97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「新ばし 笹田」訪問。
水曜の夜は「新ばし 笹田」。 実に久しぶりに訪問。今週は夜の予定が空いていたので、「與兵衛」「しみづ」「笹田」と御無沙汰している店を連投で訪問している。

入店して笹田氏と女将さんに「どうも御無沙汰!」と挨拶。カウンタも満席、個室も2つとも客が入るようだ。商売繁盛ですなあ。

お弟子さんの「海老蔵」と「松山ケンイチ」は両方とも元気そう。4月に更にもう一人若いのが入って調理場は4名体制に。新人も真面目そうで頑張っている。お弟子さんたちが、真面目な笹田親方の教えを受けて競い合うように切磋琢磨している様子は、見ていて気持ちがよい。

最初のお酒は「磯自慢特別本醸造」。雑味はなく軽やかでごく仄かな酸味を感じる癖の無い酒。

料理はいつも通りおまかせで。最初は小さな器で供される冷しとろろ。じゅんさいとキュウリが食感のアクセントに。出汁の味が効いて実に旨い。

二品目は、穴子八幡巻。 ありきたりの先付けとして何の味もしない一品を供する店も多いが、この店のものは、牛蒡の野趣溢れる香りと、炙った香ばしいアナゴの皮目の脂がしっかりと自己主張する。

鱧の焼き霜。皮目を炙る寸前に笹田氏自ら骨切りを。淡路島産。今年初めて食した鱧。ふっくらした身には鱧にしかない微妙な旨味あり。塩か梅肉で。

忙しく働くお弟子さん達はしかし目配りよく、お酒が切れると、お替りは如何致しましょうかとメニューを差し出す。笹田氏がバットに入れた生の鮎を見せてくれ、今日は広島と島根が入ってますが、一匹ずつ食べ比べてみますかと。勿論、その提案に乗っかる(笑)

二杯目の冷酒は「松の司純米吟醸」。こちらは吟醸香があって、ふくよかな甘味がすっと爽やかな飲み口に変わる。三杯目もこちらで。

伏見唐辛子の煮物はじゃこを合わせて。出汁を含んだ繊維が舌の上でホロリと崩れ、箸休めにもちょうど良い。

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次に供されたのは、アワビの唐揚げ。葛を打ってただ素揚げしただけと去年も聞いたが、寿司種の塩蒸しよりも更に香ばしく、旨味が内部に凝縮されている絶品。この店ではそれほど揚げ物は供さないのだが、しっかりした料理人が揚げるとアワビがこれほど旨くなるのかと感嘆する。 いろんな料理があるものだなあ。

定番の壬生菜と油揚げの煮物も、お惣菜のようで実は幾つも手が混んだブロの仕事。しかしどこか懐かしくほっとする味に仕上げるのが技なのだろう。

次はお造り。シマアジは高知産、腹身の部分、プルンとした天然物独特の舌触り。タイは愛媛。上品な旨味あり。ネットリしたアオリイカには皮目に細かく包丁が入る。ポーションは少なめだが、下手な寿司屋では太刀打ちできない質の良い物。寿司種に拘らず、その日良い物だけを数種だけ引けば良いというアドバンテージはあるだろうけれども。

お椀はハモ。これも昨シーズン食したが、新玉ねぎ、九条ネギを添えたしゃぶしゃぶ風。玉ねぎの仄かな甘味が意外に鱧とよく合う。柚子胡椒はお好みでと言われて途中で入れてみたが、微妙な甘味が飛んでしまって、これは使わないほうが正解だったかもしれない。

笹田氏によると、訪問した昨日6月28日は、以前の場所、尾坪ビルで最初に「笹田」として開店した記念日なんだとか。開店にこぎつけるまでドタバタしたので日付は記憶に残っていたが、当日の朝突然思い出したと。 女将さんのほうは言われて思い出した由。今の場所での開店記念日は確か12月で馴染み客から毎年花が贈られているが。

過去ログを遡るに、私が最初に前の場所にあった店を訪問したのが開店から間もない2005年の10月。そもそも「しみづ」に教えてもらって訪問したのだが、今でも清水親方夫妻は月に一回程度は来店するとか。今日で丸12年経って明日から13年目に突入。そんな日に予約入れたのも何かの縁か(笑)

昔の店は狭かったよねえと女将さんとも雑談。トイレも店の外だったし、お酒の冷蔵庫も店内ではなく外にあったものなあ。実に懐かしい。

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そうするうちに、鮎が焼きあがってくる。広島は太田川、島根が高津川だったかな。じっくりと焼いてあるので頭からバリバリ行けますと。鮎の骨を抜く技なんて読んだ事あるけれども、こんな風に焼いてくれれば手間いらず。島根産のほうが鮎独特の香りが強い気がするが、身肉のふっくらした旨味は広島産のほうがあるか。今年初の鮎。こんなに旨いのを食したら、もう要らないかな。

煮物はタコと石川芋の炊合せ冷製。最後は、炊飯土釜で炊いた炊き立ての艶々のご飯に、ちりめん山椒、お新香、わさび漬けに赤出汁。炊き立てのご飯を供する店はいくらもあるけれど、ここよりも旨いご飯にはあまり出くわした事がない。お代わりにはお焦げも添えてもらって。これまた香ばしくも素晴らしい。

最後は冷製の白玉ぜんざい。これまたくどい甘味ではなく、酒飲みでも旨く食せる上品な甘味。煎茶も爽やか、

いや~、どれも素晴らしかった。一品一品に笹田氏自身の真面目で丁寧な技が光る、実に誠実な味。何十人も働いている大店では決して出会えない料理をカウンタで食せる幸せを堪能した。

ご夫妻の見送りを受け、近所でタクシー拾って帰宅。


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「新ばし 笹田」訪問。
木曜の夜は「新ばし 笹田」訪問。

入店すると部屋のほうにはもう客が揃っており宴会を始める所。この客達は全員声が大きくて煩かったが、まあ12月は宴会シーズンですからな(笑)笹田氏によると店も今月は結構忙しいのだとか。年内は28日まで営業。

お酒は「羽前白梅」純米吟醸を。サラリとした癖のない淡麗な酒。最近飲み過ぎなのでお水も一緒に。

まず最初は鯛にゅうめん。熱々が小さな塗りの器で供されて身体が暖まる。実に濃厚な旨味が溶け込んだ出汁。丼一杯でも食せる気がするが、ほんの少しというのも程が良い。

香箱ガニ。昨今は禁漁期が厳しくなり、漁は年内でもう終わりなんだとか。外子を敷いた上に綺麗に掃除された身肉が乗り、オレンジの内子とカニ味噌が乗る。冬の宝石箱のような旨味。蟹酢も効いている。

この店の定番、壬生菜と油揚げの煮物。ふっくらとした揚げに上品な出汁をたっぷり吸っている。胡麻の香りもよし。

自家製のカラスミとあん肝。プリン体満載(笑)今年のカラスミは質にバラつきがあり、お土産用に良い物を揃えるのが大変だとのこと。炙ったカラスミは皮が香ばしく、生のものはネットリと発酵した旨味がある。あん肝は脂が乗るが癖が全くなく、濃厚な旨味だけが口中に広がる実に上質なもの。

お造りは、ヒラメ、天然ホタテ、青森のウニに生海苔を添えて。ヒラメはなかなか寿司屋でも出会えない上質な旨味。ホタテはサラリとした旨味。生海苔は市場でおっつけられたのだそうだが、ウニに合うのではと薄味で炊いてみたのだとか。確かにウニは生海苔ともよく合う。軍艦巻きだって合うものなあ。

お椀は、粟麩と甘鯛。上品で澄んだ出汁は最初軽く感じるが、甘鯛が淡雪のように椀の中に溶け崩れ、身肉からの出汁が混然一体となって旨味が完成する。

焼き物は、まながつおの幽庵焼き。遠火で焼き上げたふっくらした身肉の旨味。

煮物は、京野菜のおでん。このサイトにも書かれているが、おでんと称するものの、これは実に手のかかった京野菜主体の煮物。

九条ネギが一杯に入ったさつま揚げ、うずらの卵も自前で丹念に半熟に茹でている。出汁を一杯に吸った聖護院大根、京人参、ネットリした海老芋、鶏皮。全てが別々に出汁を煮含めて最後に合わせる仕事。家庭料理ではまず出せない味。いや、おでん屋でだって無理かもしれない。冬にこの店に来る至福のひとつ。

最後は何時も通り、炊飯土鍋で炊きたてのご飯。艶々した炊きたてのご飯に勝るものなし。お新香ひとつ取っても供する寸前に主人の笹田氏自ら切りつける。小さな赤出汁、ちりめん山椒、ワサビ漬けに、今回はイカの塩辛も添えて。この塩辛が実に濃厚でご飯との相性が最高。ワタの脂が実に乗っている。お替りを所望してお焦げと共に。最後は煎茶が供され、甘味は珍しくワラビ餅。一杯のきな粉を添えて。

全てが素晴らしかった。弟子の海老蔵も松山ケンイチも真面目に頑張っているが、弟子任せにした仕事など一品も無い。全て笹田氏の鋭い目が光り、一品出すと必ずそれとなく感想を聞きに来る実に真摯な仕事ぶり。ケレン味のある派手な食材を、これでもかと見せつけるような仕事ではない。実に真面目に美味さのみを追求した仕事を堪能。

最終の営業日にカラスミを取りに来る予約をして勘定を。笹田夫妻の見送りを受け、実に満ち足りた気分で店を後にした。たまの贅沢だが、払ったお金以上の価値をきちんと与えてくれる素晴らしい店。


「天麩羅 なかがわ」訪問。
昨夜は、築地「天麩羅 なかがわ」。随分と久しぶりの訪問になってしまった。「新ばし 笹田」で松茸を食した際、そうだ早く行かないと天麩羅も松茸の時期が終わってしまうと思い出して予約。

冷酒を貰って何時も通りおまかせで始めてもらう。お通しは三つ葉。

まずは海老が2。中心に生の甘みを残すごく浅い揚げ。鬼殻を取った海老頭は深めに熱を通して海老味噌の甘みを封じ込める。

キスは長めに熱を。小麦粉の香ばしさを感じる衣の中は繊細な身がホロホロと崩れる。軽めの衣で軽く揚げた銀杏は秋の風味。大葉に挟んだウニ。大葉の香りがフレッシュでウニはサラリと軽い旨味。

走りのハゼ。キスよりも更に繊細な身肉がホロホロと崩れるが、これから脂が乗ってくると更に旨味が増して行くのだと。

松茸は長野。一本丸ごと揚げるて縦に4つに裂く。松茸の香りで口中が一杯に。何時まであるのか問うと、中川氏は「卸しにあるまでです」と笑う。もうそろそろ旬も終わりに近づいている。

スミイカも肉厚でネットリした旨味あり。メゴチは深く揚げて濃い旨味が衣の中に凝縮している。新唐辛子は爽やかな風味。穴子もここのスペシャリテ。水分を十分に飛ばして穴子の旨味が濃縮している。

最後に野菜でアスパラ、薩摩芋など。最後の〆は小天丼。赤出汁とお新香と共に。種によって自在に変える揚げ具合や衣の具合。種の風味と胡麻油の香ばしい香り。季節の味を堪能した。何時来ても実に良い店だ。

「新ばし 笹田」訪問。
水曜日は「新ばし 笹田」のカウンタで京料理。前の週に電話したら運よく空いていた。ちょっと間が空いてしまったので、昨今の景気の事等笹田氏と雑談。9月は台風が多くて魚が揃わず仕入れが大変だったのだが、逆に予約が少なくその点では助かったと。まあ商売には色々ありますな。11月初旬の築地移転の時には休みを取ろうと思っていたのだが、移転延期なので営業すると。

既に部屋のほうには団体が入っており喧しいが、カウンタはまだ私だけ。冷酒を貰って始めてもらう。お弟子さんの「海老蔵」も「松山ケンイチ」も段々と成長して頑張っている。

「九平次純米大吟醸」は、最初に爽やかな酸味を幽かに感じるが、その後にふっくらした米の甘みがそれを覆い、舌にサラリと水の如く溶けて行く。幾らでも飲める気がして危ない(笑)チェイサーに水を所望。

「新ばし しみづ」に教えられてこの店を最初に訪問したのが2005年の10月。それからもう11年。店が今のこの場所に移転してから既に5年だとか。そういえば東日本大震災の年だったものなあ。光陰矢のごとし。そんな昔話を笹田氏や奥さんとしながら。

最初にお凌ぎで出て来たのは鯖の棒寿司2切れ。鯖は松輪。脂と旨味が十分に乗っている。酢飯は関西風で甘みがあって柔らかいが、棒寿司にはこれもよく合って旨い。

茹でたてのきぬかつぎは、ネットリした大地の滋味あり。

小さな器でスッポン出汁の茶碗蒸しが供される。臭みや癖の一切無い上品なスッポン出汁が出ている。これまた素晴らしい。茹でたての茶豆。壬生菜と油揚げの煮物は定番の一品。出汁の旨味と胡麻の香りがしみじみと旨い。お酒は九平次純米大吟醸を継続。

笹田氏がピンクがかった大きな白身魚の片身に串を打ち、皮目に塩を振って焼き霜にするのを見ていると、「これは鰆です」と教えてくれる。本格シーズンはこれからで、もっと大きくなるんだとか。

お造りは、この皮目を軽く焼き霜にした鰆、銚子のヒラメ、剣先イカ。鰆は香ばしい皮目の香りに脂の乗った旨味が溶ける。ヒラメの脂はまだ軽いが旨味が実に上品。剣先イカは、細かく包丁が入り、ネットリした旨味がアオリのよう。

今年の松茸は、台風の影響か岩手があまり出回らず、長野産を多く使っているとのこと。盛はあと2週間くらいではと笹田氏が。間に合ってよかった。そういえば天麩羅も食しに行かねば。

普段、料理屋では基本的に写真取らないが、今年初松茸ということで、記念に写真を(笑)

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長野産松茸と淡路の鱧の土瓶蒸し。出汁が上品で香り高く素晴らしい。淡路の鱧の脂が出汁に溶け、松茸の香りも濃厚でまさに至福の旨味。

焼き物は、カマスの幽庵焼き。フックラとした身肉の旨味と皮目に染みたタレの美味さ。付
け合せの銀杏にも秋を感じる。

煮物は、ニシンと加茂茄子の炊合せ冷製。いわゆる京都のおばんざいで、のんびりほっこりと。ニシンは甘辛く煎りつけるように炊いてあり、あっさりした出汁を含ませた薄味の茄子との相性が良い。

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最後は、松茸と鱧のフライ。塩とウスターソースを添えて。笹田氏は、フライはやはりソースで食するのが大好きだと。確かにフライにはソースだよなあ(笑)京料理にウスターソースは邪道かもしれないが、和食には元々ハイブリッドな面もあるし。半分を塩で、半分はソースで。松茸の香りはフライでソースでもまったく負けない。お腹の中が全て松茸の香りで充満したかのよう。

番茶を貰って食事に。炊飯土釜で炊きたてのご飯。お新香にちりめん山椒、赤出汁。今日は新イクラが出たのが珍しかった。ただ新イクラの皮の処理だけは寿司屋に一日の長あるかな。何か皮が障らなくなる仕込みのコツがあるのだろう。

しかしやはり食事の〆は炊き立てのツヤツヤご飯に勝るものなし。お焦げの入ったお代わりも貰って。最後は煎茶に冷製の白玉ぜんざい。甘い物は普段食さないが、ここのはしみじみと旨い。

松茸は今月初旬まで。来月からは香箱蟹が始まり、この店の冬の定番煮物、自家製のおでんも始まる。11月12月と暇を見て毎月来ないと。


「新ばし 笹田」、久々に訪問。出会えてよかった。
月曜夜は、「新ばし 笹田」。実に久しぶりの訪問。2週間ばかり前の昼間、偶々店の前を通りかかると戸口から出て来た笹田氏とバッタリ。随分とご無沙汰してしまったので、この日の予約を取ったのだった。

カウンタいつもの席に着いて、昨今の店の景気など聞きながら。前の場所に開店したのが2005年の6月だったっけ。もう10年以上も有名店の地位を守り続けてて隆々と。そう誉めると、笹田氏は「もうやっとです」と謙遜するのだが。「新ばし しみづ」の親方も先週訪問した由。

客足には、時折ばらつきがあると言うが、この日もカウンタ、個室とも一杯。笹田氏は何にでも手を抜かないので、満席だと大変だと思うが、中で働く弟子の「海老蔵」と「松山ケンイチ」がもうすっかり慣れて手際よく働く戦力に。全員キビキビ働いて、料理出しもスムースに進む。

最初のお酒は宮城の大吟醸「宮寒梅」。ふっくらした優しい飲み口で癖はなく、サラリと上品な吟醸香と共に口中で呆気なく無くなる感じ。大吟醸の良い酒は肴要らずで酒だけ飲んでも旨いから、逆な意味で料理に合わないという気もするほど。

二杯目からは「伯楽星」純米吟醸に切替。

先付けは、まず涼しげな小さいガラスの器で供される冷やしトロロ。じゅんさいとキュウリが食感のアクセントに。今まで他の場所で食した冷やしトロロとは一体何だったのかと考え込むほど旨い。山芋を摺って出汁と合わせる普通の料理だが、出汁の具合が素晴らしい。笹田氏に「丼一杯でも食えるね」と云うと、「お代わりしますか」と笑われたが、こればかり食べる訳にもゆかない(笑)なんでもそうだが、もう少し欲しいくらいが程良いのだった。

笹田氏が、後で出しますがどれを焼きますかと、艶々と光る鮎が入った容器を見せてくれる。例年広島と島根を使っているのだが今年は雨の具合かあまり入荷せず、この日は熊本と高知。しかし笹田氏が選び抜いた素材。食べ比べで一匹ずつ焼いてもらうことに。

穴子の棒寿司。これもこの時期定番だが、江戸前のふっくら旨味のある穴子と関西風の甘味のある酢飯が押し寿司として絶妙に完成している。江戸前の寿司屋ではお目にかかれない味。

昨シーズンから始めたと思ったが、アワビの唐揚。揚げたての熱々が供される。表面だけに軽く粉を打ってから揚げ、香ばしい香りをまとった身肉には旨味が凝縮している。鶴八系の塩蒸しにもちょっと風味が似ているが、寿司種ではない一つの料理として昇華した逸品。

まだ立て込んでいないので、先週の台湾出張のことや、お店の夏休みの事など笹田氏や奥さんと雑談。「笹田」は8月11日から16日まで夏休みだったかな。11日が山の日で祝日とはつい最近まで知らずに営業する予定だった由。

ウニと湯葉のゼリーかけ。接待などで個室和食店などに行くと、「いつ作り置いたのか」と思う、気の抜けたような同工異曲の一品を出されることがあるが、ゼリーの深い旨さは眼を見張るもの。鯛の骨で濃い出汁を取っているのですと笹田氏の解説。真面目に作るとちゃんと何でも旨いという基本を思い知らされる。

壬生菜と油揚げの煮物は必ず供される定番。しかしまったく飽きない。お惣菜メニューであるが、実はお惣菜よりももっと手をかけているのがプロのプロたる技。しかし、この店に戻って来たなと安堵する味なのだ。

次はお造りが供される。塩釜のマコカレイ、高知天然のシマアジ、皮目を炙ったカツオ。どれも上品なポーション。シマアジもマコカレイも旨味があり、醤油が汚れない実に稠密で繊細な脂が身肉に。皮目を炙ったカツオは爽やかな旨味と初夏の香り。こちらは生姜の薬味醤油で。

お椀は幅広の器。鱧と新玉ねぎ、九条葱を合わせたしゃぶしゃぶ風だとか。新玉ねぎと鱧の組み合わせは初めて食したが、なかなか合う。最近取り入れた新機軸ですと笹田氏が。添えられた柚子胡椒を入れると、また味が変わって旨い。出汁は、溶け出す鱧の脂と野菜の旨味を受けとめ、しかし濃すぎず、なんとも具合が良い。

ここで先ほどからじっくりと焼いていた鮎が供される。熊本産と高知産。川の名前は失念してしまったが、もちろん天然。骨までしっかり火が通っており頭からガブリと食せる。香ばしい皮目、ホロ苦い藻の香りがするような内臓。ホロホロ崩れる淡泊な身。個体差もあろうが熊本産の方が若干香りが濃いか。ここで鮎を食したら、今年はもう他で頼まなくてよい気が(笑)松茸もそうだけど、一年に一度、きちんと旨いのを食すればそれでよいかなあ。蓼酢は眼の覚めるような鮮烈さ。鮎に合わせる事を発見した先人の知恵に感心。

煮物は、冬瓜と鴨の治部煮。この店で肉類が出るのは珍しい。冬瓜は、素晴らしく旨い出汁が隅々まで染みて、まさにトロトロに煮上がっている。極端な事を言うと鴨が無くても成立するね。

ここで食事となる。笹田氏自ら、炊飯土釜の炊き具合を時折香りでチェックし、お新香も供する直前に自分で切り分ける。大店では、ご飯付属のお新香など、下っ端が事前に切って盛り付けたものをラップかけて冷蔵庫に保存しているだろう。こんな積み重ねに、店主が真面目に自ら調理する店と、商売優先で量をさばく店との差が出てくるのだなあ。

ちりめん山椒、お新香、ワサビ漬け、赤出汁で炊きたてのご飯。日本人の至福。お焦げを入れたお替りも所望。最後はこれまた定番の冷製の白玉ぜんざい。薫り高い煎茶も結構。

どれもこれも実に旨い、陶然の2時間。勘定は前より若干上がったけれども、供される食材の質にもきちんと反映されており、納得のゆくもの。何時来ても裏切られることのないこの店に出会えてよかった。笹田夫妻の見送りを受けて、実に満ち足りた気分で家路に。


「天麩羅 なかがわ」訪問
日曜の夜は築地の「天麩羅なかがわ」。

土曜日に電話したら、席が空いていた。中川氏は仕事中は寡黙な職人であるが、電話するとすぐにこちらの名前を認識して、「いつもお世話になってます」と、受け答えはいつも明るく快活。店を訪問するのが楽しみになる。電話を受けるところから真面目な仕事が始まってるのだと何時も感じる店。

開店すぐに入店。今夜もまた満席のようだ。商売繁盛である。お酒は冷たいのを所望。お通しは菜の花。

特に何も頼まなくとも、おまかせのコースが始まる。メニューは久しく見た事がないけれども、「天麩羅は季節感なく決まった魚介類だけが本格」という考えのお客用にも、海老、キス、イカ、アナゴ等の基本種だけを供しているリーズナブルなコースがあったはず。

ただ、季節の旬の物を天麩羅に求めるならば、やはり、最初から店におまかせのコースのほうがすっと楽しめると思う次第。寿司と違って天麩羅は、揚げ油のコントロールもあって、全員がお好みで口々に注文しては大変な事になる。かといって、安いコース頼んで、後で好きなものだけ追加するのも、相当の天麩羅手練で店に慣れてないとタイミングが難しい。

まずは海老から。最初は塩で。二本目は天つゆで食する。いつもと同様、サッと揚げ、中心部に生を残した上品な甘味。鬼殻を取った海老頭はもう少し深く揚げて香り高く海老味噌は甘い。キスは衣が香ばしく、ホロホロと崩れる身肉にも水分が飛んだ旨味あり。

ここで白魚。一本一本丁寧に揚げられている。元々意外に濃い旨味がある魚だが、ここの香ばしい揚げ方の衣にまた素晴らしく合う。今年は出るのが早いと「しみづ」で聞いていたが尋ねると、「でも良い物が少ないですね」と中川氏談。桜の時期までだそうだが、今年も食する事が出来て幸せな美味。

ふきのとう。春を告げる実に爽やかなホロ苦さ。胃が賦活する旨い胃の妙薬を食べているような至福(笑)

さっと揚げたスミイカは実に肉厚。しかし火の通しはごく浅く、スカっとしたスミイカ独特の歯切れを絶妙に残しているのだった。メゴチは強めの火で皮目を焼き切る。これも天麩羅を食ってるなと感じさせる独特の種。タラの芽もまた春の山菜。もう少しすると天然の物が出てくるのだとか。

白子は濃厚な旨味が、香ばしい衣に包まれている。酢橘を添えて塩で。ウニは大葉に包んでサッと揚げる。冬の名残の種も旨味十分。冬の名残に春の走りが顔を出し、交錯した美味がどちらも楽しめる時期。

穴子は一匹をじっくり揚げて、箸で挟んで中央をバスンと切るのだが、煮上げた寿司屋の穴子とはまったく違う意味で穴子の美味さをつくづくと味わえるここの看板。素晴らしい。

サツマイモ、椎茸、茄子、アスパラなどの野菜も旨い。厨房の笊に盛ってあるが、見ても立派で食しても旨く、どれも中川氏のこだわりを感じさせるもの。最後は小柱の天丼。赤出汁とお新香と共に。これまた実に旨い。日本人は御飯だよなあ(笑) 

実に久々の訪問。この所荒れた天候が続き、どうかなと思ったが、プロはきちんとしている。天麩羅を食するということの至福を味わった夜。

「新ばし 笹田」新年初訪問。
火曜日は「新ばし笹田」。新年初訪問。去年、カラスミを引き取りする時に予約してあった。笹田氏や奥さんと新年のご挨拶。お弟子さん達も礼儀正しく合間に挨拶に来る。

新年の営業は5日からとのこと。今年の年末年始は短かったなあ。ちょうど「新ばし しみづ」は新年営業を終えて休みに入っており、明日辺りに来店するとのこと。

6時前に入店したのだが、カウンタには既にお客が2組。もう厨房はバタバタしている。奥の3人組は接待のようだが、声高によくしゃべるなあ。偉そうにしているから、まあ実際に偉いのだろう。しかしちょっと五月蠅い(笑)こっちは離れているからよいが隣の客は大迷惑だろう。

お酒は磯自慢純米吟醸。チェイサーに氷水をもらって始めてもらう。

京風の白味噌仕立てのお雑煮。一月一杯はお正月気分で京風のお雑煮が出るとのこと。煮た小さな丸餅、京人参に子芋。白味噌は酒かすの如き濃厚な旨味あり。

必ず供される定番の壬生菜と油揚げの煮物は、心休まる味。

茹でた松葉蟹。立派な脚と蟹爪は綺麗に切れ目が入っており食べやすい。それ以外に味付けした蟹みそとほぐし身が別に添えられて蟹の旨みを堪能。生姜の効いた蟹酢が旨い。蝦夷アワビの塩蒸しにイカ塩辛。アワビはちょっと新橋鶴八の塩蒸しにも似ている。イカ塩辛は濃厚な旨みで酒が進む。

お造りが供される。淡路のタイは身肉にしっかりした旨み。北海道天然のホタテはさっぱりした甘味あり。評判がよいので最近よく使うとのこと。江戸前のスミイカは身が実に厚くネットリと。

白甘鯛のお椀は粟麩を添えて。身肉に満ちた上品な脂が出汁に溶け崩れて、混然とした旨みとなる。鰆の照り焼き。しっかりした身肉によく脂が乗っている。魚編に春と書くが旧暦の話なので今が盛りだとは笹田氏に教えて貰った。

葉ワサビと平貝、エビの酢の物が供される。エビの赤身が鮮やかで新年の雰囲気あるなあ(笑)煮物はこれもこの店冬の定番、自家製のおでん。おでんとは言うものの、自家製の揚げボール、鳥皮、うずら卵、京人参、海老イモ、聖護院大根など、材料すべて別々に煮炊きして味を含ませた上品な煮物。これも実に美味い。

〆は炊飯土釜で炊き立てのご飯。ちりめん山椒、お新香、赤出汁を添えて。香ばしいお焦げもお代わりで。番茶が煎茶に差し替えられ、最後はこれまたいつもの定番、冷製の白玉ぜんざい。冬の食材を活かした「笹田」の味を堪能。今年はもっと訪問しなければ。満ち足りた気分で家路に。

「新ばし笹田」訪問。
水曜の夜は「新ばし笹田」。前に来た時は松茸が盛りだったから、だいぶ間が開いてしまった。

今年入った新人で厨房は笹田氏入れて3人体制になり、ずいぶんとオペレーションもスムースになってきた感あり。

まずお酒は磯自慢純米吟醸を。お冷も別にグラスで。笹田氏は立派なカラスミを掃除して切り分けている。今年は去年に比べて品質にばらつきが無いとのこと。年末に引き取るために1本発注。保存用に零下何十度という特殊冷蔵庫買ったのだが、最初に出たもので良いのが多かったので、良いのを選んでおきますとのこと。

本年の営業は26日で終了。新年は5日から営業とのこと。

最初に小さな器で供されるのはスッポンの茶碗蒸し。外が寒いので、最初の暖かい一品にはほっとする。スッポンの淡麗で癖のない旨味が一杯に広がる。

きぬかつぎも。ホクホクでネットリした甘味あり。甲箱蟹は内子と外子の味の対比も楽しい。最近は年が明けるともう禁漁なのだとか。まあ確かにズワイの卵抱いたメスを食べている訳で資源保護の観点からいえば本当は食べてはいかんのでは(笑)

定番の壬生菜と油揚げの煮物。胡麻の香りが効いている。年中いつでも旨い。

刺身は、佐渡のブリ、淡路の鯛、北海道の天然ホタテ。鯛はいつも良い物を引いている。アメリカに赴任する直前、前の店で食した鯛も旨かったなあ。ブリも腹の身でびっしり脂がのっているが天然ならではのあっさりした旨味。ホタテは酢橘と塩で食すと仄かな甘味が旨い。

お酒のおかわりは、松の司純米吟醸。こちらのほうが最初の甘味が強いが、ふわっと爽やかな飲み口に変わるのは磯自慢同様。最後は伯楽星で。

お椀は白甘鯛 と焼いた粟麩。白甘鯛は白川とも呼ぶが、箸を入れると上品な脂と塩で締めた旨味が上品な出汁に溶け崩れて行く。ここのお椀はいつ食しても至福だ。

カラスミ 塩辛 イワシの生姜煮の三品が乗った強肴の一皿。カラスミは生と炙ったものと。品のよい熟成香とネットリした旨味は他に比類がない。それにしても尿酸値上がりそうなものばかりだな(笑)

焼き物は、真魚鰹の幽庵焼き。しっかりした身肉の旨味。
煮物は京野菜のおでん。これも冬場のこの店のスペシャル。おでんとは称するものの、おでん屋の仕事ではない。海老芋、聖護院大根、京人参、鶏皮、自家製の魚すり身揚げボール、半熟のうずら玉子。どれも別々に下ごしらえし、出汁の味を別々に煮含めて最後に一品として合わせた素晴らしい出来の煮物。お椀よりも濃厚な出汁をたっぷり含んだ京野菜が素晴らしく旨い。これまた冬の夜の至福。

この後は食事の用意となる。炊きたて艶々のご飯。自家製のちりめん山椒。お新香盛り合わせに赤出汁。ご飯をおかわりすると香ばしいお焦げが添えられるがまた定番の旨さ。日本人ならご飯だよなあ。

料理人が大勢いる大店なら、ご飯に添えられるお新香などは下働きが事前に切り置いてラップかけて冷蔵庫に入れていたものを出すと思うが、この店では、供する直前に親方の笹田氏が一人一人の分を自ら切り分ける。一事が万事、全てに渡って真面目な笹田氏が仕事に目を通しており、「これはちょっと」という残念な一皿に当たった事など一度もない。料理人はハッタリよりも真面目が一番だよなあといつも感心する良店。

勘定を済ませ、笹田氏と奥さんの見送りを受け、何もかも満ち足りた気分で帰路についた。


「孤独のグルメ」ごっこ
昨夜は目的地到着前に御殿場で一人飯しなければいけないスケジュール。10年前に一度来たが、店屋には何の知識も無し。

しかし食べログで探して、なかなか気の利いた構えの料理屋にフラリと入り、アラカルトで注文。

せっかくなので、

「そうか、そう来ましたか」

「このハマグリのお吸い物、いい! 最高!」

「カニはいかにもカニだって味だ」

「焼き魚は、いつでも正しい日本の味だ!」

などと「孤独のグルメ」ごっこをして、心の中で大袈裟に呟きながら食すと、旨さも当社比10%アップw 番組のテーマ曲も頭の中で鳴り響く。勘定済ませて扉を開ける頃には、気分はもうすっかり井之頭五郎なのだった。

皆さんも是非お試しを  ←  って、一体何やってんだ、オイw








「P.M.9」で一杯
昨日は「分店」行ったし、寿司屋に寄るつもりはなかったので会社出てから軽く中華屋で飯を。「しみづ」の前を通って客足でもチェックして帰るかと烏森神社の裏通りに入ると、「P.M.9」のバーテンダーM氏とバッタリ。では一杯飲んで帰るかと入店。結局こうなっちゃうなあ(笑) まずドライ・マティーニを。

入店してみると、店にもう一人男性が。先週からバーテンダー見習いが一人入ったのだと。これは知らなかった。代わりに女将さんは「しみづ」に出ており、「P.M.9」は日曜お休みになったらしい。なんでも、女将さんも遅くまで酔っぱらいの相手するのが嫌になった由。まあそれがバーの仕事なんだけど(笑) 見習い氏はまだ若い男前で、1年ほど他のバーに居たがバーテンダー志望でこの店に来たとのこと。何の世界でも一人前になるのは厳しいけれども、M氏の下でしっかり修行したらよいバーテンダーになると思うね。

通りの外でTVの撮影をしているようだというのだが、後から店を覗いた「しみづ」の女将さんと雑談すると「アド街」の撮影。 「しみづ」も「久」も入り口は映したが、「しみづ」は店内撮影断ったらしい。そういえばTVや雑誌の取材は最近すっかり断っているのだっけ。いつ頃放映なんだろうか。

先日会った「鮨竹」の話などしていると、「しみづ」の親方が、「今日はお待ちしてたんですがねえ」と窓から覗く。本日は何故かずいぶんと暇らしい。電話すると満席なんだが、電話しない時に空いているこの不思議。

Webに店の予約状況載せてもらったら、空いてると直ぐに来るも客いると思うのだけど、予約無しでフリで来る客もいるのが寿司屋。予約状況のリアルタイムの更新を人手でやるのが手間だ。Open Tableのような予約DBと、着席センサー、IoTやクラウドを利用して、店に余計な負担かけることなく、空いてる寿司屋をネットで検索できると便利だが。誰か起業しないか。商売になるかどうかは保証しないけど。

その後、「P.M.9」では貸切状態。アイラ島シングル・モルトともう一杯スコットランド・シングルモルトを貰って、相撲の話などM氏とのんびり雑談。

信頼できるバーテンダーのいるオーセンティックなバーで、たまにのんびりと時間を過ごすのも実に良いものだ。仕事のどうでもよい飲みを減らして、もっと来ないと。

「天麩羅 なかがわ」訪問
土曜日は、築地の「天麩羅なかがわ」。10月最初に「新ばし笹田」で松茸を食した際、東北、長野の松茸は盛りだがもう2週間もすれば姿を消すと聞き、そうだ「なかがわ」で松茸天ぷらを食さないとすぐさま思ったのだが先週末は予定が入っており、今週末に予約したのだった。

開店の5時丁度に入店するとカウンタには私以外全て着席済み。早いな(笑)もっとも酒だけ注文すれば、あとは何も言わずとも何時でもお任せのコースが出てくるから、別に慌てる事はない。

お酒は常温で。お通しは三つ葉のおひたし。

まず最初は海老。甘味とプリプリした食感を芯に残した絶妙な揚げ。一本目は塩で。二本目のほうが少しだけ火の通りが強く、こちらは天つゆが合うかな。

鬼殻を取った海老頭は、身よりもしっかり揚げて濃厚な旨味を引き出す。キスはしっかりと揚げて香ばしい衣。ホロホロと崩れる身肉は水分が飛んで旨味が凝縮されている。

カウンタ満席で一斉に始まるとはいえ、それぞれ頼んだコースが違い、揚げる種数も違うのだが、サラダ油とゴマ油を継ぎ足しつつ、微妙に温度をコントロールして行くのは難しいだろうなあ。もっとも中川氏は真剣な目つきで熟練の技の冴えを見せる。

ここで待ちかねた、宮城県気仙沼産の松茸、一本揚げが登場。酢橘を絞って塩で。香りと歯応えが素晴らしい。焼いた物もよいのだが天ぷらには天ぷらにしかない旨味あり。腹の中まで松茸の香り。「今年は間に合った」と中川氏に声をかけると、東北産は来週にはもう入荷するかどうか危ないのだと。去年はここで国産松茸を食するシーズンを外してしまったのだが、盛りは年々短くなると。困ったもんですな。

銀杏も秋の味。結構長く揚げているのだなと新たな発見。スミイカは肉厚なものを中心に生の部分を残してサッと揚げる。衣は香ばしくスミイカの甘味とスカッとした歯切れを残して揚げるのが技術。

走りのハゼ。キスよりも軽めの揚げだがもっと繊細で風味のある身肉。これも冬場にかけてもっと味が乗るだろう。ウニの大葉巻きもウニの濃厚な旨味を大葉の香りが包む。なんでも塩という人もいるようだが、個人的には天ぷらは天つゆが好きな種のほうが多いかな。白子の天ぷらなどは塩と酢橘だけども。

メゴチは皮目を香ばしく焼き切って、ゴマ油の風味も高く旨味が濃縮されている。コハダが寿司の為の魚なら、これは天ぷらの為にあるような魚。ギンポウなんかもそうだ。

穴子は実に立派な身。一本丸ごとじっくりと熱を通して、皮目は香ばしく身肉はふっくらと。寿司種の穴子とはまったく違う仕事だけれども、穴子そのものの奥底に流れる旨味は同じなのだ。

この辺りで野菜系に。アスパラは熱を通すと独特の風味が増す。茄子も秋の風味。椎茸は実に肉厚でモッチリ、ネットリした歯応えと旨味が素晴らしい。じっくりと揚げて水分を甘味に変えたサツマイモも実に旨い。カロリーと糖質は過多になる気がするけれども、旨いから良いのだ(笑)

最後の〆は天丼。何回も今度こそ天茶にしようかと思うけれども、最後の最後に保守的に何時もとおりになってしまう。しかし天茶ってそんなに旨いかな ←だったら頼んで試してみろっての(笑)

カウンタに、この店が取り上げられた「今でしょ!」先生の「すし、うなぎ、てんぷら ~林 修が語る食の美学」が並べられていたので、「今日、ここに来る前も読み返して来ましたよ」と中川氏に声をかけると、林先生は今日のお昼にも来店したとのこと。

TVでお笑いタレントまがいの仕事しているのを見ると、どうかと思うけれども、この本は、中川氏がいかに真剣に仕事しているかを実に克明に取材している。さすがに取材能力に優れた頭の良い人なのだろう。

中川氏は実に寡黙に見えるのだが、立て込んでいない時などに話しかけると、食材やら仕事の事など、幾らでも気さくに答えてくれる。そして黙って任せれば、いつだって何一つ間違いなく旨い物を出してくれる素晴らしい腕の職人。季節の折々には必ず訪問したい天麩羅の名店だ。


「新ばし 笹田」。そうか、初訪問から10週年の夜。
木曜日に「新ばし 笹田」訪問。実に間が空いてしまった。カウンタ一番乗りだったので、笹田氏に昨今の景気を聞いたり。商売繁盛のようで結構な話。若い新人が入っている。料理学校出て春に店に入ったとのこと。そうか、その頃からずっと来てなかったのだとちょっと反省。

新人は元気よく、動きもキビキビしており、親方の笹田氏や先輩弟子の一挙手一投足を真剣に見つめて、チャンスがあれば、私がやります、やらせてくださいと懸命に頑張っているところも好ましい。ちょっと松山ケンイチに似てるな(笑) やる気のある新人というのは何の仕事でも清々しい。この初心を持ち続けてほしいが。先輩の海老蔵似のお弟子さんも随分と手慣れた仕事ぶり。後輩が出来ると先輩が成長するのも仕事を問わない。

「笹田」は、この6月が前の店から通算で開店10周年だったそう。私が前の場所に「新ばし しみづ」から紹介を受けて初めて訪問したのが開店直後、2005年の10月。私にとっても今月が訪問10周年。間にアメリカ駐在の5年間が入っているとは言うものの、光陰矢の如し。もう10年経ったとは信じられない、年取るはずだと、笹田氏や奥さんと雑談。

まず冷酒を。磯自慢純米大吟醸。吟醸香あり、口に含んだトロリとした甘味はすぐに切れのよいサラリとした後口に変わる。食前に好適。

鮎の時期をすっ飛ばしてしまった事を悔やんでいると笹田氏は、「しかし今は松茸が全盛なんです」と山盛りの松茸を見せてくれる。

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長野と岩手は今が盛り。しかしそのピークも後2週間くらいとのこと。極上食材の旬は短い。「後で土瓶蒸しもお出ししますが、一本焼きますか」と聞かれたので早速注文。笹田氏は、傘が開いてない物の香りを確かめ選び出した一本を焼き場に。

最初に供されたのは焼き鱧の押し寿司。鱧は皮目の香ばしい焼き具合と身肉に乗った旨味。酢飯もいわゆる関西押し寿司風ではなく、米粒の立った美味さ。香りの良い茶豆を添えて。

焼き上がった松茸は長野産。一本を縦4つに割って。香りが立ち、身には水気もあり、しっかりした歯ごたえもある。口中から腹の中まで全て松茸の香りが充満する。日本の秋だ。

酒は、農口純米吟醸、生原酒に切り替え。香りは穏やか、口に含むとかなり濃い旨味と酸味を感じるが、それが甘味へと変わり、最後にはすっと切れの良い後口へ転じる。頑固親爺の魔術を見せられたような酒(笑)。

ここの名物、ナガスクジラの尾の身が供される。臭みも癖もない、ただ比類無い豊穣な旨味だけが身肉にある。ほんの3切れの至福。

なんだか笹田氏自らが揚げものをしている。ここで揚げ物というと春先の白魚以外は、秋口に添える銀杏くらいと思っていたが、ずいぶん真剣に長い時間かけているな、と思ったら、出てきたのはアワビの唐揚げ。

葛粉を軽く叩いただけで、じっくり揚げて旨味を封じ込める。銀杏を添えて。塩さえ使っていないというがしっかり味があるのに驚く。馥郁たる旨味も更に凝縮され、身にはしっかり歯ごたえがあり、ちょっと鶴八系塩蒸しのプリプリした感じも彷彿とさせる。初めて食したが、揚げるという調理法の奥深さを再確認できた美味。「京味」でやっていた仕事だとのこと。

壬生菜と油揚げの炊合せは、炒った胡麻の濃厚な香りがアクセントに。見てくれは普通のおばんざいだが、調理にはちゃんと手がかかっている。この店に戻ってきたなと安堵を感じる味。

店は大分立て込んで来たが、厨房内が3人になり、前のお弟子さんも随分と成長した感あって、オペレーションは慌てた感なし。つなぎの肴にイワシの佃煮を貰う。お酒に実によく合う。農口をまたお代わり。ゆるゆると酒で舌を洗いつつ、陶然と素材を活かした山海の美味にも酔う。和食の素晴らしい世界。

笹田氏は、どんなに立て込んでも、料理が出る度に他のお客の相手もしながら、それとなく前に来て真剣な顔で感想を聞く。「お造りは、タイ、天然のシマアジ、甘エビ、カツオとありますが、どうしましょう」と聞かれ、一瞬考えると「少しずつ全部お出ししますね」と。この店がお勧めの旨い物はなんでも食べたいから、考えるまでもなかった(笑)

シマアジは確かに天然のプルンとした食感と上品な脂。タイも旨い。立派な節のカツオは切る寸前に串を打って皮目を炙るのだが、皮目に当てた塩だけでも食せるくらい癖の無い旨味あり。

お椀は、松茸の土瓶蒸し。細かく骨切りした鱧の上品な脂と旨味が溶け込んだ精妙な出汁の美味が素晴らしい。雑味やくどいコクが無く、澄んだ旨味だけを含んだ出汁と松茸の香り。秋の味覚の至福だ。焼き物はカマスの幽庵焼き。身肉に脂がよく乗り歯応えも良く濃厚な味わい。煮物は、タコと小芋、かぼちゃの冷製。

最後は炊飯土釜で炊いた艶々の御飯。御飯が旨いと称する店も多々あるが、ここの炊立て御飯に勝る処は知らない。下働きにまかせてるのではなく、笹田氏自身が、料理の一品としてきちんと水加減し火加減も全て見ているものなあ。ちりめん山椒とお新香も実に旨い。お焦げも貰って。最後は冷製の白玉ぜんざい。甘い物はあまり好きではないが、ここのはむしろ豆の旨味が感じられるほどよい甘さ。

会計のほうは松茸の分があるので何時もより若干上回ったが、払った金額を優に上回る充実感あり。また頻繁に来るようにしなければ。入店時に預けた傘は、雨が上がった事を見計らい、キチンとたたまれて奥さんから手渡される。ご夫妻で外に出て、深く頭を下げての見送り。

10年前はカウンタだけ、元寿司屋が出た後を居抜きで借りた狭い店舗。お手拭きやナフキンもまだ紙製で、開店当初は、ほとんど他のお客が居ない夜もあった。

しかし、自ら毎日市場に行って良い素材を厳選し、真面目で何一つ手抜きしない真っ直ぐな仕事を貫き通したこの10年で、お客はどんどん増え、ミシュランの星も付き、広い新しい店に移転して、押しも押されもしない名店に。

料理には、奇を衒った珍奇な食材の使用や押し付けがましい華美なプレゼンテーションなど一切無く、食材や調理についての自慢話など一切無いが、聞けば何でも真剣に答えてくれる。何時来ても真面目な笹田氏の人柄には感心する。

一流の料理人になろうと志し、名店での厳しい修行の後でなんとか自分の店を開いた青年の夢は、10年を経てごく真っ当に、きちんと成就したのだ。大して売上に貢献してないのは忸怩たるところだけれども(笑) その成功の軌跡をごく初期から見届ける事ができたのは、偶然とはいえ実に幸せな事。今後の航海の無事と成功も心からお祈りしたい珠玉のような店だ。満ち足りた気分で帰路に。


「天麩羅なかがわ」訪問。
日曜日の夜は「天麩羅なかがわ」。久しぶりの訪問。

カウンタには、「すし、うなぎ、てんぷら~林 修が語る食の美学」の宣伝が置いてある。そうそう、この本読んで思い出して予約したのだった。

「この本読みましたよ」と言うと「まだ発売すぐなのに早いですね」と中川氏が笑う。本の効果はまだまだこれからか。

冷酒を貰い、いつも通りおまかせで。

まず海老が2。中心部に甘味を残した絶妙な揚げぐあい。鬼殻を取った頭はしっかりと揚げてコクを引き出す。キスはじっくり火を入れて衣はちょうどビスケットのような香ばしさに。身肉の旨味は水分が飛んで凝縮している。

山菜は、ふきのとう、タラの芽。ホロ苦い味が冬場の沈滞した代謝に活を入れるかのような旨味。ふきのとうは露地物だがタラの芽はまだ栽培。あとひと月くらいしたら全盛だとか。中川氏の語る食材の旬はいつも的確だ。

白魚も香ばしく揚がっている。透明の魚体だが閉じ込めた旨味は実に濃い。去年は訪問が遅れてシーズンが終わっていた。白魚使うのは、立春から桜が咲くくらいまでとは、本にもあったが去年も中川氏に聞いたっけ。

スミイカはスカッとした歯触りを残す浅い揚げ。ウニ大葉巻きは、雑味なく旨味の濃い赤ウニを大葉で包んでさっと揚げる。大葉の香りがまた鮮烈。

白子は表面がしっかり揚がっているが包丁を入れると中心部はまだふっくらと。本で知ったが、この時期に出すのはフグの白子なんですな。メゴチはしっかりと揚げ切る。アナゴはいつも通り皮目をじっくり揚げて癖を飛ばしている。鉄箸でバスっとふたつに切ると盛大に揚がる水蒸気。

さつまいもは結構長く火に通しているのが分かる。ネットリした甘味。実に肉厚な椎茸は、「本にも出てましたよね」と中川氏が。友人の親爺さんが作っているという立派なもの。確かに煮アワビの食感にも似ている。アスパラの後で小玉ねぎ。これも甘味を引き出すためにしっかり火が通っている。

「今でしょ」先生の事について尋ねると、中川氏が18歳でみかわの弟子だった頃から知ってる古い客らしい。インタビューも巧みで、自分の頭の中で整理しないまま話をしても、きちんと先生のほうでまとめてくれて助かったと。あんなに色々と手の内しゃべって大丈夫かと常連客にも言われたそうであるが、実に面白い内容だった(笑)

最後は天丼を食して終了。年齢のせいか、最近天麩羅のフルコースはちょっとしんどくなってきた感あり。暖かくなったら運動して、代謝を改善してからまた来なくては。

銀座「やす幸」でおでんを。
日曜の夜は早い時間にブラっと銀座に出ておでんの「やす幸」。
開店の直後に入ったが、すでにカウンタには二組。日曜日なのに明らかに夫婦ではなく、飲み屋のおねえちゃん風の女性を連れた男性がいるのもなんというか、ま、銀座だなあ(笑)

まず燗酒とナマコ酢を。ここの燗酒は、カウンタ一番入り口側に立つオヤジが、薬缶に入れて直接火にかけて温めるのだが、これが熟練の技で、ちょうどよい温度ですぐさまに供される。銘柄は黒松白鹿のみ。はせがわ酒店御推奨のなんとか大吟醸というのも確かに旨いけれども、おでんの燗酒は白鹿一本というのも、おでん屋ならではの潔い態度。

この銘柄は、昔、実家にも置いてあり、受験生の頃、深夜に勉強終えて眠る前、台所で盗み酒したなあ(笑) 深々と冷える台所で飲んだ時と、今でも同じ懐かしい醸造酒の味がするのだった。

おでんはまず大根と玉子巻。醤油を使わないあっさりした出汁だが先代の発案で関西風ではないという。出汁が沁み渡った熱々の大根を食するのは冬の夜の至福だ。玉子巻は周りのすり身に出汁が沁みこんだ具合がよい。
一人若いのがいるが、他は全部年配の職人ばかり。しかし老練らしい無駄のない働きぶりがなんとも気持ち良い。

二皿目は厚揚げ、生たらこ。生たらこは「生」で供されるのではなく、塩をしていない「生のたらこ」をおでんにしたもの。ふわっと芳醇な風味。厚揚にはネギを散らしてちょっと醤油がかかる。これまた出汁の風味が旨い。

仕上げはキャベツ巻とがんも。もうちょっと食せた気もするが、食べたかったものはほぼ全て注文して腹八分目。
おでんというのも、脂肪分は少ないし、野菜もあって魚介中心。好きなものを好きなだけ注文できるし、低炭水化物ダイエットにも向いている気がする。出汁さえしっかりしてれば毎日のように食べても飽きない。ただ、不思議にコンビニのおでんはイマイチ食べる気がしないなあ。

寿司屋では常温か冷酒を飲む習慣になってしまったが、おでんにはやはり燗酒。月曜は目覚め爽やかで胃の調子もすっきり。熱燗効果だとしたら、これから寿司でも熱燗にしてみるか(笑)


「新ばし 久」訪問
「新ばし 久」には、今年になってまだ未訪問だったので、先週金曜の夕方、入れるかどうか電話をかけてみた。

電話に出たお弟子さんは「少々お待ちください」と御主人と相談している気配。お用意できますというので入店したが、カウンタには既に2組4名。ほどなく他のお客さんもどんどん入ってきてカウンタは全て満席に。なんだかそんな雰囲気だったものなあ。

角席も入れて全部で11名。補助席を入れているのか、席間が普段より狭い気もした。客としては大混雑の時に無理やり行きたいとはあまり思わないが、店としては入る時にたくさん入れたいだろうし。まあ仕方ない。

お酒は「黒龍」の「龍」を。すっきりした口当たりながら旨味もあるよいお酒。

先付けは自家製のミニおでん。すじ肉、うずら卵、大根、菜の花などあっさりした出汁で。皮を剥いたミニトマトが入っているのだが、鮮烈な酸味と甘みに感心した。大根はもう少し炊くか、この硬さで供するのなら包丁入れたほうがよかったかな。

若干のずれはあるものの、カウンタが満席になり厨房はだいぶ立て込んでいる。寿司屋の場合だと出すものが限られているから満席でもあまりストレスないが、ここはいわゆるハイブリッド居酒屋であって、焼いたり煮たり揚げたりと調理も大変だし、飲み物もあれこれあるからなあ。

先行している隣のカップルはもう後は食事のご用意というところまで来ているのだが、まだまだと燗酒を際限なく飲むのでビックリ。最後はご飯に酒かけて酒茶漬けにしたらよいんじゃないか(笑)

お造りは、金目鯛、ヒラメ、子持ちヤリイカ。魚はいつもよい物を入れている。お椀は合鴨の治部煮。濃厚な肉の旨味が出汁に溶けて旨し。お酒のほうは、あまり長居しないことにして、扶桑鶴の熱燗一本だけ追加。

焼き物はしばらく時間かかるようなので、アラカルトからナマコ酢を。ナマコでちびちびお酒やるのもよい。ご飯にはあまり合わないと思うが。

魚は太刀魚付け焼。強火の遠火でふんわりと焼いてある。肉料理はここが得意としているローストビーフ。これは実に旨かった。若いうちはもっと大きな塊、もっと脂の多い肉が好きだったが、この年になるとこのローストビーフ3枚くらいでもう十分。

カウンタはいまだに大賑わいなので、フライ物は頼まずに勘定を。フラッと寄って季節の料理を楽しむには実によい店。お酒も2本しか飲んでないし大変に安かった。「P.M.9」には寄らずに帰宅。

「新ばし笹田」訪問。
今週は久々に「新ばし笹田」訪問。

一月中には訪問しないとと考えていたが、結局、なんだかんだで二月になってしまった。一月はアッという間だ。すでにカウンタ奥には四人組が到着済み。この夜は満席。年末に持って返ったカラスミが実に素晴らしかったことなど笹田氏に伝える。

「予約頂いた時にはまだ空きがあって大丈夫だと思ったんですが急な予約で埋まってしまって」とのこと。商売繁盛で結構。混む前にさっさと出してもらって退散しなくては(笑)

歌舞伎役者のような二枚目のお弟子さんに、兄貴は「鮨竹」で頑張ってるかどうか訊くと、休みが欲しいと言ってるとのこと(笑)。年末年始も休まず6月までは年中無休で営業。予約もずいぶん入っているのだとか。結構な話。

お酒は磯自慢大吟醸を貰って始めてもらう。

まず小さな器で供されたのは粕汁。酒粕は九平次のだというが、実に芳醇で甘味と旨味があるって身体が暖まる。関東ではあまり粕汁は食されないが正に寒い時の滋味あふれる一品。粕汁とかやく御飯を出す食堂が近くにある関西の街なんかにリタイア後に住むのもよいよなあ。うどん屋やお好み焼き屋も近くにあってね(笑)

葉山葵の和え物は、細巻海老、平貝、赤貝と魚介をあしらい、スッキリした酢の物。接待で個室会席などに行って、この手の先付けを食しても、海老や貝は何の味もしない場合があるが、ここの料理は何を食しても、きちんとその素材の素晴らしい味がする。全てに笹田氏の手がかかり眼が光った実に丁寧な仕事。

壬生菜と油揚げの煮物はいつもの定番。素朴なお惣菜料理だが、いつもなんで旨いのかと不思議になるほどほっこりした旨味。ナマコには海鼠腸をあしらって。ナマコは青森の青ナマコ。子供の頃はいったいナマコの何が旨いのかと思ったが、大人になってみると酒によく合う乙な味だ。

お造りは、ヒラメ、スミイカ、天然のホタテ、大間のウニ。ヒラメは上質な脂あり。ホタテは塩と酢橘で。もっちりした旨味。ウニは癖やエグ味なくサラリと旨味と共に溶ける。ここの刺身の質の良さにはいつも驚かされる。同じ質のものをかなりの量用意しないといけない寿司屋の仕入れと、ポーション少なく良いものを少しだけ出せばよい料理屋の仕入れというのは、多分ちょっと違うところがある。

お椀はあん肝豆腐。白身のすり身も入っている。生姜が効いて餡かけに。しっかりした出汁にあん肝の旨味が溶けて崩れる。焼き物は太刀魚の塩焼き。あっさりした脂が乗る実にふっくらした身。塩加減も絶妙。決して奇をてらわない、焼き魚のシンプルな美味さの原点をここに感じる。

煮物は、これまたここの定番、京野菜のおでん。昔、まだ前の場所で開店して間もない時、週刊誌の巻末ベージにここが新進気鋭の店として紹介されたが、カラーで1ページ載った料理がこれだった。たっぷり出汁を含んだ聖護院大根、京人参、コックリ煮上がった海老芋、自家製すり身揚げ、炙った鶏皮、半熟のうずら玉子。出汁がまた品よく旨い。今シーズンはこの夜で供するのは最後とのこと。もうそろそろ料理も春のラインアップに変わり出すのかな。

〆のご飯に。タイミングを見計らって炊飯土釜で炊きあげた艶々の白御飯が。赤出しと、ちりめん山椒、自家製のお新香、山葵漬けが添えられる。お代わりはお焦げを添えて。最後は香り高い煎茶に、これも定番の冷製の白玉ぜんざい。

目を見張る豪華なプレゼンテーションも、奇をてらった食材の使用もない。淡々と供される料理に五感を研ぎ澄ませて向き合うと、真摯に仕事をした料理人の仕事に心が温まる。そんな真面目な店だ。本当は大人数の接待には向いていないと思うのだが、まあ店の商売上はやはり部屋に客が入ってくれないと困るだろうね(笑)

立て込む前に勘定済ませて、笹田夫妻の見送りを受けて満ち足りた気分で帰路に。もっと来ないといかんね。
フグを食する夜
26日で仕事納め。9連休になるのだが、喉と鼻の調子が悪く風邪気味。しかし土曜は前から予約してあったフグ屋に。寿司のような日常食と違って、フグは年一回、良い店で良いものを食べるくらいでよいなあ。もちろん良いフグは高いから、そんなに何度も来れないというのが本音だが(笑)

安いほうのコースと、白子焼きを。白子は「時価」と書いてあるのが怖いが、中位の大きさのを。

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まずヒレ酒を所望。高温につけた燗酒に、給仕の女性がマッチの火を近づけるとポッと炎が。アルコールがちょっと飛ぶからか、悪酔いせず、お酒がドンドン進むなあ(笑)

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フグ刺しには、他のどの白身魚にはない歯応えと、身肉の奥に潜む玄妙な滋味あり。この店は秋に橙を絞って一年分のポン酢を店で制作するそうだが、このポン酢が口当たりよくサッパリして実に素晴らしい。去年のフグ刺しよりも、何故か今年のほうがずっと旨味が濃い気がするなあ。

白子焼きも雑味なく、皮目が香ばしく、中はトロリと濃厚な旨味だけがとろける。

ちり鍋は店の人が世話してとりわけでくれるのだが、食べるのに忙しくて写真取る暇無し(笑)。最後の〆の雑炊も、フグにしかない上品な滋味に満ちている。透明感があって、よせ鍋の後の雑炊とはまた違うんだなあ。

フグは冬の夜の至福。この店は、「東京いい店 うまい店 2015-2016」でも、フグならこの店はやはり外す訳には行かないと称賛されていたが、確かにその通り。安い店で養殖のフグを何回か食べるよりは、その分の金をためて一度ここに来るほうが絶対によい。高い値段だがその価値は十分にあると感じる事ができるのだった。

「新ばし 久」訪問。
先週土曜日は「新ばし 久」。

5時半に予約したが新橋に着くと冷たい雨。烏森神社の参道入り口付近は、前にあった古い店でボヤ騒ぎがあり、だいぶ取り壊されてしまった。

「しみづ」の前を通るとまだ暖簾が揚がっている。アレっと思ったが、まだ営業時間短縮でやっているのかな。店の入り口で外から戻ってきたご主人の久史氏とばったり。入店するとまだカウンタにはお客無し。しかし後で満席になるとか。

まず醸し人九平次治吟醸を貰い、おきまりをご飯無しでオーダーしてスタート。この九平次は色が濃く重たい飲み口。

お通しは白子茶碗蒸し。濃厚な出汁に身体が温まる。

お造りは、ブリの漬け、平目、トコブシ塩蒸し、赤貝と満艦飾。平目には上品な旨味あり。ブリは「しみづ」の仕込みと同じだ。お酒は黒龍大吟醸に切り替え。

お椀は白魚。焼き椎茸を添えて。出汁についてはしっかりと旨味も香りもあって不満はないけれども、「笹田」の透明感には若干及ばないか。しかし料理の値段が倍近く違うし、ここは気楽に寄れるハイブリッド居酒屋というコンセプトであるから、これで必要にして十分以上なのだ。

香箱蟹は綺麗に身をほぐして、蟹酢ゼリーをかけて供される。年が明けて本当に禁漁だとしたら、今年はこれが最後ということになるのだが名残惜しい。内子と味噌の濃厚な旨味。

じっくりと遠火で焼いた太刀魚の塩焼きは、あっさりした身肉の旨味がまさに凝縮している。酒に合うなあ(笑)

ここでおきまり終了。アラカルトでここの得意料理であるフライ物を追加。自家製のタルタルソースと付け合わせのキャベツ酢漬けがまた旨い。車海老は鬼殻取った頭も供される。墨烏賊も肉厚で旨い。

最後にお茶が出され甘味として自家製の小さなプリンが供されて〆。和と洋のハイブリッドを堪能した。「久」は年内30日まで営業。正月はいつも通り2日から営業するとのこと。久史によると、「鮨竹」は年末年始も休みなく、開業一年間は無休との志を守るのだとか。しかし銀座で大晦日元旦営業はある意味凄いな。

勘定してもらっていると、手が空いたか「しみづ」の親方が顔を見せ、「この前はご迷惑かけませんでしたか」と笑う。お弟子さんの特別営業の件だが、無難にやってましたよとご挨拶。年末にまた訪問予定が入っているのだった。新橋駅前SLはイルミネーションが綺麗だ。タクシー帰宅。

「新ばし 笹田」訪問。
火曜の夜は「新ばし笹田」。予約したのは前の週だが、前日の夜にたまたま通りかかったら店が閉まっていた。定休日は日曜のはずだったので、どうしたかと思い、入店早々に笹田氏に確認すると、日曜から金沢に蟹の勉強に行っており月曜はお休みしたのだと。天候は悪く移動は大変だったが、今年は寒さが来るのが早く、蟹の旨味もどんどん乗ってくるのだとか。

入り口にお祝いの花が何個か置かれているので尋ねたら、12月1日がこの場所に引っ越してから3周年で、そのお祝いだとか。そうか、すっかり忘れていた。笹田氏も、「実は私もすっかり忘れてたんですが、お客さんに思い出させてもらいました」と笑う。店の開店記念を忘れない、粋なお客さんがいるもんですな。

お酒は磯自慢純米吟醸。いつもの如く、ふくよかな米の旨味がまず口中に広がり、すっと爽やかな後口に。

最初に供されたのは、小さな器で供される白子の茶碗蒸し。温かいものがうれしい季節。実に濃厚な旨味。供される寸前に時間を見てきちんと蒸し上げられる。

香箱ガニは、身肉がきちんと取り出され、内子と外子が鮮やかに小さな甲羅に詰められて、まるで宝石箱の如し。オレンジの内子もプチプチした口当たりの外子も蟹の旨さが詰まっている。さすがに資源問題もあり、今シーズンは年内で禁漁ではないかと言うのだが。今では都内でもずいぶん供されるようになったからなあ。

ナガス鯨の尾の身。今回の個体は割とあっさりしているとのことだが、それでも旨味十分。臭みはまったく感じない。マグロと違って薄い二三切れで十分に満足できるというのは、やはり身肉に魚よりも獣肉としての濃いコクがあるからだろうか。尾の身も、すっかりこの店の名物に。

壬生菜と油揚げの煮物もここの定番。どこの家庭でも作れる惣菜ではあるが、スッキリと上品な出汁で、壬生菜と油揚げは別々に火を通し、合わせた後でこれまた直前に炙った胡麻を散らす。プロの技の高みを感じる一品。

お造りは、淡路の鯛と銚子のブリ。淡路は岩屋の港だと言ってたか。現地に行って漁師ときちんとルートを築いた仲卸が引いてくるのだとか。いつもながら上品な脂の旨味。ブリも脂は濃厚だがサラリと舌の上で旨味に変わって溶けて行く。天然の魚だけが持つ旨味だ。

お椀は甘鯛に小ぶりの椎茸を添える。ふんわりとした出汁はむしろ薄く感じるほどだが、甘鯛のゼラチン質と身肉の脂、そして旨味が溶け崩れて重なり、陶然とした旨味に。一瞬の柚子の香り。椎茸は炙ってあるのだが上質で、香りと旨味を引き出す細心な焼き具合にも感心する。酒を飲むのも忘れて一新に食べ終えると、口中にはくどい味は何ひとつ残らない。邯鄲の夢のような一椀。

サワラのつけ焼きは、香ばしい皮目の焼き上がりに、キシキシとした身肉に潜む旨味が絡んでこれまた結構。自家製のカラスミが添えられているのだが、これまた素晴らしいもの。この店のカラスミは甘塩であまり日持ちしない。カラスミ保存のためだけに零下60度出る冷蔵庫を買ったのだとか。真空パックにしてお土産でも売っている。年末に一本持って帰るかと注文すると、冷蔵庫から幾つか出してきて、色が悪いのは苦味があってダメです、この大きいのが素晴らしいですよと、選んでもらって、大きいのを一本予約して取っておいてもらうことに。

煮物は、これまたここの冬の定番。京野菜のおでん。聖護院大根、京人参、海老芋、自家製すり身揚げ、鶏皮、うずら玉子。全部一緒に鍋に入れて炊いた訳ではない。うずら玉子は絶妙の半生。鶏皮は火を入れて旨味を凝縮している。自家製の魚すり身揚げも手が込んでいる。大根が含んだ出汁の旨味とコックリ炊きあがった芋のネットリ感も比類が無い。

ここで〆のご飯に。タイミングを見計らって炊飯土釜で立ち上げた、艶々の白御飯。赤出しと、ちりめん山椒、自家製のお新香が添えられる。お代わりはお焦げを添えて。最後は香り高い煎茶に、これも定番の冷製の白玉ぜんざい。

気を衒う高価な食材をこれでもかと使う創作和食ではない。供されるプレゼンテーションも派手ではなく、組み立てもごくありふれた料理に思えるが、よい素材を使い、真面目な和食の料理人がしっかり手をかけて調理すると、ここまでの高みに達するのかと感心する一品ばかり。若干値段が上がったようだが、決して高いとは思わない。デフレ脱却にはよいんじゃないかな(笑)

勘定を済ませ、笹田夫妻の見送りを受けて満ち足りた気分で帰路に。笹田氏は年末、出身店のおせち作りを手伝いに行き最後は徹夜作業。いつもながら大変ですな(笑) 新年は6日から営業予定とか。

「新ばし 笹田」訪問。
先週木曜日、「新ばし 笹田」訪問。なんだかんだでずいぶん間が空いてしまった。過去ロク見ると前に来たのは鮎が出ていた時だから、盛夏と秋をすっ飛ばしてしまった事になる。

早めの時間に入店するとまだカウンタには先客無し。笹田氏によると、私が予約の電話かけたのは、奥さんと「最近お見えになってないな」と話していたその日だったとのこと。「テレパシーですよ」という話だったが(笑)

松茸の時期を逃してしまったなあとボヤくと、笹田氏は「今日は土瓶蒸しでちょっとだけ出ますよ。韓国産ですが」と。今年の日本松茸は盛には大量に出たが時期は短かったのだとか。まあしかし無いよりよかった(笑)

お酒は石川の「農口」。有名な能登杜氏が自分で始めた蔵なんだとか。限定大吟醸「銅」は、さらりと澄み切った淡麗だが、かなりの辛口。料理の邪魔はしないが、好みは別れるんじゃないかな。同じ「農口」ブランドで生原酒なるものもあり。こちらはもっとふっくらした風味と甘味、ボディもある。個人的にはこちらのほうが好きかな。ただ飲むと回る気もするw

最初は先付の三種盛り。紫頭巾は黒豆の枝豆。穴子押し寿司、カラスミは炙ったのと生と。もうカラスミの季節。今年のカラスミは台風の影響でボラの漁獲が激減してずいぶんと高値なんだとか。

温かいままで供される絹担ぎは、実にネットリした旨味。ナガス鯨の尾の身は生姜醤油で。マグロを凌駕する濃い旨味だが獣の臭みはどこにも無い。なんでもアイスランドの漁獲枠で獲ったものを冷凍して、業者が船で日本に運ぶのだが、積み荷が鯨だと寄港を拒否される港があり、日本に到着するまで随分時間がかかる由。入江に追い込んで撲殺したイルカなど食したくないが、ナガス鯨の尾の身は無くなっては困る天然の美味だ。尾の身が入ると必ず業者から買いませんかと電話が入るというが、もうここの店の名物になりつつある。

定番の、壬生菜と揚げの煮物。これまたホッとする味だなあ。お造りは、明石の鯛、壱岐のカツオ。アオリイカ。鯛は上品な脂と旨味。カツオは皮目をカリッと炙って香ばしく、しかし身はネットリと。アオリイカは季節外れのようだが、徳島で揚がったという上質なもの。旨味が上品。

土瓶蒸しは、名残の松茸と鱧。鱧は素晴らしく脂が乗り、出汁に濃厚に溶けている。焼き物は、カマスの幽庵焼き。身は実にふっくらと旨味あり。何か揚げてる音がすると思ったら、付け合せの銀杏。供する直前に揚げて添える。付け合せ一つにもきちんと手がかかっている。

蕪蒸しは海老、銀杏、松茸を細かく切って上に餡がかかる。濃厚な旨味が続いたところであっさりと優しい味の一品。

最後の食事はいつもの通り炊飯土鍋で炊立てのご飯。今年の新米に変わったところ。香り高い米の旨味。ちりめん山椒、お新香、赤出汁を添えて。お代わりにはお焦げが添えられてあるのもいつもの定番。炊立てのご飯の味が分からない外人は可愛そうだなといつも思う一時(笑)

最後はこれまた定番の冷製白玉ぜんざい。甘いものは基本的に食べないが、これは食後でも控え目の甘味で大丈夫。香り高い煎茶も素晴らしい。来週からは蟹が入ってくるとのこと。いよいよ冬だ。また来ないと。

去年、ここに入った若いお弟子さんは、ちょっと歌舞伎役者風のイケメンなのだが、兄貴が「鮨竹」で下働している眼鏡坊主なんだと聞いてビックリ。あんまり似てない気がするなあ。随分と年は離れているのだそうである。

笹田ご夫妻の見送りを受けて、いつもながら満ち足りた気分で店を後にした。


「天麩羅 なかがわ」訪問
先週金曜日は会社の飲み会で結構飲み過ぎたが、土曜に朝寝してなんとか回復。夜は久々に築地の「天麩羅 なかがわ」に。

開店と同時の5時に扉を開けたつもりだったが、既にカウンタには先客2組。テーブルにも食器がセットしてあり、なかなか盛況だ。

喉が渇いてたのでまずビールを。その後で冷酒。お通しは三つ葉のおひたし。

いつも通りおまかせのコースが始まる。

海老はいつもの通り芯の甘みを感じる軽い揚げ。海老頭は旨味が凝縮するように深目に揚がっている。

次のキスは繊細な身が口中でホロホロと崩れる。いつもよりほんの少し揚げが軽いかと思ったが、続くはぜが更に水分を飛ばした深い揚げになっている。揚げ方に若干変化をつけてるあるのだ。

スミイカはもう実に肉厚で中心部はまだ生の甘みが残る。メゴチは水分を飛ばして香ばしい旨味が凝縮した味。自由自在に揚げをコントロールする火の魔術を見るかのよう。、

白子はスダチを絞って塩で。串に刺した銀杏もホロ苦い秋の名残の味。伏見唐辛子、小玉ねぎ。ここの野菜はいつ何を食しても大地の旨味を感じる優れたもの。

アナゴは実に立派な物。しっかり揚げて熱が籠り、鉄箸でバスっと切ると水蒸気が上がる。
茄子、さつま芋、肉厚のしいたけ、アスパラと野菜で〆。

最後の小柱のかき揚げは小天丼で。一度天茶にしたいのだが、実は天茶なるものは一度も食したことなく、どうしても慣れた天丼になってしまうな。

ここの松茸の天ぷらは実に立派で、松茸の季節に訪問せねばと思っていたが、結局間が空いて既にシーズンは終了。御主人に聞くと、「今年は早く終わっちゃったのですよねえ」と。残念だったなあ。ご主人は寡黙な職人だが聞けば嫌がらずに何でも答えてくれる。奥さんの気配りもよい。嫌な思いなど一度もしたことない居心地のよい店。値段も種と技術に比べれば実にリーズナブル。また訪問しなくては。


築地「天麩羅なかがわ」訪問
先週土曜日は、そうだずいぶんとご無沙汰してしまったと思いだして、築地の「天麩羅なかがわ」訪問。

当日昼過ぎに電話かけて名前告げたとたん、「いつもありがとうございます」とご主人の快活な声。明るい声で電話の応対するのは商売の基本で、私の行ってる寿司屋でも何処もそうだが、この店は特に気持ち良い受け答え。予約の時から既に胸の高鳴る店訪問が始まっているのだ。

夜は開店と同時に入店。冷たい日本酒を所望。何も頼まずとも、おまかせのコースが始まる。

まずは甘味を残してさっと揚げた海老が2。最初は塩で食べるかと思いつつ、いつも天つゆを使ってしまうなあ(笑)鬼殻を取った海老頭は深く揚げて香ばしい。

キスもしっかりと水分を飛ばして旨味が凝縮。海老と共に天麩羅を代表する種。夏の名残、アオリイカは分厚い身。中心部分は生で供される。秋の香りを感じる銀杏。ハゼは秋からが本番とのことだが、ホロホロと崩れる繊細な身で香りもよい。

富山産の岩牡蠣は、濃厚な旨味。すだちを絞って塩で食する。伏見唐辛子、小玉ねぎは口直しに気分が変わってなかなか結構。メゴチはしっかりした揚げきりで旨味が実に濃い。これまた天ぷらのためにあるような魚。アナゴも深く熱を通してまさしく口中に福を呼ぶが如し旨味。茄子、サツマイモと野菜で〆。

最後は小柱のかき揚げで小天丼。しじみの赤だし、お新香と共に。ツウは天茶だという説も聞くが、なぜかいつも天丼にしてしまうなあ。実に満ち足りた気分でお勘定を。「次は松茸の頃ですかね」と中川氏が。そうねえ、もっと来たいが、やはりそうなるか。今年の国産松茸は、広島が大雨洪水で打撃を受けたので、結構大変ではとのこと。しかしまた来なければ。



「新ばし 久」訪問
木曜は会社帰りに「新ばし 久」で一杯。

まず、お酒は黒龍大吟醸。癖がなく幽かな甘味。サラサラと流れる清水の如し。グラスに注いだらガブガブ飲めるな。本当に実行したら後が大変だが(笑)

6時過ぎに入店したのだがカウンタには既に3組ほど。その後次々に当日予約が入り結構店は盛況であった。

まず先付けの一皿。カマスの押し寿司、塩蒸しアワビ、ぜいたく玉子。カマスは酢〆にして皮目は焼霜に。酢飯の具合もよい。塩蒸しアワビは「しみづ」のアワビと遜色なし。肝を添えて。贅沢たまごは、半分に切った茹でたまごに洋風の濃厚なソースを載せウニを添える。これまた旨い。

お造りは、旨味あるマコカレイ、カツオ、トリ貝。どれもよい物を入れている。お椀は、エビ真丈に焼松茸を添える。これもここの定番だが、真丈が出汁に溶け崩れて誠に旨い。お酒は大吟醸をおかわり。飲み過ぎて危ないので、ゆるりと(笑)

魚料理は、宍道湖の天然鰻をつけ焼きに。蒸さずに皮目をパリパリに炙る。西の鰻のほうが天然でも生臭くないとのこと。口中には香ばしい鰻の香りが一杯に。酒のつまみに実に旨い。

水茄子を塩で。そういえば「鮨竹」でも水茄子がお通しで同じように供されたっけ。お酒は「大七」に。こちらは一転米の旨味を感じるずっしり重たい酒。

肉料理はローストビーフ。付け合せのリーフもしっかりした酢でトスされて旨い。若い時は焼き肉でカルビ等いくらでも食えたが、今はこの程度で十分だなあ、などとご主人の久志氏と雑談。ガッツリ大量に食べなくても、旨いものをちょっとだけというのがよい年齢になってしまった(笑)

ここまででおきまり終了。この店の得意料理、フライ物で車海老とアジを。車海老は鮨屋で使う生きた立派な大車を注文の都度揚げる。天ぷらの細巻とはまた違った重厚の旨さ。お昼に、炊飯土鍋の炊きたてご飯とセットで、ミックスフライ定食2500円というランチやったら食べに来るけどねえ(笑)

最後はチョコムースでお茶を一杯。先付けにお椀。刺し身に焼き魚も肉料理も楽しめる、随所に和食と洋食がハイブリッドしたカウンタの気楽な割烹居酒屋。飲み足りなければ「P.M.9」に寄ってまた一杯もやれる。実に結構ですなあ。


「新ばし 笹田」訪問 
火曜の夜は「新ばし 笹田」。前に来たのが4月だからちょっと間が空いてしまったか。

とりあえずお酒は磯自慢純米吟醸でスタート。まず、胡瓜、蓴菜入りの冷やしトロロ汁。蓋のついた硝子の小さな器で供される。胡瓜と蓴菜の食感と出汁で味付けされた冷たいトロロの喉越しを楽しむ。もう夏だなあ。

穴子の押し寿司は、ツメをつけて供される。穴子はふっくらして美味。この酢飯が上出来。きちんと酢を感じてへたな寿司屋よりもずっと印象的。

濃厚な旨みの鯨尾の身はアイスランド産のイワシ鯨。臭みなく旨味だけが濃厚なのだが、あまりにも濃厚過ぎるので、薄く切りつけて3切れくらいでちょうどよい。アイスランド人には尾の身の美味さは理解不能だろうから、捕鯨枠を使って取った鯨の尾の身は全量日本に輸出してほしいね。勿論絶滅しないよう捕鯨数の管理は必要だが。

笹田氏は身の厚い天草産の鱧を炙る直前にしゃりんしゃりんと骨切り。焼き霜にして供された鱧は梅肉ソースで。ふっくらとした身。脂は梅雨の後からもっと乗ってくると。

お酒二杯目は伯楽星純米吟醸。

定番の壬生菜と油揚げの煮物は、いつもながらホッとする味。

お造りでは、噴火湾だというマグロ赤身に旨みあり。軽く漬けにしてある。中トロも上質。宮城のマコカレイは身が活かっており食感がよい。夏の爽やかな白身。富山の縞海老もここの刺身の定番だがネットリとしてよかった。

お椀はオコゼ。焼いた小餅を添えて。下ごしらえで塩を振って身を締めてると思うがその味付け具合がよい。癖の無い旨味だけが残る白身。皮目のゼラチン質が凄い。

「新政」の大吟醸がお勧めであるというので、お酒三杯目をおかわり。伯楽星よりも甘味があるが爽やかな後口。

次にだいぶ前に串を打ってじっくり焼いていた鮎の登場。いつも入れるのは、広島、太田川、島根、高津川、岐阜の長良川だろうだが、日によって入る産地と入らない産地があるとのこと。

今回は、太田川と高津川の両方を焼いてもらい、頭から交互、均等にかぶりついて味を食べ比べるという贅沢を。魯山人ではないから川に依る差の違いなどはっきりとは分からないが、高津のほうが身が締まって白身としての旨みが濃く、腹わた渡は太田川のほうが濃厚で複雑な旨みを感じる。個体差のほうが大きいのかもしれないが、川魚であるから生息域の流れや苔の具体などが微妙に影響するのだろう。

冷たく冷やした加茂茄子と車海老の煮物で料理終り。どれも素晴らしかった。

例えば接待などで大勢人を使っている店に行き、和服の女性がサービスする個室で会席料理など食しても、料理の添え物の枝豆や大葉や茗荷など、何の味もしない事がよくある。この店ではたとえ添え物であっても何を食べてもきちんと香りがありきちんとそのものの味がする。これは出来そうで出来ない事。厨房はお弟子さんが一人いるだけだが、全てにご主人、笹田氏の目がきっちり届いている。

お新香も供する寸前に笹田氏が自ら切り分ける。ちりめん山椒、山葵漬け、赤出汁を添えて、炊飯土鍋で炊いた艶々のご飯を。香りもよい。この炊き立てのご飯の美味さは外国人には分かるまい。日本人でよかったなあ(笑)

最後はこれも定番の冷製の白玉ぜんざい。くどい甘味が無く豆の旨味を感じる一品。爽やかな煎茶と共に。どれも実に巧かった。満ち足りた気分で帰路に。

「新ばし 久」訪問
水曜の夜は「新ばし 久」に。ずいぶん久々な気がする。そういえば、今月一度電話したのだが、その時は満席だったっけ。

手伝いの女性が厨房内に2人。人は募集かけてるのだが慢性的に足りないとのこと。景気がよくなっているからという面もあるのだろうが、最近の飲食店はどこも困ってるようだ。入店した時のカウンタは私のみ。今日は割と静かだとのこと。

まず冷酒は、黒龍「火いら寿」から。すっきりした酒だが香りがよく米のふくらみもある。実によい酒だが、スイスイ飲めて飲み過ぎる危険が(笑)

先付けは温泉卵。湯葉、小ナス、トマト、さやえんどうなどをあしらって。

刺身はヒラメ、カツオ、トリ貝、蛍イカ。ヒラメは房総だというが、肉厚の立派な身でこの時期でもまだ旨味を残している。カツオは生姜醤油で。トリ貝、蛍イカは春の風味。

二杯目のお酒は、熟成大吟醸「鳳凰美田」。初めて聞くが栃木の酒蔵だとか。若干の熟成味と濃い旨味を感じる。

お椀はタケノコ入り魚白身の真丈。小さなつぼみのようなものが入っているので尋ねると花柚子なんだとか。確かに柚子の香りがする。

「しみづ」の親方が登場して、「いらっしゃい」と。「しみづ」グループは顧客情報の共有がきっちりしてるなあ(笑) 「今日はうちはガラガラなんですよ」と。 

魚は太刀魚の塩焼き。強火の遠火でじっくり火を通す。脂がよく乗ったふっくらした身をかみしめる旨さ。「しみづ」で一杯やってる時に焼き魚を出前してくれるとよいんだが(笑)

久史氏とあわびの話など。清水家の実家は魚屋だったのだが、昔は父親が盆栽の鉢にしてたくらい大きなアワビがゴロゴロ獲れてたのだとか。今でも「しみづ」はマダカアワビの大きいのにこだわって入れており、前の店ではカウンタ上の屋根にゴロゴロと大きな貝殻が飾ってあったっけ。

お酒は「大七」に切り替え。

肉料理はローストビーフ。薄く切って。サシ入った牛肉は実に旨いが、大きな塊で出されてももてあます。この程度がちょうどよいなあ。ここでおきまり終了。フライは、海老とキスを貰う。海老はまだ飛び跳ねている物の殻を剥いて。頭も揚げ切って出す。キスもしっかり揚げ切る。味の淡白な魚なので、ギリギリまで水分を飛ばしていると。

最後の甘味はチョコレートムース。甘さがくどくなく酒の後でも旨い。香りよし。

その後は「P.M.9」に。バーテンダーM氏に「今日は女性の一人客来てないじゃないの」と聞くと、「だから前の時もそんなお客さん来てませんって」との回答。おかしいなあ(笑)

ドライ・マティーニは、100年物だというアンティークのバカラグラスで供される。割ってしまうのではと手が震えるぞ(笑) その後は軽めのカクテルにしてあれこれ雑談など。帰る頃には、さっきガラガラだと言っていた「しみづ」は何のことはない満席になっていた。



「新ばし 笹田」訪問
火曜の夜は「新ばし 笹田」に。

3月は結構空いていたが今月は割と忙しいとのこと。調理場は笹田氏とまだ若いお弟子さん一人で段取りは大変なのだが、無理に人を入れるよりもしばらくこのままの体制で行くとのこと。飲食店の修業も拘束時間は長いし結構大変だから、人の確保にはどこも苦労しているようだ。

ともかくまずお酒を。磯自慢純米大吟醸。口に含むとふっくらした濃い甘味を最初に感じるが、すーっと爽やかな清水のような後口になる。最近、飲み過ぎで疲れてるのでグラスに水ももらってチビチビと。

最初に供される先付けはまずウニゼリー。長芋を添えたウニの上に鯛の出汁が効いたゼリーが。鯛の出汁が濃厚。

次は若竹煮。タケノコは今朝、京都から入った初物とのこと。大ぶりに切ったタケノコには出汁の味がよく沁みて、サクサクした歯ざわりも良い。新ワカメの風味も実によく合う。春の「出会い物」の代表。何処の店でも出てくるが、ここまで筍とワカメが相性よいと感じた事は初めて。実に不思議だ。

ホタルイカ沖漬けは酒の肴に好適。ここの春から初夏の名物であるベビーコーンは、皮ごとそのまま焼き上げ中身だけを食する。香ばしくも爽やかな甘味。壬生菜と油揚げの煮物もいつもの定番。胡麻の香り高く上品な出汁が美味い。

ナガスクジラ尾の身が刺身で供される。薄く切った少量なのだが、濃厚ながら癖のない旨み。刺身で食するなら本マグロよりも旨みがずっと濃い。濃すぎて寿司には合わないが。冷凍でだいぶ在庫があるのか、調査捕鯨が終了しても尾の身はまだ当分大丈夫と卸が言ってるとか。尾の身を食すると、やはり鯨は美味いなと思うが、調査という姑息な方便で商業捕鯨してたら文句言われるのは当たり前。なんとか捕鯨を認めてもらう道を模索するのがやはり正道なのでは。まあしかし、日本のお役人は国内には強いが、海外ではからっきし交渉能力ないからなあ。

お造りは、鯛、軽く炙ったぼたん海老、カツオ。日曜の歌舞伎座で「髪結新三」見てからカツオが食べたかったので、実にタイミング良し。もっちりして美味し。鯛も旨みあり。

お椀は、鯛のアラを軽く炙ったものが種。ちょうど胸鰭のところのキシキシ締まった身の旨みを堪能。出汁がまた鯛の脂が溶けて美味い。鯛の形をした骨「鯛の鯛」が出てくる。縁起よいなあ(笑)。

焼き物は、マスの炙り。上品な脂がよく乗っている。ここで食事。炊飯土釜で炊いた御飯。生涯最後の食事には、やはり炊き立ての御飯だな(笑)赤出汁、お新香、山葵漬、ちりめん山椒を添えて。

食事に鯛茶漬けを特注してるお客がいたとのことで、胡麻醤油漬けにした鯛の刺身の余った分がちょっとだけサービスで出てくる。これまた炊き立ての御飯によく合う。お代わりにはちょっとお焦げを添えて。これがまたよい。最後はいつもの甘味。冷製の白玉あずき。煎茶がまた美味い。実に満ち足りた気分で食事を終えた。もっと頻繁に来なくては(笑)



人形町「そよいち」でビーフカツを
土曜の昼は人形町に出て「そよいち」でビーフカツを。昔、人形町の有名洋食店に「キラク」というのがあり、ビーフカツが有名であったが、一度も訪問したことなし。

しかしその先代が亡くなった後で、跡目争いが起こり、家族が骨肉の争いを繰り広げた末に店が分裂することに。先代無き後に店を守っていたスタッフは前の店を追われることになり、そのスタッフ達が独立して出した店だとはネットで見た噂。店のブランドというのは値打ちあるから、まあそんな争いも起こるのか。一度その「キラク」譲りのビーフカツを食べてみようかと訪問。

最初にビール貰ってビーフカツを注文。きびきびとした下町風の気持ちよいサービス。調理も手際よい。カラッと揚がったカツは、昔懐かしい昭和の洋食の味。塩でも旨いが、ウスターソースちょっとだけかけると御飯のおかずによい。御飯がつやつやと旨いのも結構。なんでも新しく職人雇った「キラク」のほうは、昔の味ではなくなったという話であるが。そんな話聞くと行ってみる気がしないよね(笑)

近くをブラブラ散歩。土曜の人形町というのは結構人が出ている。「玉ひで」の親子丼目当ての長蛇の列には唖然。そんなに並んでまで食べたいものかねえ。まあでも、そういうもんなんでしょうな(笑)


築地「天麩羅 なかがわ」訪問 
土曜の夜は築地の「天麩羅 なかがわ」。春の天ぷらを味わいに。5時に入店。お酒は冷たいのを所望。お通しは三つ葉のおひたし。

カウンタ端には種札があるのだが、目当ての白魚がなくしばし愕然。桜が散るまでの種ということで去年は食べそびれているので、今年ことはと思ってたのだが。

特に注文しないが、いつも通りおまかせで始まる。まず海老が2。軽い衣で芯をレアに残す軽い揚げ。鬼殻を取った頭は逆にじっくりと火を通して旨味を引き出す。海老やイカは塩で食しても勿論美味い。キス、メゴチ、アナゴは天つゆのほうが好きだなあ。

キスはしっかりした揚げで水分を飛ばして旨味が凝縮している。天つゆで。口中に差し込んでくるような旨味。ほぼ通年で食することのできる天種。

フキノトウは塩で。春の芽吹きがほろ苦い風味と共に口中に広がる。スミイカはもうすっかり肉厚に。これも軽い揚げでスカッと噛み切れる歯ごたえがよい。

天ぷら鍋を見ていると、中川氏が細い種を一本ずつ次々に放り込んで行く。なんと種札は下がってなかったが、白魚がちゃんとあった。来た甲斐があったなあ(笑)

ここの白魚は、キスほどではないが、軽い衣ながら香ばしく揚がっている。塩をつけて噛み切ると、衣の香りと白魚のほくほくの旨味が口中に。中川氏によると、季節はやはり桜が散る頃まで。しかし今年は漁獲が不安定で入らない日もあり仕入には苦労するとのこと。「淡泊な見かけと違って揚げるととても旨味が強い魚なんです」と。まさにその通り。

タラの芽は塩で食する。これまた春を告げる種。白子はすだちを絞って塩で。こちらは冬の名残、濃厚な旨味。伏見唐辛子。メゴチは小ぶりだがしっかりと揚がり、天ぷらの醍醐味を感じるしっかりとした旨味。大ぶりのアナゴを鉄箸でバスっと真っ二つに切ると盛大な湯気が。皮目が焼かれる寸前程度までしっかり熱が通っている。これはもちろん天つゆで。寿司種とは違う天ぷら独特の旨味。

ここから野菜。茄子、蓮根、サツマイモ。〆は小柱のかき揚げを乗せた天丼。シジミの赤出汁とお新香を添えて。いつもと変わらぬ中川氏の真面目な仕事ぶりと春の美味い天ぷらを堪能した夜。


「新ばし 笹田」訪問
月曜は「新ばし 笹田」。年明けからバタバタして結局1月には訪問できなかった。

入店するとまだ他のお客さんがいなかったので、笹田氏や奥さんと雑談。毎年年末に手伝いにゆくおせち作りのことや、この前の雪の日の事など。雪でキャンセル覚悟していたが、予約のお客さんは全員来店したとのこと。凄いですなあ。ただ、帰りにタクシー呼んでもなかなか来ずに大変だったらしい。まああの日はタクシー走ってるのが珍しいくらいの雪だった。

お酒はまず麒麟山純米吟醸で。すっきりした辛口。最初に小さな椀で供されたのは粕汁。九平次の酒粕だというが、濃厚な旨み十分で身体が温まる。酒精分も残っており、お酒飲めない人なら顔が赤くなるかもしれない。細かく刻まれたこんにゃく、人参がまた口ざわりよし。

葉山葵の和え物は、平貝、赤貝、茹で車海老と一緒に。酢がくっきりと効いて山葵の風味と魚介の旨みを引き出す。添えられた海苔の香りも良い。壬生菜と油揚げの煮物は香ばしい胡麻の風味とふっくらした出汁の旨みが素晴らしいここの定番。

お酒は磯自慢純米大吟醸に切り替え。こちらはふっくらした米の旨みと甘味を感じる酒。

お造りは、フグ、牡丹海老、メジマグロ。河豚がここで出るのは珍しい。カワハギの肝を溶かしたポン酢で。湯引きした皮も美味い。牡丹海老は実に立派な身で甘味が十分。

お椀は白甘鯛と椎茸。香りのよい出汁に、上品な白身の脂が溶け崩れて陶然となる美味さ。小さな椎茸もただ添えてあるだけでなく、しっかりした旨みあり。大向こうを唸らせるような気を衒った派手な素材こそあまり使わないが、小さなつけあわせの素材にも全てしっかりと気が配られている。笹田氏の真面目な人柄がよく分かる仕事ぶり。

太刀魚塩焼き。笹田氏も「これは身が厚くとてもふっくらして美味いです」と。確かにその通り。塩の具合も身の脂の美味さを鮮やかに引き立てるメリハリあり。

お椀でも焼き物でも、魚は丹念に下ごしらえしてあり、中骨や小骨、皮目が口に触ったりすることが一切無い。客のほうが気をつけて食さなければならない料理というのが他店では稀にあるが、ここでは、当たり前だがなかなか行き届かない所にきちんと気が配られているのに感心する。

煮物の前に一品出たのは、鮎の稚魚である氷魚の釜揚げ。大根おろしを添えて酢醤油で。爽やかで淡白な旨み。煮物は、白身魚、百合根、銀杏が入った蕪蒸し。しっかりした味付けの餡がかかっており、締めくくりにふさわしい濃厚な旨み。

〆はいつもの炊飯土釜で炊き立ての御飯。ちりめん山椒、わさび漬け、お新香、赤出汁を添えて。御飯のおかわりにはいつも通りオコゲを添えて。最後の甘味は、冷製の白玉ぜんざいに爽やかな煎茶。一品ガッツリではなく、ゆるゆると酒を飲みながら、美味いものをあれこれ少しずつ食べる至福。いつもながら和食の醍醐味を堪能した。


「新ばし 久」訪問
木曜の夜は「新ばし 久」。なんだかんだでずいぶん久しぶりの訪問になってしまった。

本年もよろしくと挨拶してカウンタに。

まず生ビールを一杯。お酒の品書きを見ると、黒龍しずく、九平次純米吟醸、獺祭二割五分大吟醸など、いつもとは違う酒が並ぶ。黒龍「石田屋」があるのはびっくりしたが、これはさすがに売切れとのこと。一合3,500円というのも凄い値段ですな。

まず先付。おせち風味。黒豆、ごまめ、ばちこ、玉子焼きが少しずつ盛られた一皿。お酒は黒龍「しずく」を。磨き込まれた実に淡麗な酒。美味い酒は水に似るというのはこんな酒のことを言うのだろうか。

メニューには書いてないが香箱ガニがあるというので注文。昨年の「笹田」では年内でもう禁漁になると聞いてたが、まだ時折売ってるのだとか。

オレンジの内子が濃厚な旨味。ゼリー状のカニ酢も美味い。甲羅の中をたいらげたら、お酒を入れて炙り甲羅酒に。

お造りは、ヒラメ、メジ、タコ。タコは「しみづ」から分けてもらっているはず。マグロはメジを使うのが、寿司屋ではなく居酒屋だという店のこだわり。白身はいつも質のよいものを置いている。本日はカウンタは割と空いている。途中で「しみづ」の親方が店に現れて、「どうもいらっしゃい」と。

お椀はアラ。皮目のゼラチン質が凄い。魚は太刀魚の塩焼き。強火の遠火でじっくり焼き、皮目は香ばしく身肉はふっくらと。

肉料理はびっしりサシの入った薄切り牛肉の柳川風。ゴボウの風味がよろしい。これでおきまり終了。

この店得意料理のフライをアラカルトで、車海老は頭も別に揚げてくれる。キスは天麩羅同様深く揚げて水分を飛ばして旨みが凝縮している。どれも美味い。最後にお茶が出て、甘味は抹茶ムース。

「P.M.9」に行くと、バーテンダーM氏が「今日は「久」さんでしたね」と出迎えてくれる。「しみづ」グループの顧客情報共有は凄いなあ(笑) いつも通りまずドライ・マティーニを。まだ正月の飲み疲れが残ってたので二杯目はジンフィズを。ここで帰るつもりだったが、やはり最後にもう一杯飲むかと、白洲ヘビリー・ピーテッドを。ピートで炊いた大麦を輸入して醸造・蒸留してるのだとか。

ホロ酔いでタクシー帰宅。