97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
大相撲三月場所総括 大相撲の神様はドラマを用意していた。
初日、7日目、中日、9日目と、二週連続で大阪遠征した大相撲三月場所もいよいよ終盤。さすがに最後の週は遠征予定を入れていない。

13日目金曜日は、できれば速攻で帰宅して録画をチェックしたかったのだが、どうでもよいような仕事上の宴会予定が入っている。浮世の義理を果たすためには仕方ないので参加。帰宅まで情報遮断するつもりであったが、会食中に「大相撲どうなった」などという話題が出て、皆スマホをいじりだしたので「こらアカン」と大相撲アプリで結果をチェック。

なんと稀勢の里は日馬富士に負けている。しかも、動画を見ると土俵下に落ちた後、立ち上がれず胸を押さえて痛みに悶絶状態。元々痛がる様子などまったく見せない力士が苦悶しているというのは深刻な怪我に違いない。これは心配だ。

帰宅してからもう一度NHK中継の録画をチェック。どうも激痛は土俵上で日馬富士を小手に振った時からあったようだ。土俵下に落ちた後は普通に起き上がろうとしていたが、「アレ?腕が動かない」といった顔で胸に手をやった途端にとんでもない激痛が走り「痛ててて!」と悶絶したような状況。

一夜明けた土曜日、もはや休場かと覚悟していたが、なんと稀勢の里は強行出場するとニュースが。本当に大丈夫か。

稀勢の里は15年間の相撲人生で、本場所を休場したのは1日しかない。場所前のインタビューでも辛かった事を聞かれて、「本場所を1日休んだこと」と答えた力士。15歳で入門して、相撲の事しか知らない、そんな真面目で愚直な男に「出場できるか」と聞いたら「出る」と言うに決まっている。「止めるのも師匠の仕事だぜ」と言いたいが、この逸材を育て上げた真の師匠、元横綱隆の里の鳴戸親方は既に泉下に眠っている。

しかしひょっとして隆の里は、今頃草葉の陰で、大願成就してついに横綱に昇進した愛弟子が、無理を押しても出場するという決断に、「そうだ、それでこそ横綱だ」と微笑んで頷いているのだろうか。

いずれにせよ、泣いても笑っても本場所は後二日間だけ。対戦相手も既に決まっている。出場を決めたなら後先はもう考えず、ドーンとぶちかましてゆくしかない。亡き師匠のご加護だってあるだろう。稀勢の里よ、頑張れ!

14日目の横綱土俵入り、稀勢の里が入場すると会場は怒涛の歓声と拍手が嵐のよう。なんとしてでも責任を果たそうとする新横綱の姿に胸が熱くなる。テーピングは肩から左腕まで。心配していた大胸筋の断裂ではないようだ。土俵入りで手は高く揚がるものの、いつもバチーンと大きな音で勢いよく打つ柏手は、おそるおそるといった状態で手を合わせるのみ。やはり腕に痛みがあるのだ。

対戦は結びで鶴竜と。鶴竜も大怪我した相手では相撲を取りづらかっただろう。稀勢の里に右で顔を張られながらも、右でのおっつけやはず押しなどの稀勢の里の左を狙うエグい技は使わず、スッと二本差して淡々と寄り切った。稀勢の里の左肩にあまり負担無いように勝とうとしていた印象。土俵際でも力を抜いて身体が土俵の下に落ちないよう、取り口が心優しかった。しかし、稀勢の里の怪我は酷く、まったく相撲にはならなかったのは、予想していたこととはいえ衝撃的。

十四日目には、もうひとつ、結果的に今場所の優勝の行方を左右した重要な一番があった。8勝5敗。五月場所で大関復帰するにはもう後一番も負けられない琴奨菊に対して、照ノ富士が立合い大きく変化して、琴奨を転がした一番。

観客席はどよめき、怒号が飛んだ。大阪の客は大一番での変化が嫌いだ。優勝インタビューで「変化して勝って嬉しいんか!」と怒号が飛んで白鵬を泣かせたのも昨年の大阪場所。NHKのTV中継はあまり野次が聞こえないように音声を調整しているのではと思うが、次の一番を取った日馬富士が「照ノ富士への野次が酷くて集中できなかった」と述べており、そのせいか可哀想に玉鷲に負けてしまった。騒然とした会場の雰囲気がよく分かる話。

照ノ富士はこの琴奨菊戦で観客を敵に回し、千秋楽の会場でも、怒涛の如き応援は全て稀勢の里に向けられたように思えた。四面楚歌の気分だったことだろう。

千秋楽朝のニュースで稽古場に下りた稀勢の里の写真が掲載されたが、左腕には青黒いアザが。、左上腕二頭筋の部分的な断裂か。だとすると左で廻しを引きつけるのは無理だ。厳しいなあ。

TV観戦していたが、こんなに心が浮き立たない千秋楽もあまり例が無い。昨日の相撲からみると、稀勢の里は照ノ富士の寄りに、呆気なく土俵を割って照ノ富士が優勝。そして優勝インタビューでは昨日の相撲を忘れていない観客の怒号や野次が飛んでウンザリさせられるのではと思っていたから。

12連勝して優勝が射程に入ってきた新横綱が13日目に大怪我。大相撲の神様も実に残酷な事をなさる。そう思っていたのだが、まさかあんな結末が用意されていたとは。大相撲の神様、誠に申し訳ございませんでした(笑)

土俵入りの時から稀勢の里は実に落ち着いた表情。やれることを全力でやりきるしかないと心に決めていたのだろう。反面、照ノ富士は表情に精彩が無かった。やはり昨日の琴奨菊に引導を渡した一番の変化で、会場から厳しい罵倒を浴びせ掛けられた影響もあっただろう。千秋楽の会場は照ノ富士にはオールアウェイの雰囲気。

本割の一番は、稀勢の里が左に大きく動いて照ノ富士の動きを組み止め、痛む左をなんとかこじ入れようとしつつ、最後は寄って来た照ノ富士を右に回って突き落とし。後退しない圧力があった。

優勝決定戦の一番も稀勢の里は落ち着いていた。むしろ照ノ富士のほうが居心地が悪い不安そうな表情。

勿論稀勢の里の左は入らない。両差しになって出て来る照ノ富士に対して体勢を入れ替えて捨て身の右からの小手投げ。右しか使えない状態では他に技の出しようはなかったが、これが見事に決まる。この二連勝には呆気にとられ、そして胸が熱くなった。何かが憑依したかのような鬼神の如き相撲。

新横綱の優勝は、1995年の貴乃花以来22年ぶり。如何に難しいかが分かる。先場所後の横綱昇進は甘い判断ではなかった。稀勢の里が真の横綱であることを日本全国に見せつけた涙の優勝。素晴らし過ぎるほどの達成であった。稀勢の里おめでとう!


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