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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「新・人間コク宝」を読んだ
「豪さんのポッド 吉田豪のサブカル交遊録」を読んで以来、吉田豪のポッドキャストを聞いてるのだが、前回の更新で、「新・人間コク宝」が出たという話題があり、早速Amazonに発注。

これは、プロ・インタビュアーとして名高い吉田豪が、実に濃い芸能人・有名人を相手にインタビューした記録をまとめたインタビュー集。「人間コク宝」「続・人間コク宝」とシリーズ化しており、これが第三弾になる。

吉田豪の今までの活躍の場は、マイナーな雑誌やラジオ、サブカル系のライブハウスという印象だったが、ポッドキャストによると、最近はTVや大手雑誌からのオファーがガンガン来ており、世には時ならぬ吉田豪ブームが沸き起こっているようだ。

タレント本収集家としても知られる吉田豪は、インタビュー相手の芸能人の著作(たいがいゴーストライタが書いてるのだが)や過去の雑誌記事などを事前に調べ尽くして場に臨んでおり、本人も忘れていたようなデティルを相手に呈示することで懐に飛び込む。「そんな事まで知ってるの」と気を許し、気分よくなった相手がボロボロと好き放題にしゃべり出すのを、「ダハハハ」と笑っておだて上げながら、話題を丹念に拾ってゆくのが吉田豪の真骨頂。

相手があまりにも気分よく暴走し過ぎて、とても本には掲載できないような話が飛び出すころもあるが、そんな話も後日イベントで小出しにして商売にしているようだ。なかなか世渡りと商売にも長けている。

どの「人間コク宝」も、普通人とはまったく違う世界に生きる芸能人の、ある意味異界人としての凄まじい一面を描き出すもの。今回の本には、「肉食!! 男気溢れるインタビュー集」と副題があるのだが、確かにとりあげられた面子も圧巻。

印象に残った一部をご紹介。

木村一八:破天荒で破滅型の芸人であった親父、横山やすしへの愛憎混じる述懐が印象的。本人自体も年を取るにつれ「やすし化」が進んでおり、血と言うものは争えないなと感慨深い。何百万もタクシー代使ってたら、吉本興業がベンツ買ってくれたとか、タクシー運転手に対する傷害事件を起こした時の示談金9700万円を吉本興業が払ってくれたとか、親父がいかに吉本に貢献し、一八がいかに若い頃から特別扱いを受けていたかが分かる話。だからロクな奴にならなかったんだなあ(笑)

月亭可朝:桂三枝に対する「人が弱ったら踏みつけてくる奴」との実も蓋も無い悪口にも呆気にとられるが、破天荒な芸人人生を飄々と語る様には大笑い。賭博や怖い人との付き合いもあっけらかんと口にして、これまた怖いものなしの人生。インタビューへの語りがすでに漫談のようになっている。競馬に勝ったあぶく銭で、ウケをねらって仏壇買って帰ったら、そのロウソクから出火。新喜劇の原哲夫から「可朝さん、家燃えてまっせ」と電話があったが、たまたまエイプリルフールだったので、かつがれてるのだと思い、「せやねん、燃やしてるねん」とほったらかしにしたら家が全焼してたというエピソードは呆れかえるが面白い。

蛭子能収:変人だという話は有名だが、インタビューで開陳される、ポーンと突き抜けたような奇人変人ぶりが凄い。元祖KYの人という印象であるが、本人に自分が変人であるという自覚がないところもまた感心するところ。「蛭子の呪い」の話も面白い。

ミッキー安川:終戦直後に徒手空拳でアメリカに渡り、その後コメディアンに。これまた傍若無人で破天荒な人生。力道山やシャープ兄弟と喧嘩したとあっけらかんと語り、前田明について、ああ、彼はダメだよと割り切る大物ぶりにも感心。しかし興味深いのは、ほんの一部しか語ってないのだが、終戦後のドサクサの話。米軍の通訳やってたというが、児玉機関などの話もチラっと出る。 「下山事件~最後の証言」に出ていた、「矢板玄」、「亜細亜産業」、「キャノン機関」など、日本戦後史の暗黒部分を知っているのではないかと、実にヒヤリとするエピソード。

生島ヒロシの武闘家ぶりや、若い頃何度も刺されて死にかけた体験を語るジェリー藤尾、若い頃はヤクザになろうと思ってたと語る梅宮辰夫など、登場する芸能人のインタビューを読むと、やはり彼らは堅気の我々とは最初から違う世界に住んでるのだなと、つくづく納得する。

実に面白いインタビュー集なのだが、脚注はロクな事書いてなくて実にお粗末。ポッドキャストによると編集がつけて吉田は関与していないらしいが、出版社に実力が無いことがはっきり分かる出来。

しかし、どんどんとメジャーになりつつある吉田豪には、そのうちにNHKで市川海老蔵のインタビューなどやってもらいたいもんである。歌舞伎御曹司の人生というのも、おそらく、上記の面々に勝るとも劣らずに興味深く、ただあっけに取られるような半生だと思うのだが。

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