FC2ブログ
97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「ゴッホの復活」
1週間ばかり前に読んだのだが、「ゴッホの復活~日本にたどり着いた「ひまわり」の正体」が面白かった。

著者、小林英樹の第一作、「ゴッホの遺言」は、ゴッホの作品に点在する贋作の存在と、ゴッホ自殺の真相を絡め、まるで上質なミステリーのごとく謎解きをしてみせたノンフィクション。これが日本推理作家協会賞を受賞した。そして、ゴッホの自画像に潜む贋作を指摘してみせた第2作が、「ゴッホの証明」

今回、いわゆる「ゴッホ贋作シリーズ」の最終作にして完結編として書き上げたのが、この第3弾、「ゴッホの復活」である。

今回、著者が俎上に上げるのは、日本に存在する中で、一番有名なゴッホ作品。あの「ひまわり」。

日本には、今までゴッホの描いた「ひまわり」の絵が2枚あったという。ひとつは戦前に購入された、ブルーの背景の「芦屋のひまわり」と呼ばれる絵。しかし、これは戦災で消失し現存しない。

もう一枚は、バブル時代、クリスティーズのオークションで、58億円というゴッホ史上最高金額で落札された「ひまわり」。購入者は、当時の安田火災海上。この落札は、美術品を買いあさる「金満日本」の象徴として、世界でも大きなニュースになった。現在は、損保ジャパン東郷青児美術館に展示されている有名な作品。

この「安田火災ひまわり」には、購入当初から、ゴッホの手紙に製作が書かれていない等の理由で、「贋作ではないか」との根強い噂が、欧米の美術界を中心に囁かれていた。ただし、近年、使われたキャンバスの画布の分析から、真作であるとの研究結果がシカゴ美術館より発表され、現在では贋作説はほぼ消滅している。

著者は、前2作と同様、画家としての目から、この「ひまわり」の、大きさ、構図、筆致、描画法、絵の具などを丹念に鑑賞・分析し、これはゴッホの絵ではなく、贋作であると断定する。他の真作と共通する画布についても推理がなされている。

贋作かどうかについての判断は私にはしかねるが、著者の、「これはゴッホではありえない」という分析自体が、裏返すとゴッホの絵画の持つ魅力を深く解説するものになっているところが、この「ゴッホ贋作シリーズ」圧巻の読みどころ。贋作の糾弾というよりも、著者のゴッホへの愛着がよく分かるところに好感が持てる。

「芦屋のひまわり」や、オルセーの「ジヌー夫人」に対する分析も興味深い。ただ、画竜点睛を欠くのは、肝心の「安田火災ひまわり」のカラー写真が掲載されていないこと。Wikipediaなどにも画像が掲載されているのだから、これは口絵に収載してほしかったなあ。

ゴッホの「ひまわり」は世界に散逸しているのだが、ロンドンのナショナル・ギャラリーの作品は、訪問時に見たことがあったっけ。記憶がイマイチはっきりしない。アメリカでは、フィラデルフィアにもあるそうだが、これも未見。日本の「ひまわり」も、一時帰国時にでも、一度見に行ってみようかと考えているところである。


スポンサーサイト