97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座、「三月大歌舞伎」昼の部を
土曜日は歌舞伎座で「三月大歌舞伎」昼の部を観劇。

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ここしか取れなかったが、席は若干前過ぎたかな。

歌舞伎座では開演前に売店でスパークリングワインを一杯やる習慣。ただ本日は飲み疲れもあり生ビールにしようと思案しつつ店頭へ。しかし注文する前に既に売店の美人のおねいさんがスパークリングワインを注ぐ態勢に入っている。「あ、あ、スパークリングワイン」と初志貫徹しない情けない注文w 寿司屋でも、今日は飲むまいと思っても、「常温ですね」と酒が自動的に出て来る。覚えてもらうと言う事は、自由が制限されることでもあるんだなあ。

まず真山青果作の新歌舞伎「明君行状記(めいくんぎょうじょうき)」。歌舞伎座では16年前に同じ梅玉主演で出ているが、久々の公演。

亀三郎も大奮闘。梅玉の池田光政は、陽明学者として学問ばかりの大人しい高潔の士という雰囲気で出るのかと思ったら、割とくだけた感じのざっくばらんな殿様。しかし人間の大きさがあり、若い者の血気に逸り過ぎた自分への疑念を爽やかに受けとめて、見事な裁きで放り投げるという機知と教養溢れる人物の豪快さを存分に見せる。

真山青果の新歌舞伎らしい、火を吐くような台詞の休みない応酬が特徴的。梅玉は人物としてはしっかり成立していたが、台詞が多いためか結構トチっていた。口跡が明瞭であるため逆にトチリが目立つとも言える。吉右衛門ならムニャムニャ言って切り抜けるし、幸四郎なら妙な声色でごまかすと思うけれども(笑)

ただ、座組みとしては、横綱大関が居ない相撲の巡業のような地味さが感じられるもの。まあ、こればかりはあれこれ配役の都合があるだろうから仕方ないか。

関係無いが、最近は鶏爺さんの大向こうを聞いてない気がする。顔も知らないが、聞こえないとなると元気なんだろうかと気になるな。

30分の幕間がここで。花篭で「さくら御膳」。

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次の演目は、「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)」より、渡海屋・大物浦の段。いわゆる「碇知盛」。渡海屋銀平実は新中納言知盛を仁左衛門。源義経を梅玉。この人はやはり義経役に座りが良い。女房お柳実は典侍の局が時蔵。典侍の局になってからが実に高貴な雰囲気が出てよろしい。安徳帝は、去年の染五郎「碇知盛」でも当時まだ武田タケルだった市川右近が演じていたっけ。

昨年の歌舞伎座の染五郎でも観たが、仁左衛門は生まれついての立ち役というか、知盛は大きく輪郭がクッキリしており圧巻の迫力。演出としては物語が分かりやすい。義太夫狂言で分かりやすいのが良いかどうかはまた難しい問題かもしれないが。

うちの主人は天候観るのが得意でと女房が語る部分は、義経主従を騙してこれから嵐になろうとする日に出港させ、それに乗じて船を襲う算段であったという部分は、今回初めて理解した。なぜか染五郎の時は分からなかったな。イヤホンガイドが教えてくれなかったからか(笑)

渡海屋奥座敷、注進に来た家来たちが伝える戦の劣勢と、沖の船から明かりが次々と消えて行くのを見て、知盛の奇襲が失敗した事を知り、平家の女官達が驚愕し慄いて泣く場面は、歌舞伎の様式的な美に満ちて印象的に成立している。

西国に落ち延びる義経の船が嵐に会い、平家の亡霊のせいだと言われた噂。戯作者はここに、史実では、壇ノ浦で平家滅亡と共に死んだ平知盛と安徳帝が実は生き延びていたと言う虚構を巧みに持ち込んだ。

復讐の鬼となった知盛は、最後には父清盛の悪行を振り返り、昨日の敵は今日の味方と、安徳亭を義経に託し納得して死んでゆくのだが、壇ノ浦で平家を滅ぼした大殊勲の義経さえも、今や頼朝と不仲になり落ち延びる身。運命の輪が巡る歴史の無常の中に、虚構を見事に挿入した悲劇。

切りの演目は、十世坂東三津五郎三回忌追善狂言。

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「神楽諷雲井曲毬(かぐらうたくもいのきょくまり)」 いわゆる「どんつく」

舞踊劇だが全面に出て狂言回しの役をする、荷持どんつくを三津五郎の長男巳之助。親方鶴太夫を松緑。どちらも踊りの流派の家元であるから、舞踊は流暢であるが、神楽というのは歌舞伎の舞踊とはまた違って結構大変なのでは。。海老蔵は、夜の助六だけだと誤解していたが、この「どんつく」にも、大して見せ場ないものの、若旦那役で出演。「助六」は夜の部切りであるが、これがあるから昼の興業にも来なければならない。人気あるからと楽してサボらず、役者として精勤せよとの松竹のメッセージであろうか(笑)。

松緑が毬を使った大道芸を見せるのだが、この日は調子が悪かったか、「アレ?」っとやたらに毬を落として、逆に観客が沸く。あれはしかし確かに本職の大道芸人でも無いのだから難しいだろうなあw

彌十郎、團蔵、時蔵、魁春、彦三郎、菊五郎、尾上右近。大御所も花形も、「どんつくどんつくどんつくどんつくどどんがどん」とみんな楽しそうに賑やかに踊って面白かったのだが、床机に座って出番を待つ時の肝心の巳之助は、あんまり楽しそうではなかったのが少しだけ気になった。親父の面影でも脳裏をよぎっただろうか。江戸の風俗を偲ぶ舞踊劇。

打出し後、地下のロッカーから荷物を出して東京駅まで。大丸地下で弁当を買って新大阪行きの新幹線に乗り込む。大阪エディオン・アリーナで開催される大相撲三月場所初日の観戦が翌日に控えているのだった。忙しい(笑)

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