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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
日本滞在寿司日記 その2
新年3日は「しみづ」で初寿司。そのまま成田に向かい、3時10分のフライトで無事アメリカ帰着。外の気温は摂氏マイナス9℃。いや~寒い。日本滞在がまるで夢の如し。忘れないうちに、日本滞在寿司日記 その2を。

寿司日記 DAY 5 「與兵衛」

前回来たのは渡米前の06年3月だったから、1年9ヶ月前。ずいぶんご無沙汰したが、親方や奥さんは、「もう何年も経ったような気がするねえ」と(笑)。「パリのクリヨンに出張握りにいったのは話しましたっけ」と奥さんは言うのだが、それは私がまだ日本にいた頃の事だから勿論知ってます(笑)。

年末なので、私同様、海外から帰省してこの店を再訪する人が結構いるとか。この日も、後から、ロンドン駐在という男性が一人で見えていた。 以前いたお弟子さんは独立。親方一人で仕込みをするので、今は7席一日一回転が精一杯だとのこと。やはり予約取るのは、少々難しいようだ。もっとも冬場は風邪による当日キャンセルが結構あるとのことで、タイミング合えば当日でも入ることは可能か。

余談ながら、3代前くらい前に卒業したお弟子さんは、私がこの店に来るようになってすぐに辞めた。最初独立して四日市に店を開いたと聞いてたが、その後、名古屋郊外に店を移転。「弥助」という名前で、「與兵衛」で習った仕事を出す寿司屋をやってるのだとか。名古屋で「與兵衛」風の寿司というのも珍しい。そんなお店の近況あれこれを伺いつつ。お酒頼んでツマミから。

本日の大吟醸は「山形正宗」。飲み口は軽いが旨みもあるよい酒。その後、定番の「九平次」。最近置くようになったという「伯楽星」を続けて。日本に来たらやはり日本酒が美味い。

まず最初に供されたのは、暖かい牡蠣のスープ。魚のアラを煮出し続けた出汁に、立派な肉厚の牡蠣を炊き込んで。海の豊穣をそのまま凝縮した濃厚なスープ。日本流ブイヤベースとの解説。なるほど。

そしていつものお通しの一皿。海老頭のヅケ、ホタテ煮浸し、イカゲソヅケ、白子、マグロ炙りヅケ、シャコ。どれも懐かしい。白子は濃厚ながら上品な脂。中トロ部分を炙ってからヅケにするのも、この店独特の仕事だが旨みが増す。漬け込みのシャコも古式を残す仕事だが、肉厚で実に美味い。

ハマグリをシッカリ炊き上げた佃煮は酒の肴に好適。ヒラメの甘酢ヅケもツマミで。お茶を頼むと、最後に、ぐい飲みに一杯だけ、十四代非売品なるものをくれた。これが馥郁たる香りに芳醇な味。実に美味くてびっくりした。

握りは、いつも通りマグロのヅケからスタート。落ち着いた固めの酢飯が、ここの寿司種には実によく合う。ヒラメは、甘酢ヅケと胡麻醤油ヅケ、それぞれの味わいの変化が面白い。この店の定番、シマアジ炙りヅケは、炙った皮目の香ばしい美味さが酢飯に溶けてゆく。軽く醤油にくぐらせたスミイカ。海老、平貝は、それぞれ甘酢につけてある。

ここから、この店の真骨頂である光り物に。軽さから重さへ、薄い脂から濃厚な脂へ。素材と〆具合を変えて、見事なグラデーションを描く光り物が連続で供される。サヨリはこの店独特の、身が厚くビッシリ脂が乗ったもの。あまり他の店で見たことがない。コハダ、サバも身肉の旨みを引き出す絶妙の締め具合。イワシがまた濃厚で、蜜蝋のような脂がネットリと舌に溶ける。この時期にイワシとは異例だが、実に立派なのがたまたま入ったと。サバの後で光り物を締めくくるにふさわしい品。

漬け込みのハマグリは、この店独特。古式を残す濃厚なツメがまた素晴らしい。イカ印籠詰めを一切れ。これまたこの店独特の白く煮上がったアナゴ。沢煮風だが、脂の乗った分厚いアナゴで仕上げる。難しい時期だが、それでも濃厚な旨みが口中で酢飯と共に溶け崩れててゆく幸福。最後に玉子もらって終了。この店独特、オンリーワンの個性を堪能。

親方や奥さんとあれこれ雑談して、最後は佃煮のお土産まで頂くわ、雨が降り出したのでビニール傘まで拝借するわ、なんだかすっかりお世話になってしまった。


寿司日記 DAY 6 「新橋鶴八」

日本滞在6日目の夜は「新橋鶴八」。前回訪問が06年3月だから、ずいぶん久しぶり。開店と同時に入店すると、石丸親方は、「久しぶりですねえ、半年ぶりくらいですか」と。申し訳ない、実はもっと久しぶりなんです(笑)。「アメリカのどこでしたっけ」と聞くので、シカゴだと告げると、「寒いところですよね」と。よく知っている。

懐かしい店の中は、なんだか小さく見える。改装したのか問うと、「それはねえ、アメリカはなんでも大きいから、それに慣れると日本が小さく見えるんですよ」と。そう言われれば、確かにその通りかもしれない。

手前に立つ背の高いお弟子さんは私がこの店に通いだしてからずっと変わらない。「もう独立して、辞めたかと思ってたよ」と冗談言うと、「まだいるんです、エヘヘ」と笑う。以前奥に立っていた髭のお弟子さんは辞めたようだ。出た物を記録する係は、以前このお弟子さんが裏方の仕事をこなしながらやっていたのだが、若いギャル系女性(?)が専業でこのポジションにつく。石丸親方は、ちょっとせっかちなところがあるから、厳しくスパルタで鍛えられてなかなか大変だ(笑)。中でアナゴ炙ったり、吸い物を温めたりするのは、別に男性がこなす。

お通しは醤油に漬けた小柱。菊正宗の冷酒を貰い、ツマミを切ってもらう。

ヒラメは立派な身を分厚く切る。熟成した身を温度管理して供する最近の若手寿司屋の流行とは違うのだが、歯ごたえを残した身の食感と爽やかな旨みがよい。アワビ塩蒸しは、まだほのかに温かい。かなり水分を飛ばした昔風の仕事。これもプリプリした歯ごたえに旨みが凝縮している。「しみづ」の常連でも「鶴八」風の塩蒸しのほうが好きと言う人がいるそうだが、これもある意味分かる気が。

ブリは脂の乗った腹の身が美味い。なんだか酒が進むなあ。親方は「今日はピッチ早いですね」と笑う。タコは冷蔵庫に入ってたのがやや難だが、それでも噛み締めれば実に美味い。漬け込みのハマグリも、いつもながらの印象的な仕事。

このへんで握りに移行。中トロ、コハダ、アナゴをそれぞれ2貫ずつ。最後にカンピョウ巻。途中でハマグリのおつゆが供されるのも変わらない。コハダは相変わらずネットリと溶けるような〆具合。アナゴは軽く炙るのだが、これも鶴八系伝来の看板種。脂が乗る季節ではなくとも、仕事できちんと食わせる。味の濃いカンピョウ巻も、ここのフンワリした酢飯と実によく合う。

30日を昼から通しで営業して、97年の営業は終了。それに備えてか、種札がずいぶん揃っており、サヨリ、シマアジ、サバ、ミル貝など、試せなかった種がたくさんあったのが残念。最終日は、種が切れると札が次々に返って行き、全部札が返ったらそこで打ち止め終了だとか。

種の熟成、温度管理、赤酢の酢飯、マグロの質、おまかせの導入など、直系弟子の「しみづ」が加えた改良は数多いのだが、しかしそれでもなお、仕事の全てのルーツは厳然とこの店にある事がはっきり分かる。

昔気質の親父が柳橋美家古から神保町鶴八に伝来した技を受け継ぎ、しっかりと守る良店。親方は無骨で無愛想に見えるが、客あしらいで不快な思いをしたことは一度もない。ただ、一本気でせっかちなところがあるから、客のほうが不必要に怯えたりあせったりすると、お互いのタイミングがドタバタして、ちょっと気の毒なことになった客を目にすることはある。まあ、こればかりはどうしようもないなあ。親父が強面に見えるせいか、寿司のウンチク垂れる客や横柄な客が少ないのも、この店のよいところ。

「よいお年を」と親方と挨拶を交わし、幸せな気分で店を出る。



寿司日記 DAY 7 「しみづ」で寿司納め。

空気が乾燥しているからか、喉をやられた。痛みあり、全身に微熱も感じる。ホテルの部屋では加湿器を稼動させ、喉スプレー、風邪薬、ビタミンCで悪化を防止。しかし夜になると調子悪くなるなあ。

日本滞在7日目、30日の夜は、本年の寿司納め。恒例の「しみづ」訪問。午後2時から。

いつもここでお会いする埼玉のAご夫妻と同席。「しみづ」の奥さんも久々に店に出られており、あれこれ話がはずむ。

日本酒常温でツマミから。身に光が宿ったようなタイの濃厚な旨みが素晴らしい。サヨリ細切り。タコも香りよし。赤貝はヒモと共に。サバは皮目を焼霜にして。平貝の炙り。あれこれずっと雑談しながら調子よく飲んでいたので、お酒が回り、その後は、ちょっと記憶がはっきりしないなあ。連日のお酒で疲れもピークに。握りはいつもの通り。いずれにせよ、これで本年の寿司は打ち止め、楽しい寿司納めであった。
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