97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
赤坂大歌舞伎 「夢幻恋双紙 赤目転生」を観た。
土曜日の夜は「赤坂大歌舞伎」を見物に。TBS赤坂サカス辺りは出来てから初めて来た。天候はよろしくないが、桜があちこちで満開。

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会場は赤坂ACTシアター。付近は建物が入り組んでおり、何故かやたらに行列している人が多く、最初は違う列に並びかけた。

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劇場は割とこじんまりとしている。中村座の定式幕。設備も新しく綺麗だが、椅子は席間も狭くちょっと貧弱な印象あり、歌舞伎座の座席は素晴らしいなあと再認識。

演目は、蓬莱竜太 作・演出の新作歌舞伎「夢幻恋双紙(ゆめまぼろしかこいぞうし) 赤目の転生(あかめのてんせい)」

江戸時代の貧乏長屋に住む太郎(勘九郎)は、隣に越してきた貧乏一家の歌(七之助)に恋をする。病に伏せる父親と、与太者の兄に苦労する彼女を救いたいと夫婦になった太郎は、実は気が弱く、言い訳ばかりでやる気もなく、仕事をやっても続かないダメ男。どんどん転落してゆく太郎と歌の前に歌の兄が現れ、太郎は殺される。しかし太郎が意識を取り戻すと、彼は歌と初めて出会った子供時代に戻っていた。

それ以降も太郎は転生輪廻を繰り返す。勝ち気で上昇欲と支配欲の強い男、誰にでも好かれる他人思いの控え目な男。しかし何故か歌との関係はいつも上手く行かずに彼は転生を繰り返すことになる。勘九郎は違ったキャラクターの男を見事に演じ分ける。七之助と勘九郎の息もピッタリ。猿弥、鶴松、いてうも活き活きと幼馴染の友人たちを演じる。

舞台の背景は江戸世話物。登場人物の拵えも江戸世話物。切り絵調の舞台美術は斬新。回り舞台や花道は無いのだが、建物の方が別々に動かされて組み合わされたり、客席から観客が登場するなどの趣向が目新しい。病に苦しむ父親の横で七之助が衣装を何枚か脱いで行くだけで、時間の経過と生活の転落ぶりを現す演出にも感心した。歌舞伎の立廻りや肝心な見得で打たれる「ツケ」についてはちゃんとあって、やはり歌舞伎だなあ、と満足した。

一瞬下座音楽風の三味線が鳴ったが、基本的にバックグラウンドはピアノで。嵐の雨などは現代的な効果音が録音で流れる。それでも随所に歌舞伎らしさが散りばめられた、一種のパラレルワールド、あるいはタイム・パラドックス物。

そして最後に観客は、歌と兄の関係性の本質、兄源乃助が何故眼帯をしており、太郎を執拗に殺しに来るのか、赤目を巡って運命の輪が回る転生輪廻の真相を目の当たりにする事になる。エンディングがオープニングへとループする実に印象的な演出。

赤目と共に回る因果と転生に、「バタフライ・エフェクト」も思い出した。新作歌舞伎というのは、歌舞伎であって狭義の伝統歌舞伎ではない。しかし何事も受け入れるという根本の進取の精神において、やはり歌舞伎の本質を受け継いでいるのだった。歌舞伎好きでなくてもまったく問題無く楽しめる劇でもある。

終演しても観客は通常の演劇のように当たり前のように帰らず、拍手を続け、カーテンコールは3回あったかな。しかし、大向うは無かった。無くてもまったく違和感は無かった。まあ新作だと要らない気もするよねえ。




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