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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「食べもの屋の昭和」
積んであった本から、「食べもの屋の昭和~30店の証言で甦る飲食店小史」を見つけてパラパラと読み始めたら、意外に面白く結局最後まで。教文館のカバーがついてるから、Amazonではなく日本で購入して持ち帰った本のはずだが、いったいいつの事だったか。そして、なぜ今まで読まずに放置してたのだろうか。

老舗と呼ばれる飲食店の店主に、店やその業界の歴史、店に伝わる仕事やその経営哲学を聞くインタビュー集。天ぷらの「てん茂」、蕎麦なら「池の端藪蕎麦」、寿司の「弁天山美家古」、うなぎの「野田岩」など江戸前の有名店の店主が次々に登場。その他にも、「たいめいけん」、「米久」、「言問団子」など各業種から一店舗ずつ30人の店主へインタビューが行われている。

このインタビューは「月間食堂」という飲食店向け専門誌に1989年から2年半連載されたもので、今から考えるともう20年前。すでに多くの店主が鬼籍に入ったり引退したりしている。しかしインタビューが古いだけに、昭和の香りを残す古い話が聞けるのが興味深いところ。

代々の家の商売を継いだ当主は、子供の頃から手伝っていたから、仕事は自然に身についてしまった、と異口同音に言うところも実に興味深いし、昔の商売からどんな風に食べもの屋の営業形態が変わってきたかを語る部分も記録として価値あるもの。

代々続く名店の当主から、家業を維持してゆくことがいかに大変かを語るエピソードを、ごく自然な言葉で引き出している著者のインタビューは、なかなか優れた仕事。

「てん茂」の先代は、「客はこっちが分かっちゃ困ることは分かる。だけど分かってもらいたいことは分からない。だから商売は手を抜けないんだ」と語っていたそうだが、これまた客商売の一種真理を突く名言。

以前、新橋鶴八の親方が、「出しても客には分からない、そう思ったら、そいつはもうプロじゃないんですよ」と語っていた。師匠の神田鶴八の師岡親方の本にも同じことが書いてある。真っ当な職人の真っ当な姿勢というのは、親方の教育によって、きちんと次の代に伝わって行くのですな。

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