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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座、四月大歌舞伎昼の部
日曜日は、歌舞伎座四月大歌舞伎、昼の部に。小雨が降っているので面倒になり、タクシーで歌舞伎座横まで乗りつける。

四月大歌舞伎は発売日をスッカラカンに失念しており1週間前に戻りで取った花道脇の席。

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花道の出入りは迫力あるけれども、舞台中央はちょっと遠いか。おまけに座高に底力ある着物姿の中年女性が斜め前の席だったので、役者が中央に立つと演技は見えない。まあこればっかりは運ですな。

最初の演目は、満開の桜が美しい舞踊劇、「醍醐の花見(だいごのはなみ)」。栄華の絶頂の秀吉が、京都醍醐寺に桜の樹を700本も各地から運ばせて、実際に開いた花見の大宴が題材。

前の日に桜を観に行ったこともあり、舞台に咲き誇る満開の桜はちょうど今の季節にピッタリ。鴈治郎は体型が福々しいから栄華を誇る役によく似合う。

秀吉の側室同士が恋のさや当てをしながら、次々に舞を披露するのだが、舞踊の最中も全員がゆるゆると酒を酌み交わすという祝宴の目出度い演出。しかし、最後の部分では秀吉の最期を暗示する、咲き誇る桜の陰には隠れた死のイメージが。実際の史実でもこの祝宴の後に秀吉は没したという。壱太郎、尾上右近がなかなか印象的。


30分の幕間は花篭で「花車膳」。

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次の演目は、「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」

「追駈け」から出るのは珍しいらしいが、「地蔵前」と続くこの場面での隼人は、真面目さは伝わるが、可笑しさはあんまり伝わらない。この人は全体に動きがカクカクしている印象。以前何かで花道での大見得を見て、これが実に感心しなかった。その時よりも勿論進歩していると思うけれども、大男だけに軽妙な所はあんまり無いよなあ。

「油屋」「奥庭」の舞台装置は、以前、勘九郎、玉三郎で観た際には、祝祭都市伊勢の過去の栄華を納得させる豪華絢爛な印象だったが、前の舞台装置もあんなだったっけ。なんだかそんなに煌びやかに見えないのだが。桃色の暖簾は記憶にあるけれども。

染五郎はこの手の役にはよく合っている。猿之助は、仲居万野のネチネチ嫌味な所を鮮やかに演じる。上手いもんだね。油屋お紺を演じる梅枝は、いまいち印象が薄く、縁切りの場面でも、なにかサラサラと終わってしまった。私が睡魔に襲われていたのかな(笑)

20分の幕間の後で、時代物の人気狂言、「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)熊谷陣屋」。結構登場人物が多い世話物の後に、時代物の重たいのを持ってくるというのもちょっと見物には疲れる印象。

そもそもが一の谷の合戦の頃の源平の話だし、熊谷直実の陣屋は神戸の現在の生田神社辺りというから神戸出身としては親近感が沸く。背景は六甲山系だなと思ったり(まあ全然そんな感じではないのだが)

やはり何度も演じられた名作だけあって筋は良くできている。「一枝を切れば一指を切るべし」という制札一枚で主君の真意を「忖度して」(←最近また流行ってますなw)忠義のために敦盛を助け自らの子供を手にかける悲劇。日本人は昔から「忖度」が得意。勿論史実とは違うけれども昔の人形浄瑠璃作者は、このフィクションを源平の戦いに持ち込むことで、悲劇が交錯する壮大な物語を作り上げた。

集まった町人が制札を読むのはいつもの段どりだが、「弥陀六が来ている」だのどうだと言うのは初めて聞いた気がする。

何度も手掛けているだけあって、熊谷直実は、幸四郎が手慣れたもの。猿之助はここでも熊谷妻相模を熱演。一門も率いて、宙乗りもやって、女役の大役もこなすというのは実に大変だろう。女形一本でもいけるのではとも思うが、なかなか事情が許さんのでしょうな。女形で宙乗りというのもあんまり例がないだろうし(笑)

藤の方、高麗蔵も高貴さがあり相模との格の差を見せて無難に成立。染五郎の義経も似合っている。御曹司はよいよねえ。弥陀六の左團次も掌中に納めた本役。義経を昔助けたことによって平家の滅亡を招いてしまった後悔がよく分かる円熟。

熊谷最後の花道では、「高麗屋!」の大向うが嵐のよう。ただ「大当たり!」という調子乗りがいたが、あれは余計なんじゃないかな。「たっぷり!」というのも本来はかけるべきではないと聞く。まあ、大向こうは調子に乗ると失敗するのだろうなあ。

しかし、あんなに大向こうから声がかかったら、それはやはり気分が宜しくなって、さすがの幸四郎もやり過ぎるのでしょうな。大仰な泣き顔はちょっとクサいほどにくどかったかも。前回観た芝翫型が割とアッサリした切りであるから余計に花道が目立つのかな。

そういえば、大向うの中に、「鶏爺さん」が復活したような声を聞く。しかし人間、あれほど声の張りと声量が回復するものだろうか。やはり、若い世代の別人、「二代目鶏爺さん」なのだろうか。まあ、元より私も素人であるから、大向うの事情はサッパリ分からないのだが(笑)



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