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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
今年初の神保町「鶴八」訪問。
今週火曜日は、一月中には一度行っておかねばと、神保町「鶴八」。当日電話すると「鶴橋最後の弟子」君が出て「本年もよろしくお願いします」と。

早い時間に入店すると、他に常連と思しいお客さんが1名だけ。お酒は八海山の生酒。度数が若干高いとか。

遅くなったが「本年もよろしくお願いします」とご挨拶。年末にコロナ感染した旨を告げると、なんでも「しみづ」も親方は大丈夫だったが、年末新年にかけて従業員に感染が出て結構ドタバタしたらしい。なにしろマスクしないからなあ、と石丸親方。

お通しはハマグリの貝柱づけ。お酒を飲みつつつまみを切ってもらう。

ヒラメは分厚い身。旨味あり。塩蒸しも歯ごたえと香りよし。ブリは腹の身だが脂はあっさりしている。漬け込みのハマグリもつまみで。

お客は私を入れて2名だけなので、親方ものんびり。女将さんも入れてあれこれ雑談。なにを思ったか女将さんによると、初見の客でも愛想よく話が面白くて、こんな人が常連になればいいなあと思う客に限ってもう来ないのだとか。なんだか申し訳ないような複雑な心境で酒を飲むのだった(笑) まあ、どんな人生の場面でも、最初からやたら愛想よい奴は信用できないと思うけれども(笑)

韓国で盛んな整形の話、ジャニーズや岡田准一の大河信長、田宮二郎の「白い巨塔」などあまり脈絡の無い話で盛り上がった。

お茶を貰って握りは、いつもの通り。中トロ2はいつも通り切りつけが大きい。コハダ2。いつも通り肉厚でネットリした旨味。アナゴ2。軽く炙って供するがトロトロの旨味。ハマグリ出汁のお椀も冬にはしみじみ旨し。最後はカンピョウ巻で〆。どれも何時食しても間違いのない鶴八伝来の味。

店の賃貸契約も、更新料なしで再び5年の更改をしたのだとか。ニュー新橋ビルから、自分が教えを受けた大師匠が残した神保町の店に移って5年。そして神保町「鶴八」の新たな5年が始まった。

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本年最初の銀座「み冨」訪問。
今年になって行ってなかったなということで、先週の日曜日に銀座「鮨 み富」訪問。

早い夕方に入店すると、カウンタはまだ他にお客なし。手を洗って消毒している間に、三橋親方はいつも通りお勧めの一升瓶を並べている。6~7本あったのだが、新酒「不動」生酒を選択。口当たり爽やか。しかし度数はちょっと高いか。寒い日だったのでお茶も一緒に頼んでチェイサーに飲みながら。

お通しでナマコ酢を。子供の頃はナマコなんて嫌いだったが、大人になって酒を飲むようになってみると実におつな味がする。ただご飯とは合わないかなあ。

新年からの景気の話など親方と雑談。「SNSで見ましたけどコロナに罹ったんですって」と聞かれたので、年末のコロナ感染の顛末を。ワクチン5回打っていたせいか症状は軽く、目立った後遺症も無くてよかった。

以前、ここで働いていた元警官の弟子は、やはりコロナ感染したのだが、脱毛の後遺症が出て、髪の毛は結構抜けるし、脇の下の毛が無くなってしまったのだとか。それは気のせいとはいえない尋常ではない後遺症だなあ。そんな事があるとは。

このところ西日本と日本海側に寒波が襲来し、交通が麻痺して仕入れが大変だったとか。飛行機が飛ばないと九州からの仕入れがストップするからなあ。

お好みでつまみを注文。まずタイ。なかなか肉厚の身。湯霜にした皮目に旨さあり。ブリも切ってもらう。

小柱は細く切った海苔を散らして。サヨリは細切り。香りよし。皮は串に巻いて焼いて供する。北寄貝。湯を潜らせて甘酢につけてある。紐と柱は付け焼きで供される。

この辺りで握って貰う。タイ昆布締め、中トロ、カスゴ、コハダ。

寿司仕事も伝統ある江戸前寿司の技法を受け継ぐ。仕入れ先は種によってはちょっと変えて、光り物などは新富の頃よりもグレードが高いものを使っているのだと。

酢飯は硬めに炊かれてあるが塩も酢はさほど強くない。砂糖は使わないのが流儀。握りが甘く感じるのは、米の甘味と種のほうに甘酢を使っているから。

懐かしい「銀座新富寿司あるある」を三橋親方と語るといつも面白い。休憩を取らずに通し営業。予約なしでも何時でも入れた便利な店。海老はいつも生きたものを入れており注文の都度茹で上げていたのだが、ごく少数の知っている客しか注文しない。社長は商売っ気のない人で、自分から何もお勧めしたりする事はなかった由。そうだったなあ。

客への対応は「み富」では改善されていて、お勧めがあれば教えてくれるし、握りには煮切りを塗ってくれる。もっとも「新富」でも頼めば塗ってくれたらしいけれど。

アナゴは古式なツメに旨味あり。最後は名物のカンピョウ巻で〆。

本年初、「新橋鶴八」訪問。
年末キャンセルしてしまったので、仕切り直しで「新橋鶴八」を予約。

大相撲初場所10日目であったが、入店時はまだ取組が3番残っていたので、カウンタに座ってAbemaTVで結果をチェックしつつ。若隆景は佐田の海に不覚。正代、貴景勝は勝利した。

1杯目の酒はなんだったっけ。ひらがなの名前の純米吟醸だったが、ちょっと忘れたなあ。一升瓶がこれで終わりてしたと増量サービス。二杯目は高尾の天狗。そのあとで焼酎水割りを貰った。

種札に「ヒラスズキ」があるのが珍しい。開店最初から使おうと準備していたとのこと。ただ鶴八系では見かけない種。どこかの寿司屋で食した記憶があるのだが。昔の築地「つかさ」かな。

年末の話など五十嵐親方と雑談しながら、まずつまみが出てくる。

ヒラメは上品な脂の乗りで身の食感も良く旨い。サバは酢締めは浅いが塩味は十分ついている。北寄貝は軽く塩をして炙ってつまみで供される。生で握りに使うと匂いを嫌う客がいるとの事。火を通すと甘味が増して香りも良く旨い。

メジマグロのカマつけ焼き。「笹田ですよ」と出して来た。まあちょっと違うけど(笑)最初はブリかと思ったほど癖が無く軽い旨味。昔、常連用ですと出して来たマグロ血合いを焼いたのよりはずっと旨い(笑)

煮物でシャコ、漬け込みのハマグリもつまみで。鯛の酒盗と小口に切ったスミイカが小さな器で供されてつまみ終了。

大常連O氏は最近来ているのか問うと、予約は入るのだが結構キャンセルが続いたりするとの事。まあもう大分お年だものなあ。お元気だとよいのだが。

カウンタ手前に居た2人組のお客は、食べながら鶴八一門の事などあれこれ質問していたのだが、以前この店に来た大阪の寿司屋親方の紹介で来訪したとのこと。帰り際に店の前で五十嵐親方と記念写真など撮影。なんて言ったかなあの大坂の寿司屋。早川光の番組でも紹介されていたと思ったが。

この辺りで握りに。握りは小さめにしてくれるようお願いしたのだが、そうなってるのかな。まず中トロ、ヅケ。米の旨味を感じるふっくらした酢飯とよく合うがそもそも種の切りつけが大きいから、酢飯も結構大きく感じる。

コハダは肉厚、ネットリした旨味。ヒラスズキは昆布締め。ヒラメとは違う風味だが特徴ある旨味。最後はこれも鶴八系伝来の技、アナゴ。身はトロトロ、ツメもコクがあって結構。

隣のお客さんが帰って店は私一人に。この夜はもう予約はなく、この後店を閉めて神保町に新年の挨拶に行くのだとか。しばし12月に訪問した時の話など、あれこれ雑談。

勘定のほうは、「しみづ」「神保町」よりも若干安い感あり。まあそんなに量を食べてないからなあ。

しかし、前に聞いた話では、結構大きな握りだが、30貫近く食べる人も居るらしい。真面目に計算すると勘定が随分と高くなるので、たくさん食べる人には少し割引しているとの事。たくさん食べれば食べるほど割引率が上がるボリューム・ディスカウントが適用になるのだとか。まあこちらはそんなに量を食べないから関係ないな(笑)

ということで、食べたもののメモをくれて、本年初の寿司屋訪問が完了。「しみづ」にも行かないと。


2023年新年、「新ばし 笹田」訪問。
正月7日は、午前中「歌舞伎座」第一部。夜は「新ばし 笹田」へ。

コロナ感染もあって年末までの外食予定は全てキャンセルしてしまったのだが、年明け7日までには全快しているだろうし、旨いものを食べたいなという事で、去年中に入れた「笹田」の予約はそのままにしてあったのだ。

早めの時間に入店して笹田ご夫妻にご挨拶。年末はコロナでおとなしく自宅に居たというと驚かれる。昨今の景気など聞きながら、羽前白梅を貰って始めてもらう。店は6日から今年の営業を始めたそうだが、魚河岸にはまだまだ魚が揃っていないとの事。寿司屋もまだ開いてないものなあ。

最初は小さな器で供される京風の白味噌雑煮。500円玉くらいの小さな餅や海老芋が入っている。器の蓋を取るとパラリと振られた削りたてカツオ節の良い香りが立ち上がる。嗅覚障害が出なくて良かった。白味噌はとても濃厚な旨味。

越前ガニのほぐし身が小さな器で。越前ガニは12月に入ってから値が跳ね上がったのだとか。香箱ガニも随分な値段になったらしい。年が明ければ少しは落ち着くというのだが。

お酒は「醸し人 九平治」に変更。トラフグの白子焼きは香ばしい香り、皮はパリッとして中身は濃厚な旨味がトロリ。実に美味なり。フグの白子は年明けからどんどん大きくなってくる。

合鴨のローストを薄切りにして。辛子は2種類添える。今年は帰省していないし、正月らしい正月ではなかったから、お節の一品みたいな感じで結構ですな。

定番の、壬生菜と油揚げの炊き合わせも、胡麻がアクセントで香りよく、何時もながらほっとする味。しかし家庭の鍋一丁では簡単にこの味は出ない。

お造りは、鯛 マグロ、アジ。鯛は皮目を湯霜にしたものと皮なし両方。鯛は身肉と皮目に上質の旨味がある。マグロは気仙沼。サラリとした旨味。天草根付きのアジは小型だがよく脂が乗っている。

お椀はクエと湯葉。出汁の香り良し。クエは年末に入れて寝かせたものと思うが、雑味なく実に淡白な軽い旨味。湯葉は、ああこれが湯葉だったと感じる大豆の香りと風味がする。

焼き物は、琵琶湖産もろこの山椒焼き。淡水の池によく居る小魚であるが、中骨を綺麗に取って焼き上げると実に野趣あふれる香ばしい香り。身肉は白身で癖がなくあっさり。山椒が効いている。

煮物は、これまたこの店の冬の名物、京野菜のおでん。鳥皮に自家製のさつま揚げ、半熟のうずら卵、聖護院大根、海老芋、京人参。どれも出汁を含んでこっくりと炊きあわされて同じ器の中でハーモニーを奏でる。前の場所で店を出した時から定番の冬のメニュー。冬には実に旨い。

ここでほうじ茶が出て食事に、「七草粥とご飯とどちらにしますか」と聞かれる。どちらも良いなと考えあぐねていると、「半分ずつ両方お出ししましょうか」との事なので両方貰う事に。笹田はいつも客の心を見計らっている。

春の七草粥は正月の疲れた胃を休める効能があるというが、米の甘味と七草、そして調味は塩だけで実に滋味深い粥になる。笹田氏も大好きなのだとか。七草もそんな大量ではなく、上品に香りと苦味つけに入っているだけ。微妙な塩加減が絶妙尾なんだろうなあ。

お新香にワサビ漬け、牛肉の佃煮、ちりめん山椒、赤出汁で炊き立てのご飯も一膳。お粥もいいけれど、炊き立てつやつやのご飯も最高だ。

煎茶が出て最後の甘味はこれも定番の冷製の白玉ぜんざい。甘いものは食さないが、これは甘さよりも豆の旨味を感じる逸品。

年末から正月にかけロクな物を食していなかったので胃もびっくりしたんじゃないかな。何から何まで旨かった。キャビアだフォアグラだトリュフなど、和食として珍奇な素材を料理に持ち込むケレンは一切ない。ご主人の人柄が出た真面目な料理。素晴らしかった。

笹田ご夫妻の見送りを受けて店を去る。去年は鮎も鱧も松茸もすっ飛ばしてしまったが、今年はもっと来なければ。



2022年大晦日
なんだかんだでもう大晦日。

喉の調子が悪かったのだが、医療用の抗原検査キットで検査すると陰性。しかし次の土曜日に38度の熱が出て、再び検査すると今度はコロナ陽性。次の日から熱は下がったのだが、一応、週明けの月曜に発熱外来に。症状があって抗原検査で陽性なら、それはコロナ陽性でしょうと医者の診断。

会社出社はあと残り1日というところで、会社にも報告してコロナ陽性の自宅療養となった。熱は下がり喉の症状もすぐに緩和されたのだが、一応症状があるということで、年末の寿司屋巡りや帰省の予定は全てキャンセル。

なんだかとんでもない2020年の終わりとなったが、大晦日現在、もう薬は飲まずとも熱は平熱、咳もでないし、喉の違和感もない。外出自粛期間は終わって、「自主的感染予防行動徹底期間」なるものも元旦で終了。

しかしワクチンを5回打って、感染した今が、体内の抗体は最強なんじゃないかな。とはいえ、あまり人混みに出る気はしない。まあ正月三ヶ日もにんびり療養に努めよう。

皆さんもコロナに注意してよいお年を。


西大島「與兵衛」訪問。
12月第三週の金曜日は「與兵衛」。ちょっと前に予約の電話をしたのだが、最近は人数が揃う時しか営業しないし、あまり満員にもしないようにしている模様。いつも土日に訪問しているのだが、親方が「日曜は空いてるんだけど変なのが来るからなあ」とか言うので、こちらとしても変な者がいる時に行きたくないし、金曜に予約。

仕事帰りに暖簾をくぐるとカウンタには既に先客2組。女将さんが、「会社の帰りに来るのは珍しいよねえ」と。確かに珍しいけれども昔も一度会社帰りに来た記憶があるなあ。

最初に1人だけ到着していた先客の残りは西大島に着いたと連絡があったのだが、なかなか到着しないのだと。西大島の駅から亀戸方面に向かって、おてもやん風の大きな人形がいる親子丼の店を左に曲がればよいのだが、この「大島銀座通り」は名前とは違って大変に寂しい感じ。「大島銀座通り」曲がると聞いていると絶対間違うよねえ、と親方と雑談。昔はもっと賑やかな通りだったらしいが。

お酒は「本日の大吟醸」、三重の酒「作」。最初の口当たりは香り良く柔らかだが、後口はスッキリ。

最初はお通しの一皿が供される。エビ頭、ホタテ煮浸し、中トロづけ、白子、牡蠣煮浸し。どれも酒に合う。大吟醸の後は、十六代本丸 開運。今日は醸し人九平次が切れていた。値段は長らく700円か800円だったのだが、改定されて1000円に。親方の言う所では、お客の中に安過ぎるから値上げしなければダメだという人が結構いて、改定したとのこと。この店は同じ飲食業の客も多いから、そっちの方面からの推奨かな。十四代本丸はやたらに高い値段で出している店があるらしいが。

遅れていたお客の3名が程なく到着。親方が「何かお嫌いなものはありませんか」と問うと、1人の女性が「私、光り物が苦手なんです」と。「うちは光り物が得意なんですけどねえ」と親方が冗談めかして言うが、時折この手のお客さんがいるよねえ。大体親方は、「うちのは大丈夫ですよ」と言いながらドサクサにまぎれて出しているけど(笑)おまかせで出す寿司屋に光り物が苦手な人を連れて来るはちょっとアレかな。ただこの人は前にも来たとの事で、もう慣れているのかもしれない。

お通しの皿が終わると全員同じタイミングで握りに移行。

酢飯は硬めに炊かれており他店よりも若干温度が低いが、ホロリとほぐれる。

中トロ、赤身漬け、ヒラメは浅葱を噛ませた余酢漬け、一味を隠し味のゴマ醤油、シマアジ漬けは皮目を炙り薄く切って3枚づけで。スミイカは軽く味付け醤油に漬けている。海老は甘酢おぼろをかませる。甘酢につけた北寄貝もこの店でしか経験した事のない旨味。ここから光り物4種。サヨリ、コハダ、サバ、イワシ。コハダのネットリ具合もよい。サバも旨味が素晴らしい。イワシは北海道産というが、びっしり乗った脂が〆られて口中で溶ける。

煮物は、漬け込みのハマグリ、煮イカ、白醤油で炊いたフックラシたアナゴ。これまた與兵衛にしかない寿司種。素晴らしい。最後に玉子焼きで〆。いつも書き忘れるが、ここのお茶とガリも他の店と違って独特の旨さがあるのだよなあ。

お土産に海苔を頂いてほろ酔いで帰路に。値段はちょっと上がったかな。魚の値段が上がっているし、物価高もあって、何処の寿司屋もそうだけれども。しかし與兵衛にしかない寿司を存分に楽しんだ。来年はもっと来ないと。


今年最後の神保町「鶴八」。
12月第三週目の火曜日に神保町「鶴八」。当日電話したら早い時間なら入れるというので席を予約。

時間通り入店したら先客はカウンタ手前に2名。私は一番奥の席。ここに座るのは初めてだというと、女将さんが「そこが特等席なんですよ」と笑う。つけ台の色の変わり具合を見ると、一番使われているのは入口近くの席のようだが(笑)しかし古そうな常連がよく座っているのも見かけるな。

菊正ではない冷酒(名前失念)を貰ってボチボチと。お通しはハマグリの柱漬け。

まずヒラメを切って貰う。活かった立派な身は歯応えと旨味あり。塩蒸しもつまみで。煮た肝も添えて。アワビは年々獲れなくなっていると親方。

ブリ。脂の乗った腹の身をえぐるように切りつける。天然物の爽やかな脂。歯ごたえもよい。サヨリもつまみで。「1本でもいいですか」と親方が確認するので一匹切ってもらう。皮は串に巻いて炙ってつまみに。

「サヨリはこれで終わり」と親方。確かにカウンタに居た客全員が頼んだものなあ。二巡目のお客さんは残念だねというと、「1本も出ない日もあるんですよ。でも、そんなもんですよと」親方。おまかせはやらないから、お客が頼まないと余る時は余る。魚が余ると悲しいから、毎日少しずつ仕入れて毎日仕込む昔ながらの仕事なのであった。

「すきやばし」の話などしていると、問わず語りに石丸親方が師匠の師岡親方が先月亡くなったと。92歳。大往生であるが、限定した関係者葬だったらしい。「新橋鶴八30周年の夜」にお会いして会話させてもらったなあ。あれからもう10年だ。石丸親方も気のせいか、なんだか気落ちした感じがあり。「私も、もう来年73歳、神保町に移ってから満5年になるんですよ」と。もうそんなに経ったっけ。こっちも年取るはずだ。ただ営業について弱気な事を語るので、隣のご夫妻の奥さんと一緒になって慌てて「いやいや、もっと続けてくれないと困りますよ」と。時代は勿論、移り行くのだけれども、まだまだ残ってもらいたいものは沢山ある。

漬け込みのハマグリを貰ってお酒終了。お茶を貰って握りに。中トロ2。脂が良く乗って酢飯とよく合う、コハダ2。もう大きなサイズだが臭みなくネットリした旨味が素晴らしい鶴八系伝来の味。軽く炙ったアナゴもトロトロで旨い。ハマグリ出汁のお椀。最後はカンピョウ巻で〆。

まだちょっと早い気もするけれどもおそらく年内には再訪できない。「よいお年を」と挨拶して店を出る。店名の入ったボールペンを頂いた。

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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」昼の部。 十三代目 市川團十郎白猿襲名披露、
先週日曜日には、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」昼の部。先月から二か月連続で続く、市川海老蔵改め十三代目 市川團十郎白猿襲名披露、 八代目 市川新之助初舞台」公演でもある。

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最初の演目は「鞘當(さやあて)」

鶴屋南北の大作からの一場面だが、「鈴ヶ森」もそうなのだとか。歌舞伎は本当に人気のある場面しか残りませんな(笑)

桜が美しく咲き乱れる吉原仲ノ町、刀の鞘が当たった武士同士が切り合いになる場面に仲裁が入る。煌びやかな背景で、諍いを歌舞伎の様式美に満ちた動きで見せる短い一幕。侍は松緑と幸四郎。止めに入るのは猿之助。偶数日は市川中車が演じているようだ。久々に表舞台に復活の香川照之も見たかったな(笑)

25分の幕間。満員の館内は団体客も多いからか、この幕間でも席でしゃべりながら食事するお客さんが多く、賑やかで結構といえば結構だが、近くの席に座っている気はしないのでちょっと外へ。

次の演目は、「京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)」。菊之助と勘九郎が同じ白拍子花子を二人で舞い、最後に新團十郎の『歌舞伎十八番の内 押戻し』がつく。

菊之助の白拍子花子は特に後半になるにつれ、美しく妖艶で深い情念を感じさせる。踊りのどこに違いがあるかと問われてもいわく言い難いが、勘九郎の白拍子花子も踊りは良く似ているのだが、なんだか抜けた明るい感じになるのが面白い。勘九郎は初役なのだそうだが、普段は立役が多いのに、女形の踊りでもきちんとこなすのは身についた基本の稽古の賜物か。

歌舞伎十八番の「押し戻し」は台本のある狂言ではなく、怪異を押し戻すという荒事の一種の場面の名称。後シテで白拍子花子が清姫の怨霊と化してから、新團十郎が花道より豪華な隈取りかつ派手な衣装で登場。「竹馬の友の菊之助と、お世話になった中村屋に似ているな」などど戯言を入れて荒事の見得を豪快に切って見せる。やはりこんな場面は成田屋の独壇場である。彦三郎や坂東亀蔵も若手を引き連れ所化坊主につきあってご苦労さまであった。

ここで35分の幕間。さらにこの幕間では、場内もロビーも弁当食べる人やら喋る人やらで騒然と。成田屋贔屓の団体はやたら喋る人が多い気がするが、まあ場内満席のせいか。これまたやってられないのでしばし外に避難して散策。

最後は「歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)」。八代目市川新之助初舞台相勤め申し候。

粂寺弾正は元々座頭級がやる大役。子供が粂寺弾正やって、学芸会みたいにならないかと心配したが、新之助は台詞がきっちり入っているし、ところどころの見得も決まる。相当稽古したんだな。

元々が、戯画的な造形をされた人物像であるし、荒事は子供の心でなどとも口伝がある。子供に入れ替わっても、まあそれほどの違和感はなかった。

勿論それは脇を固める役者が真剣にやっていたからでもある。雀右衛門の腰元巻絹、錦之助の秦民部、右團次の八剣玄蕃、芝翫の小原万兵衛、梅玉の小野春道など役者が揃ってしっかりとした演技を見せる。歌昇、新悟、児太郎、廣松ら若手も好演。粂寺弾正に普通に誰かが主演したら、なかなか重厚な一幕になっただろう。

ただ、この日の新之助は、最後の謎解き、槍を抱えてまず見得を切る所をすっ飛ばしてお姫様に挨拶したので、下手袖から声が掛かってやり直し。やはり親父が袖からずっと見ているのじゃないかなあ。まあ初演であるから時には間違うだろう(笑) 

台詞については殆ど間違いはなく覚えているが、歌舞伎の台詞には独特の抑揚があり、きちんと覚えているものの子供の甲高い声で抑揚まで真似されるとちょっと違和感を感じる所あり。これは声変わりしてから稽古やり直しとなるだろうけれども、まあ仕方がない。

この芝居の粂寺弾正は芝居の途中でも時折客席に語りかける場面があるのだが、芝居の切り、幕外の引っ込みでも客席を見渡し「いずれも様のお力添えにより、この大役をなんとかやりおおせました」との台詞は、襲名初舞台に相応しいもの。館内は万雷の拍手。大向こうも沢山かかって場内を盛り上げる。

歌舞伎名門の御曹司として生まれるというのは、正しく特権的地位にいるという事。若いうちからどこへ行ってもちやほやされるだろうし、思い上がったり遊びまわったりグレたりするなと言われても、なかなかそれは難しかろう。うらやましがられる地位でもあるだろうが、本人に取っては重たい苦しい宿命でもあろう。親父を真似するのか違う道を行くのか、その前のご先祖に行くべき道を見出すのか。まだ若い当人には幸多かれとただ願うけれども。


「新ばし しみづ」訪問。
12月最初の日曜に「新ばし しみづ」訪問。早い時間が空いていなくて7時からの予約。

常温のお酒を貰っていつも通りおまかせのつまみから始めてもらう。

お酒は常温で。お通しはワカメ。煎り酒を添えて。梅干しと鰹節を酒で煮詰めた煎り酒は、醤油が無かった頃の調味料として江戸期にも使われたらしい。

白身も煎り酒で試してくださいと清水親方が他のお客にも勧める。ヒラメを塩分の少ない煎り酒で食すると、微妙な味が分かる気がするのだった。

細切りのスミイカは塩で食する。牡蠣は生のまま塩で洗って締めてある。不思議にして濃厚な旨味。タコは頭の部分も添えて。

サバはかなり強めの〆。冬場になって旨味が乗ってきている。カマスは塩をしてあるのでわさびでどうぞと。

「團十郎襲名興行行きましたか? あんまり盛り上がってないんですって」と親方。まあ客席は満席だし大向うも復活したりで、盛り上がってない事もないだろうが、11月の興行では、襲名する本人たちが出ない「祝成田櫓賑」や、列座する幹部の人数が少ない「口上」など、なんとなく寂しい演目があったのも事実だよなあ。「外郎売」「勧進帳」「助六」と成田屋家の芸が揃った上演ではあるのだが。

赤貝に漬け込みのハマグリ。白子ポン酢。つまみ最後はウニで。

他のお客の質問に答えて、ブリは能登辺りまで来ているが、良い物がなく一休みだと親方。北海道で随分と長く獲れるようになったのは温暖化の影響があるのではと問うと、清水親方は「毎年の海のちょっとした変化ですよ」と。親方は元々「反マスク」「反ワクチン」の立場であるから、「地球温暖化懐疑派」でもあるのかもしれない。この辺りは不思議に親和性があるんだよなあ(笑)。

お酒を切り上げてお茶を貰う。握りはいつも通り。中トロ2、コハダ2、アナゴ2。最後はかんぴょう巻きを半分。

ひと頃に比べると酢飯の味が穏やかになった気もする。中トロは柵から切り出すのではなくバットにある既に外した身から。均一に脂が乗って旨味あり。コハダの締めがしっかりしているのは変わらない。

値段は昨今の物価上昇を反映してか、今年になってちょっと上がったような。まあそれでも昨今高い勘定取る若手の寿司屋に比べたら、まだまだリーズナブルと称してしかるべきではある。ほろ酔い加減でタクシー帰宅。

市川海老蔵改め十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 「十一月吉例顔見世大歌舞伎」、夜の部
大相撲九州場所の中日だったか、市川海老蔵改め十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 「十一月吉例顔見世大歌舞伎」夜の部を見た。

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最初の演目は、歌舞伎十八番の内「矢の根(やのね)」
 
父の仇をとる為に正月にもかかわらず矢の根を研ぐ曽我五郎。荒事の様式美を見せる短い歌舞伎十八番。後の演目「助六」も実は曽我五郎であるから夜の部は曽我五郎尽くし。そういえば、昼の部、新之助が出演の「外郎売(ういろううり)」も「実は曽我五郎」という設定であるから、昼も夜も曽我五郎だらけで江戸の新春興行の如く目出度い演目ばかりである。

隈取の幸四郎は初役。父の白鸚もこの役はやっていない。叔父の二世吉右衛門に1年前に教わるつもりだったが叶わず、唯一教わっていた歌昇から教わったと筋書きに。確かに二世吉右衛門を彷彿とさせる所が感じられる。これからも、高麗屋の芸と共に、叔父である播磨屋の芸を受け継いで行ってほしいものである。團十郎の襲名披露で歌舞伎十八番の荒事の主役を任されるのは、実に気持ちが良いだろうなあ。荒々しく無心に、元気に勤めるところがよい。

次は「十三代目市川團十郎白猿 八代目市川新之助襲名披露 口上(こうじょう)」

本来ならば親戚筋の白鸚が場を仕切る役なのだろうが、残念ながら体調不良で休演。菊五郎が最初の挨拶。新團十郎について「若い頃は暴れん坊将軍と呼ばれまして」と場内を沸かせる。

仁左衛門、左團次、梅玉と襲名を寿ぐ口上を。

新之助、新團十郎の挨拶の後、最後に背景が開くと千畳敷の広間。「吉例により睨んでご覧にいれます」と、新團十郎が成田屋独特の「にらみ」を披露して幕。この型はしっかりと決まっている。もう少し列座する俳優も多くして賑やかにやれたらよかったが、コロナ対策とかあれこれ事情があるのだろう。大向こうがかかるのはやはり懐かしくも目出度い。

最後の演目は歌舞伎十八番の内 「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」

最初の口上は、幸四郎が成田屋三升の紋の入った裃姿で出てきて、格子の中の河東節連中に「どうぞお始めくださりましょう」と声をかける。

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河東節十寸見会御連中が音楽を担当するのは、成田屋が「助六」を出す時だけ。この河東節連中はプロではなく、お金持ちの奥様方が趣味で習ったりしており、そのまま成田屋の後援会筋と被るので、舞台開演にあたっても最大限の敬意を払っているのだとイヤホンガイドで。

前に見た時はナイル・レストランのG.M.ナイルさんの名前が出ていたが今回はない。Wikiによると女性トラブルがあって店は完全に3代目に譲ったらしいので、河東節も引退したのかもしれぬ。助六は長い演目だが、河東節は、助六の出端が終わり、助六が舞台に出てきたころで終了。

舞台最初は、コロナ禍の公演ではいままでなかったほど大勢の役者が出て、絢爛豪華な吉原の花魁道中。これが素晴らしい。揚巻は菊之助。艶ややかに美しい。悪態の初音も立派な出来。髭の意休さんは、今までだと左團次に決まりという気がするが、今回は新團十郎と同世代の松緑。単なるいじわる爺様ではなく、貫禄も知性もある大きな武士であるが、松緑もきちんと成立している。新團十郎誕生を期に、菊之助、松緑が継続的に大きな役をやる時代になって行くのだろう。

2階席だったので助六の出端の最初、逆七三の見得は見えない。しかし舞台に出てくると新團十郎の二枚目ぶりと姿形の良さは際立っている。江戸一のモテ男、花川戸の助六がまさに目の前に出現したという印象。私も花川戸に何年か住んでいたので親近感を感じるなあ(笑)新之助が福山かつぎで出演。

三浦屋白玉は梅枝。コレまた女形の世代交代を印象づける。傾城には、児太郎、廣松、莟玉、團子、笑三郎が並んで。こちらも若手が台頭。

襲名披露らしいのは大物が大勢脇を固めている所。

口上では「好きな役ではないですが」と述べていたが、くわんぺら門兵衛は仁左衛門。白酒売新兵衛は梅玉。江戸和事の柔らかな軽妙さを見せる。通人里暁は鴈治郎。こちらは関西弁で楽屋落ちも満載で客席は大いに湧いた。朝顔仙平を又五郎、三浦屋女房は東蔵、曽我満江は魁春。

演目の切りは、新團十郎の助六、菊之助の揚巻、松緑の髭の意休が三人揃って。これもまた新團十郎の元で歌舞伎の時代が変わりつつある事を示す、昔の三之助の「リユニオン」であった。