97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”」
「日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”」読了。

未来工業という会社のユニークな会社経営哲学を、創業者の山田昭男氏が歯に衣着せぬ爽快な語り口で解説する本。この人はTV番組や雑誌記事などにもよく登場する名物経営者。

未来工業の定年は70歳。65歳の年収が定年まで下がらない。週休二日にしたのは岐阜県で最初。年末年始は20日連続連休、お盆休みは10日間。残業禁止で日本一勤務時間の少ない会社。5年に一度全社員で海外慰安旅行。非正規労働なし、全て正社員。成果主義は導入しておらず待遇は年功序列。65歳の年収は700万円で、これは定年まで下がらない。

こうして書き写していて、それにしてもすばらしい労働環境だなと驚く。年収については、都市部の大企業でもっと多いところも勿論あるが、リストラがあったり、ある一定年齢からは年収が下がったりする会社も多い。この会社は岐阜所在で生計費も安い。70歳まで700万円が保証されたら、下手すると大企業よりも実質的な生涯年収は多いのでは。

創業者が「餅」と呼ぶ従業員に対する厚遇政策は、単にばら撒きで行われているのではない。なにしろ本業が強いのが特徴。

未来工業の主要製品は、家を建てる際の電気工事に使う各種の建設電気パーツ。この分野は各パーツの規格が法律で厳格に決まっている。しかし未来工業は、他社と同じものは絶対に作らない、日本一・日本初にこだわるという姿勢で、製品差別化に成功し、他社を凌駕するシェアを得ている。

その着眼は実にシンプル。多大な資金を投じて新製品を研究開発したのではない。例えば、電線を通すビニールパイプは口径等の規格が法律で決まっていたが色には定め無し。同業他社は全て一律グレーのパイプしかなかったが、未来工業はアイボリーのパイプを投入。これが売れた。壁や天井の裏に敷設するパイプの色など、誰の目にも付かずどうでもよいようだが、敷設業者も綺麗な色があればそちらを選ぶのが人情だという。

柔らかい電線パイプの導入や、他社が慣例として2つしかつけていなかったスイッチボックスの穴を4つにしたなどの工夫も効果大。また、スイッチボックスの形状は、他社は2~3種類に絞っていたのだが、未来工業は赤字覚悟で多種多様な85種類を用意。今までは、スイッチボックスに無理やり仕事を合わせていたのだが、多種多様な形があればストレスなく施工ができる。このような工夫がユーザーである現場の職人に新鮮な感動を与え、未来工業という会社と製品の価値をはっきり認識させることに繋がってゆく。

技術開発に卓越した製品を作り、大量生産で安く売って拡販するビジネス・モデルではない。製品に関する徹底した差別化、他社と同じものは絶対に作らないというポリシーを見事に貫き通した事が企業経営として秀逸。この安定した業績が従業員への素晴らしい処遇制度を支える根幹になっている。

そして、従業員の素晴らしい待遇を維持できるもうひとつの根幹は徹底した無駄の排除。

創業者は夏はシャツ一枚で客が来ない限り部屋にもクーラーはかけない。従業員も服装は自由。報・連・相は禁止で、命令したり、「俺は聞いてないよ」と文句言う上司はいない。上司の指示なく出張でもなんでも行ってよいフラットな組織。客からの電話は全て女性の業務部が一手に応対し、営業マンの電話は発信専用という割り切り。もともとコーポレート部門など無かったが、名古屋証取上場審査の際に「経理部と品質保証部がないと審査が通らない」といわれて渋々作ったが、人事部は作れといわれなかったので無いままにしているという、経費面でも組織面でも徹底して無駄を省いた組織。会社見学を有料2000円にして年間5000人の客があり、ここでも1000万円を稼ぎ出す。よかれと思ったらすぐに実行し、間違いだと思ったらすぐに止めるという経営の見切りの速さも、誤った判断に拘泥して無駄なコストを垂れ流すことを防いでいる。

このようにして、製品差別化による顧客価値の向上と徹底的なコストダウンによって生まれた余剰を社員に還元すると、モティベーションの上がった社員は、会社に対する忠誠心を持ち、誰に命じられることもなくどうすれば製品や業務が改善できるかを真剣に自分で考え抜くようになり、それがまた会社が伸びる事に繋がるのだと。

実に印象的な話。小回りの効くある程度小規模な会社で、カリスマ性のある経営者がいないと実行できない点もあるとは思うのだが、大多数の会社はこんな風な素晴らしき成功のスパイラルには乗っていない。「「いいモノを安く」の過当競争が日本経済を悪くする元凶だ」とこの創業者は言い切るが、これには納得。真の顧客ニーズを把握せず、安売りとコストダウンで叩き合いしながらモノを売る商売を続けていけば、お互いに疲弊するばかりであり、結局、誰も幸せにはならないのだよなあ。



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