97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「日本のいちばん長い日」DVDを観た
土曜日は、大相撲をTVで観た後、先日Amazonから届いていた「日本のいちばん長い日」をチェック。

今年リメイクされ劇場公開されたそうだが、これは1967年に岡本喜八が監督したオリジナルの白黒作品。



昭和20年8月、広島長崎への原爆投下と、和平交渉仲介に望みを繋いでいたソ連の参戦と満州侵略。大日本帝国の命運がまさに尽きようとしていた頃、ポツダム宣言受諾と終戦の詔勅を巡り、徹底抗戦を叫ぶ陸軍の強行派は宮城を占拠したクーデター未遂事件を起こす。日本敗戦の8月15日に何が起こったかを巡る作品。

白黒の画面は、シャープな陰影がはっきりとしており、汗だくになって会議を繰り返し、せめぎ合う人々を包み込むうだるような暑さまで画面に捕らえられている。

御前会議や玉音放送の場面でも、「お上」「天皇陛下」をまったく映さない手法は、現人神として天皇が神格化された当時の雰囲気を反映した極めて印象的な映画的手法。リメイクでは本木雅弘が天皇陛下を演じているというが、ちゃんと成立していたのかな。

そしてクーデターの中枢となる、陸軍省軍務課将校、畑中少佐を演じる黒沢年男が実に印象的。神国不敗の伝統を純粋に信じ、本土決戦に持ち込めばまだ戦える、無条件降伏は亡国の道である信じている若きエリート軍人。玉音放送を止めるための決起を実行すべく上官の説得に駆けまわり、どうしても納得しない近衛師団師団長を殺害。ニセの師団長命令を発行してまで宮城占領を実行に移す。この純粋と狂気の狭間を行き来する青年像を、エッジの立った演技で見事に成立させている。

若き軍人の信念と狂気は、昔、「タップス」でも描かれていた通り東西共通のものあり。

鈴木貫太郎の笠智衆、米内海軍大臣の山村聰、阿南陸軍大臣の三船敏郎など東宝のオールスターキャストが実に重厚。群衆以外で登場する女優は、新珠三千代のみというのも逆に新鮮。戦争を描いた最近の映画やTVドラマでは、綺麗な女優が妻や母として出て来て、主人公と涙の別れの愁嘆場を演じるのがお約束になっているようだが、当時の極端な男尊女卑や軍国主義に染められた戦時日本のリアリズムとして言うなら、そんな場面はおそらく無かっただろう。

岡本喜八は全力投球してないという話もあるようだが、それでも実に印象的かつ重厚なドラマとして成立している。昔の日本映画は実力があったのだと感じさせる名作。今年度のリメイクはもう見なくてもよいかな。

 
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