97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部を観た。
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土曜日は、歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部に。奇数月は大相撲の本場所もあるので、歌舞伎観劇と日程がどうしてもコンフリクトを起こす。見物が大分遅くなってしまった。

名古屋場所の十四日目は後で録画で観戦することにして歌舞伎座へ。心配というと、碧山が負けて白鵬が勝つと歌舞伎を見ているうちに優勝が決まってしまうことだが、なんとか碧山に頑張ってもらおう(笑)

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開演時間は4時45分と普通の公演よりちょっと遅い。歌舞伎座前には4時10分頃には到着したが既に入場は始まっていた。今回は一階席に適当なところが取れず、二階席最前列を選択。写真入り筋書きを購入。

夜の部演目は、「通し狂言 駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)」

白浪五人男に出て来る日本駄右衛門を描いた作品。宝暦11(1761)年に初演された『秋葉権現廻船語』(あきばごんげんかいせんばなし)というオリジナルが存在するらしいが、長く上演が途絶えており、市川海老蔵が新たな演出陣を起用して様々な新しい趣向を取り入れた、いわゆる「復活狂言」となっている。海老蔵は3役を早変わりで演じ、どの場面も出ずっぱりで大奮闘。

豪華絢爛たる舞台背景、壮大な場面転換、アクロバティックな動き、プロジェクションによる背景、早変わり、ゾンビ、宙乗りなど、伝統歌舞伎のケレンに、新作歌舞伎や演劇の大胆な演出、ギミックを自在に詰め込み、満艦飾に賑やかな狂言。

最初の幕で多用される早変わりは、マジックでもあるミス・ダイレクションの手法で観客を欺くのだが、花道に止めた船にスッポンから移動するなど、なかなか変わった場面もあり。

古今の歌舞伎名場面をはめ込んでいる演出は面白いが、基本的に成田屋による成田屋のための狂言。海老蔵を見物する劇。海老蔵が登場するたびに場内は割れんばかりの拍手に包まれる。

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序幕から1時間たったところで最初の幕間。花篭で「文月御膳」で一杯。

この演目の見所は、なんといっても秋葉大権現の場最後、海老蔵とその長男、堀越勸玄の親子宙乗り。

秋葉権現の使いである白狐に扮した堀越勸玄が、揚幕が上がって花道を一人でトコトコ歩いて登場。四歳児には花道は結構長い。そして一旦引っ込んだ後で、いよいよ宙乗り。

宙乗りにはお涙頂戴の湿った空気は全くない。演目は悲劇の前から既に決まっていたのだから。神々しいまでの白い衣装で、不思議な静かな笑みを浮かべて、先月最愛の妻を亡くした男が花道から中空に上って行く。同じく最愛の母親を亡くした年端もいかぬその息子を腕に抱えて。実に歌舞伎的な様式美。

海老蔵は成田屋伝来の「にらみ」を見せ、勸玄も宙空を移動しながら客席に手を振り、そして何やら叫んでいる。あれは台詞なのだろうか、いや多分台本にある台詞では無いよなあ。

役者という人生、歌舞伎という世界の隔絶性と突き抜けた非日常性。歌舞伎の世界が孤高に屹立する様を、観客の我々はただ唖然として目撃する。

館内は鳴り止まない嵐のような拍手。この場に立ち会えなかった観客の分まで届くように。この日は先月亡くなった麻央夫人の月命日だったのだという。どこかできっと見守っていただろう。圧巻の宙乗りであった。

児太郎はなかなか印象的。中車は堂々たる役者ぶりで、筋書きで語っているように、確かに「歌舞伎の筋肉」が着いてきていると思わせた。

しかしこんなに拍手の多い歌舞伎座は、今まで経験したことがなかった。


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