に、黙阿弥の七五調の名台詞に乗った様式美に満ちた場面が美しい。松緑は貫禄ある親分肌の和尚吉三として印象的。愛之助のお坊吉三もきちんと成立している。お嬢吉三は、梅枝と松也が偶数日と奇数日とで交代に演じる。この日は梅枝。美しい娘と盗賊の男の素顔が鮮やかに交錯する。

大川端庚申塚の場から先は、夜鷹宿という底辺の生活を生きる人々の生活を背景に、三人の吉三の運命と、土左衛門伝吉と実はその子供であった手代十三郎とおとせの数奇な運命の輪が、庚申丸と百両を狂言回しに語られて行く。陰惨な因果話でもあり、そんなにはかからないのだろうが、一種奇妙な退廃美にあふれている。三人の吉三も根っからの悪党ではなく、運命に翻弄された不幸を抱える者たちなのだった。

「八百屋お七」が随所に反映されているのも興味深い。最後の「火の見櫓の場」もお七の狂乱を投影されている。

松緑の悪漢役は似合うし、和尚吉三もニンにあると思うが、全体を通してみると、本日は一本調子で若干陰影が薄いような気がしないでもなかった。弟妹殺しの場なんかはもっと凄みが出て成立すると思うが。梅枝は男女の切替が実に印象的。歌六は、今は善人だが過去もあり、胆力もある土左衛門伝吉を見事に演じる。やはり爺さん役をやると素晴らしく良いなあ。

幕間は「花篭」で「芝居御膳」。随所に秋の味覚が織り込まれておりなかなか結構。

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最後の演目は「二人静(ふたりしずか)」

能の謡曲を素材にした歌舞伎舞踊。長唄、箏曲、鳴り物と、音楽が実に賑やか。玉三郎と大舞台で同期して二人で踊る児太郎は、大相撲で言うと、横綱白鵬に前頭下位の有望株が、ぶつかり稽古で泥だらけにされるチャレンジの如し。白鵬も見どころのある若手しか相手にしないが、相撲ではこれを「可愛がり」と称する。こうやって稽古をつけて貰った若手が横綱に勝つのは「恩返し」。

しかし児太郎は立派にやり遂げて大健闘。12月にはまた玉三郎が、梅枝、児太郎と交代で演じる「阿古屋」がかかる。玉三郎の若手「可愛がり」は続く。いつか「恩返し」できる日が来ると良いね。
歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」夜の部。パラレルワールドの弁慶
先週の金曜日は、「秀山祭九月大歌舞伎」夜の部を観劇。

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最初の演目は、「菅原伝授手習鑑 寺子屋(てらこや)」

体調不良で3日休演し、復帰して2日目の吉右衛門が演じるのは、病身という設定の「寺子屋」松王丸。松緑は代演ご苦労様。吉右衛門が復活した松王丸の、咳の場面など体調悪そうな描写が真に迫っているのは、芸の力か、あるいはまだ本調子ではないのか。あまり他の人の松王丸で体調悪そうな印象を持ったことは無いものの、やはり気になる。普通は、病鉢巻きをしていても堂々たる押し出しの元気に見える松王丸が多い気がするが。

義太夫狂言の名作。よくできた芝居である。

自らの計画とはいえ、知らぬ場所で身代わりに討たれた息子。首実検の後で正体を明かし、「さぞや未練だったでしょう」と尋ねて、「立派に笑って首を差し出して討たれました」と聞いた時の「笑いましたか」の泣き笑いは、恐ろしい悲痛と歓喜の入り混じった古径な大きさが真に迫ってくる。

忠義の為に子供を寺子屋に行かせ、立派に殺された。これは現代の心理ではなかなか素直に了解し難いが、歌舞伎が内包する封建の心性に慣れていると、自分の死を忠義と出来ず無駄死にであった「桜丸は不憫でござる」に実に良く繋がってくるのであった。

武部源蔵が幸四郎。「せまじきものは宮仕え」の思い詰める忠義の真面目さはニンにある。戸波が児太郎、千代が菊之助と若手が脇を固めてしっかりと成立していた。涎くり与太郎は、若干、墨を擦り過ぎじゃないかと余計な考えが浮かぶが(笑)、鷹之資が達者に演じる。

福助も園生の前役で、ヨロヨロとではあるが歩く場面があり、児太郎がそっと支える。回復が進んだという、復活の目出度い舞台でもあった。又五郎の春藤玄蕃は重厚な迫力があり、赤っ面として印象的。

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30分の幕間は「花篭」で芝居御膳を。

次の演目は、「歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)」

この日は偶数日で幸四郎が弁慶、錦之助が富樫左衛門。奇数日は、仁左衛門が弁慶で、幸四郎が富樫。どちらの日も義経は孝太郎、駿河次郎が千之助であるから、奇数日は松嶋屋三代揃い踏みの「勧進帳」となる。この日を遡る2週間ほど前、仁左衛門の「勧進帳」だけは見物したので、感想は両バージョンを。

「勧進帳」(幸四郎弁慶)

幸四郎の弁慶を観るのは三度目か。染五郎時代に初役で演じた弁慶は、一点一画を疎かにしない楷書の如き弁慶。しかし大きさを求めるあまりか、背伸びして身体が反り返るような雰囲気もあった。新幸四郎襲名時の弁慶は、若干自分のニンに引き寄せている印象。悪く言えば最初より崩れているのだが、良く言えば新幸四郎らしい弁慶を模索し始めていたという印象。

そして今回の「勧進帳」。高麗屋伝来の弁慶は、骨太で安定した形で当代の幸四郎に受け継がれた。堂々としてしっかりした弁慶であった。花道からクルクル回りながら舞台中央に戻る「滝流し」の所作が入るのは珍しかったが、最後の舞の部分であるから体力的には結構大変だろう。錦之助の富樫左衛門も堂々たるものであった。

「勧進帳」(仁左衛門弁慶)

筋書によると、当代仁左衛門は若い時に、実父十三世片岡仁左衛門が七世松本幸四郎から直々に習った勧進帳を教わったとのことである。七世幸四郎は弁慶を随一の当たり役としていたから、本家本流から学んだという事なのだが。

但し、所謂成田屋系の「荒事」の雰囲気はやや薄い。仁左衛門の弁慶は、荒ぶる魂よりも、知略と忠誠を重んじた人間味のある弁慶として印象的に成立している。

成田屋の山伏問答は、「外郎売」の如き早口言葉を叩きつけるような、富樫との火を噴くような応酬があるのだが、仁左衛門はそれとは対照的に、明瞭な口跡で、言葉がはっきり伝わるよう、ゆっくりと喋る。しかし、この弁慶は落ち着き払っているのではなく、全知全能を絞り切ってこの場を切り抜けようとしているのだというテンションがはっきりと伝わる。ゆっくり喋っているように思えるのだが逆に上演は短く感じる不思議。

富樫が去った後、安堵で金剛杖を持った手が緩み、杖が舞台にコツンと当たる。澤瀉屋に伝わった型なのだそうだが、これまた印象的。

これが荒事だという型からは外れているのかもしれないが、当代の仁左衛門にしかできない智謀知略に満ちた怜悧な弁慶である。表情ひとつとっても、写楽の「大首絵」のような眼をむいた誇張した荒事特有の表情ではない。

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このポスターにあるように、仁左衛門は実に写実の弁慶。最後の飛び六法も実に自然。静かな天への深い感謝。そして六法に入る時にも、浮世絵のような大仰な表情はしないが、その眼は先を行く主君義経を待ち受ける運命を、突き刺すように見据えていたのだった。

荒唐無稽な「荒事」の「勧進帳」とは雰囲気が若干違って、リアリズムを希求する、パラレルワールドでの「勧進帳」を見たような実に不思議な気分のする、仁左衛門の弁慶。観れて良かった。

最後の演目は、三世中村歌六 百回忌追善狂言と銘打って、「秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)」

昔の日本人は忠臣蔵が大好きであり、様々な形で歌舞伎になっているが、これは一種の外伝として、吉良の隣のお屋敷では何が起こっていたかを題材に歌舞伎ができている。

歌六に米吉、又五郎に歌昇、種之助の親子。三世中村歌六由縁の役者が揃う。当代の歌六は、ニンとしては俳人宝井其角の人であるが、急に「馬鹿馬鹿」と不機嫌になったり、機嫌が直ったりと天衣無縫で愛嬌のある殿様を芸達者に演じる。

ただ、やたらに座高が高く頭の大きなオジサンが斜め前におり、松浦邸の場での歌六演じる殿様は全く見えないという不運に。こればっかりは仕方ないなあ。最後は山鹿流の陣太鼓が響き、赤穂浪士が討ち入ったと喜んで、助っ人に行こうとする殿様に、又五郎の大高源吾が首尾よく主君の敵を討ったと報告に現れて大団円。

秀山祭は毎年充実した演目ばかり。この夜の部も、舞踊無く、3本きちんと芝居が続いてダレる所がない。歌舞伎座の夜を堪能した。

「新橋鶴八」、五周年直前の訪問
先週木曜日の午後、携帯に「今夜空いてますよ」と「新橋鶴八」からメッセージが入った。大方、ドタキャンを食らったのだな。この週は週末も含め、ほとんど予定が入っているのだが、この日だけは空いていた。お互いにラッキー(笑)

仕事帰りに「新橋鶴八」訪問。一番奥の席には大常連O氏のための座布団が。やっぱり今日も来るのかあ(笑)

お酒は純米吟醸の冷酒(銘柄失念)を頼んで、つまみから始めてもらう。房総は結構港も台風の被害にあい、停電で冷蔵設備も水も港も駄目だと。親方の実家も千葉県だが被害は少ない地域であったと。

最初はおまかせで刺身を。もう白身はヒラメの季節。白身に関しては、以前から思うに、神保町の身の活かった旨味とこの店の熟成したような白身は若干違いがあるような気がする。五十嵐親方は「またひどい事書こうとしてるでしょう」と警戒するのだが(笑)、仕入れの事や醤油などあれこれ質問。

醤油は神保町と同じ。仕入れについては、神保町より大きな個体を好んで仕入れているらしい。仲卸で他の店と分割して半身だけ貰う事もあるとの事だが、やはり締めるタイミングなど、結果的に違うのかもしれない。

先日の台風で千葉の漁業も大打撃だろうが、房総の巨大なアワビ塩蒸しが入っている。香りよく身肉もぷりぷりした旨味が素晴らしい。鶴八伝来の仕事。

大常連O氏が登場。種札が今日は少ないなと。このところ貝類があまり良い物が無いとのこと。光り物もちょうど端境期か。のんびりとあれこれ雑談。

カツオは皮目を焼き霜にして生姜醤油で。ブリがもう出ている。北海道産とのこと。天然独特の噛み応えあり、癖の無いあっさりした脂。アカムツの身の酒蒸し。漬け込みのシャコもつまみで。

この辺りで握ってもらう。大常連O氏は、だいたい何時も、俺もじゃあ握りだと言うのだが、何時もながらダラダラ飲んで注文の気配もない。何時ものペースで3時間以上居座る気のようであった。

スミイカは肉厚。独特の口中で砕ける甘い触感。酢飯も米の旨味を残して軽く仕上がっており実に結構。ここの昆布〆もネットリした旨味が身肉に入り実に旨い。

マグロヅケも酢飯との相性が実によい。コハダは若干脂が薄い気がしたが、ネットリした身肉の旨味は鶴八の伝統。漬け込みのハマグリ、最後はトロトロのアナゴで〆。

勘定を済ませて帰る際、五十嵐親方が見送りに出て来て、「この9月21日で開店5周年になります。ありがとうございました」と。そうか、早いものでもう5年。今やすっかり予約の取れない押しも押されもしない人気店になった。素晴らしい達成である。おめでとう!


令和元年、大相撲秋場所初日写真日記
大相撲秋場所、初日を両国国技館に観戦に。台風は接近しつつあるのだが、朝の間はまだまだ晴れている。

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板番付の横には大関豪栄道の幟が。今場所はカド番だが頑張ってもらいたいね。

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木戸から国技館内までは既に雨用に臨時のテントが設置されている。

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向こう正面の壁面には今回除幕される優勝額が。朝乃山と鶴竜。

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二階の大関パネルからは貴景勝が消えている。今場所10勝して戻れるか。そして、栃ノ心と豪栄道はカド番。高安は今場所休場で来場所がカド番。大関の地位を守るのは大変だ(笑)

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今場所の椎茸はきちんと表を見せて詰めてあるなあ。場所によって詰め方が違うようだ。

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今場所限りで無くなる可能性のある栃ノ心弁当を。おかずが充実しており名作なのだが、なんとか8勝して弁当を残してほしいなあ。貴景勝弁当は5月場所たった一場所で姿を消してしまった。今場所10勝を上げての復活に期待。

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この日は台風が来る前のカンカン照りで、とても長時間外で入待ちは出来ない。矢後どんに水戸龍。

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栃煌山は真面目なので何時も場所入りは早い。三役だった時だって、幕内でも一番早い部類で歩いて入ってくる。相変わらずの仏頂面だが、今場所は幕尻。勝ち越して十両陥落は回避してほしいね。

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初日は役力士が土俵に上がって協会ご挨拶。この時は、白鵬が二日目から休場するとは知る由もなく。


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鶴竜による天皇賜杯と優勝旗返還。優勝額の除幕式も。

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貴景勝は大栄翔と激しい相撲でいなされる場面もあったが、右膝も大丈夫のようで、体勢を立て直して大栄翔を撃破。かなり調子は戻っていると印象づける一番。しかし栃ノ心はまったく良い所なく逸ノ城に敗れる。だいぶ暗雲が漂うスタート。まあ、しかしまだ初日。これからどうなるかは誰にも分からない。

英国出張写真日記
お盆休みに入る前に、急なUK出張が入っていた。日本に帰国してそのままお盆休みに突入したので、8月は半月くらい本社には出なかった事になる。まあ随時メールは取っていたけれども。一応、今更ながら、記録のために写真日記など。

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往路12時間もかかるので、ビジネスクラスで行かないと死んでしまいますな(笑) 行き先はLHRから1時間程度のOxford。LondonやCambridgeは2度行った事があるのだが、今回は初めての場所。大学があって有名な場所ではある。

機内映画で「トールキン 旅のはじまり」を、なんとなく選択して観ていると、「指輪物語」のこの作者の青春を巡る物語の背景はオックスフォード大学なのであった。訪問前に参考になるなあ(笑) 映画は、その後、「アリータ:バトル・エンジェル」。実写とCGが違和感ありつつも奇妙な説得力を持って融合して成立している。

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シャンペンを飲んでいるとアミューズが。

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基本的には機内食では和食は選択しないようにしている。ある程度以上のものを提供するハードルが、洋食より和食のほうが厳しいのではないかと思うから。勿論、日本人にとって。外国人なら和食を選択して何の問題も無いだろうけれども。

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メインはフィレステーキを選択。脂身少なくてよろしい。芋と人参の付け合せはスキップ。日本を昼前に出発して、12時間乗ってLHR到着が午後4時。その日も会食があるし、やはり寝ておかないと次の日から仕事に差し支えるので、赤ワインをもう一杯飲んでから一眠り。

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フライトは若干早めに到着。LHRは随分前に来た時よりも綺麗になっている印象。しかし、ANAが到着するゲートは以前同様に、入国審査まで遠い遠い。8月からUKのパスポートコントロールが変わり、日本を含む8ヶ国は入国カードを記入する必要無く、しかもUK国民と同じラインに並んで、無人のゲートにICパスポートを読み込ませればそれで入国審査終了とのこと。これは素晴らしい。昔は長くかかったよなあ。

入国審査を終えて税関も通過。リモの運転手が待っているはずなのだが、ゾロゾロいる運転手が持つプレートを順々にチェックしても私の名前無し。最後のほうにいる運転手のプレートには「Tokyo」と書いてある。まさか私の迎えだと困るので、「あのさ、これは日本の都市の名前で、お前が待っている客の名前じゃないよ」と教えてやると、運転手は「?」と携帯をチェックして、「Oh! His name is Yamazaki!」とか言っている。なんともアンポンタンだね(笑) いずれにせよ私の運転手じゃない。結局、リモの会社に電話すると、ちょうど駐車場に着いた所とのことで、2分くらいしたらやって来た。やれやれ。

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LHRから来るまで1時間。Oxfordの町に到着。ホテルにチェックイン。フロントが「ファースト・フロアでよいか」と聞くので「別に構わんよ」と答えたが、部屋を探して行くと2階なのであった。欧州では1階は「グランド・フロア」なんだな、そういえば。

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全世界のACアウトレット対応のデバイス「サスコム」を保有しているにも関わらず、スッカラカンに忘れていたが、英国のACアウトレットは日本や米国とはまったく形が違うのであった。ロシア出張の時も「サスコム」忘れていったなあ。

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到着した夜は、向こうに駐在している日本人と会食の予定だったが、時間前にOxfordの町をちょっとだけブラブラ。いかにも中世から続く大学町。 様々な国から来ていると学生と思しい若者も町には多数。日本人はあまり居ないのだとか。我が国はどんどん国際的に没落していっているのかもしれない。雅子皇后陛下が通われたというカレッジも。

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翌日は、一日中、英国人と打ち合わせ。実に疲れた。その後で英国人たちとパブでビール飲んで、フィッシュ・アンド・チップス。これがやたら大量で全部は食べ切れなかった。イギリス田舎の雰囲気は実に良いよなあ。

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Oxfordで二泊して、朝にチェックアウト。それからオフィスで午後3時まで、また英国人たちと打ち合わせ。そして空港に向かうのであった。実にバタバタした出張だったなあ。

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昔に2度ほど来たのだが、ヒースロー空港は随分きれいになった印象。

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スター・アライアンスのラウンジで。結構時間があったので、ジン・トニックを3杯も飲んだら結構酔っ払った。しかし仕事の報告書は、随時まとめており、空港までのリモの中でも書いて、速報で本社に送りつけた。後はのんびり飲んで帰国するだけだ(笑)

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羽田に帰着したのは、明日からお盆休みという前日の夕刻。既にロンドンから報告書第一報はメールで送ってあり、別に本社に出社するにも及ばないので、そのまま夏休みに突入したのであった。
歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」初日昼の部
先週の日曜、歌舞伎座の「九月秀山祭」初日の昼の部を見物。さすがに9月になってちょっとは涼しくなった。

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最初の演目は、「極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)」。実際に町奴の大侠客が武士の館で殺されたという史実に基づく演目。様々な作者が書いており「極付」は最後に出た「決定版」の意。

幕開きは劇中劇。江戸古式の荒事が演じられているのだが、見物の侍と町奴にもめ事が起き、仲裁に町奴の頭、幡随院長兵衛が実際の歌舞伎座の客席から颯爽と登場する。この場で生じた侍との遺恨が後に祟る。

武士の館に誘われたのは罠に決まってはいるが、行かなければ臆病者が逃げたと言われる。男伊達の面子をかけて敢えて死地に赴く幡随院長兵衛が見所。幸四郎は初役。器用に破綻なく成立していると思うが、3000人の町奴を束ねる大立者の豪胆さや押し出しにはちょっと欠ける雰囲気。まあ、初日であり、これから良くなる。芝翫がやると、ただ顔が大きいだけでそれらしく見えるのだけどなあ。役者は顔が大きいと得だ。

敵役の旗本、水野十郎左衛門は松緑。以前に菊五郎が演じた時の水野は、単なる悪党ではなく、武士としての胆力も鷹揚さも兼ね備えた男。しかし旗本としての立場があり、町人にコケにされては黙っていられない。こちらも侍の面子を立てるために幡随院長兵衛を殺すことになるのだが、止めを刺しながら「殺すには惜しい」と呟くところに、男を知る男の大きさを見せた。

しかし今回、悪く言えば松緑の印象は若干薄い。良く言えば、白塗りの松緑には無機的に不気味な雰囲気があり、ちょっと怜悧でホラーな、静かな凄みがあるとも言える。菊五郎には無い、ある種の狂気がそこには潜んでいる。

亀蔵は明瞭な口跡で印象的。雀右衛門演じる女房お時も、夫に従い立てながらも、行かせたくない本心が垣間見え、実に上手いものである。ただこの座組では一人だけ重い感じがする。

30分の幕間は、花篭食堂で「芝居御膳」。

次の演目は所作事の、目出度い「お祭り」。初日だけあって大向こうが大勢来場して実に賑やかな幕開き。おなじみ「待っていたとはありがてえ」と、梅玉が気分をよくした祭礼の日の鳶の頭に扮して踊る。全体にこの人は、なんでも鷹揚に機嫌良く見える所が結構である。

魁春も熟練の踊り手であるが、梅枝が同座してまったく違和感の無い健闘で華があったのに感心。梅玉が太鼓を打つ演出があるのだが、意外にリズム感が悪く、これはまあご愛敬。鳴り物が本職じゃないものなあ(笑)

そして最後の演目は、三世中村歌六 百回忌追善狂言と銘打って、「伊賀越道中双六 沼津(ぬまづ)」

呉服屋十兵衛に吉右衛門、雲助平作に歌六、平作娘お米に雀右衛門という盤石の播磨屋軍団。そして、荷持安兵衛に又五郎が出て、旅人に息子の歌昇、そしてそのまた息子の小川綜真が倅役で初お目見えという、まさしく三世歌六の百回忌追善に相応しい座組。さぞや草葉の陰で喜んでいるだろう。

劇中で追善の口上あり。さすがの播磨屋軍団も初日であり、ちょっとグダグダしたが、大向こうの掛け声も盛大で、なんとなしに乗り切る。舞台に戻っても、やはり初日だからか吉右衛門も若干台詞にアーウー感あり。何度も演じた演目でも、やはり稽古で覚えなおしているのだなあ。

初お目見え小川綜真は花道で台詞があるのだが、客が居るのにビックリしたのか、客席に顔を向けず父親にしがみついて話しかけるように台詞を。まあ幼児だから大変ですな。

「沼津」はもともと実に良く出来た芝居。駄賃稼ぎに荷物持たせてくれと持ちかけてくる雲助平作の歌六と滑稽なやり取りで客席を歩いて笑わせる所から入り、その娘と会い、呉服屋十兵衛があばら家に泊めてもらう所から、既に悲劇の萌芽が始まる。

雀右衛門お米のクドキが可憐に映えて、歌六の親父の人情味、雲助平作が実の父であると気付いた吉衛門十兵衛の思い入れも胸に響く。最後は暗闇の千本松原での、親子の情と義がせめぎ合う悲劇。円熟の名優揃いで実に見応えがあった

「秀山祭」初日ではあったが、一階客席後方には空きが目立つ。上には大向こうは沢山いた。私は一階前列であったが、隣の男性はどの演目も、ずっと居眠りしている。チケットの値段で言うと1万円分くらいは寝ていたのではないか。左斜め前の婆さんもそうだ。いったい何しに歌舞伎座一階に来たのかと思うが、興味ないチケットを貰ったのでもあろうか(笑)