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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「There will be blood」
「There will be blood」をDVDで見た。主演のダニエル・デイ・ルイスが、アカデミー主演男優賞取った作品。実を言うと、08年度作品賞を取った「No country for old man」と間違えて、Wal-Martの安売り棚で購入したもの(笑)。いや、それが、ジャケット見ても、なんとなくちょっと似たような雰囲気を持つ映画なのである。

20世紀初頭のアメリカ、カリフォルニアで原油採掘を行う男の一代記。地下から噴出する原油は、神の恩寵であり、富そのもの。そして、石油への凄まじいまでの執着と独占欲にかられた男は、その手を血で汚し、破滅への道を歩むことになる。一種のピカレスク・ロマン(悪漢小説)だが、ある意味サイコ・ホラーの系譜に繋がる雰囲気もたたえている。、

題名の「There will be blood」は、旧約聖書出エジプト記の一節。神がモーゼに、エジプトに襲い掛かる災厄を予言する章句から取られている。

The Lord said to Moses, "Tell Aaron, 'Get your staff. Reach your hand out over the waters of Egypt. The streams, waterways, ponds and all of the lakes will turn into blood. There will be blood everywhere in Egypt. It will even be in the wooden buckets and stone jars.'"


すべての水を血に変える、エジプトを襲う神の災厄。この映画で繰り返される、噴出する原油の奔流と、それに色濃く投影された血のイメージを実によく現した印象的な題名。原作は「石油!」という名前なのだそうであるが。

しかし、日本発売DVDの題名は、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」と、単にカタカナに変えただけ。大多数の日本人は、題名が聖書の引用だとは分からないだろう。あえてつけるなら、例えば「血の災厄」か。そういえば、「No country for old man」の邦題は、「ノーカントリー」と勝手に後半を省略しており、これはもはや悪い改竄とも思える。まあ映画の題名翻訳は、実に難しい。

何者をも信じない孤独なオイルマンを演じるダニエル・デイ・ルイスは、石油への執着と狂気を内面に沈潜させた人物を見事に演じて、実に印象的。キリスト原理主義的説法を行う牧師イーライは、石油と神、執着の対象が違うだけで、主人公と同じ種類の狂気を共有する人物。主人公の影でもあり、光でもある。彼らの葛藤が、この映画の不気味な基調低音として響き渡る。「I'm finished.」と主人公が呟く戦慄のラスト・シーンは、ただ観客の前に投げされるだけなのだが、なんとも圧巻。

石油がもたらす富が、どれだけ人を狂わせてきたか。石油採掘の歴史や、ピーク・オイル説と考え合わせてみると、また別の感慨が湧き上がる。不思議な雰囲気を持った印象的な作品。


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