FC2ブログ
97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
今年初。「新橋鶴八」訪問でダラダラ喋る。
金曜の夜は「新橋鶴八」で一杯。前の週にショートメッセージを送るとこの日が空いていると返事が返って来ていた。

早目の時間に入ると、既に大常連O氏が一番奥でトグロを巻いている。カウンタには他にお客なし。5時から飲んでいるらしい。だからこの日に空いていると呼んだんだな。O氏は、いつも9時半くらいまでは居るらしい。本日のカウンタは7時半まで他のお客が来ないとか。

O氏が「コロナウイルスの巣窟にようこそ」と言うのだが、確かにこのニュー新橋ビルは中国人経営のマッサージ屋や地下の居酒屋の呼び込みも中国人と、中国人比率が実に高いものなあ。

五十嵐親方によると、隣のマッサージ屋で働いていた雇われの女性は春節で故郷の武漢に帰省して、それきり帰って来てないのだとか。今頃、隔離施設のベッドに居るとしたら気の毒だが。まあ、無理して武漢から脱出して、出稼ぎに帰って来てもらっても困るけれども。しかし寿司屋が感染したら、手で握るから、あっという間にアウトブレイク。ニュー新橋ビルで感染者が出たら、ビル全体が封鎖ではないかなどと、五十嵐親方、大常連O氏と物騒な話をしながら。

お酒は「久保田」純米吟醸で始めてもらう。

裏でゴソゴソやっていると思ったら、お通しが出てきた。O氏によるとこれは最近開発した、常連にしか出ない特別な物だという。箸をつけてみると、アッ!「マグロ血合い」の煮付けじゃないか。普段なら捨てる部位だろう。五十嵐親方によると寿司には使わないが煮付けにすると美味いのだと。

「神田鶴八鮨ばなし」によると、「柳橋美家古」加藤親方の兄弟子、「千束町の親方」と呼ばれた内田市之進は、天才と呼ばれた職人で口の奢った高給取り。あちこち美味いものも食べ歩いていたが、自分が独立して店を開いたら、商売が軌道に乗るまで、飲む酒は安い泡盛、つまみは普通は捨てるマグロの血合いだけしか食わず「血合偏に泡盛と書いて内田市之進と読む」と言われたと書いてある。

大トロだ中トロだと、美味いものばかり食っていたら人間駄目になるという教訓を含んだ一品ですな。勿論、煮付けると、なんだか美味い。

生の血合は握りには使っていないと(当たりまえか)。昔シカゴで通っていた日本飯屋の親方が、韓国人経営の寿司屋に行ってマグロを注文すると血合を握ってきた。「あのな、この部位は、握りには使わないんだ」と教えると「これがうちの寿司だ。嫌なら出て行け」と言われた話も思い出した(笑)

つまみは、まずヒラメ。上品な脂。旨味もあり。ブリの腹側のブロックを切りつけているのかと思ったら、メジマグロだと。魚体の大きさは似ているがメジの腹側トロ部分は身がブリより柔らかく脂はあるもすっきりした旨味。

他のお客さんはまだ居ないので3人であれこれ雑談。五十嵐親方が、最近行われた「鶴八一門会」の話など。石丸親方を筆頭に「しみづ「新橋鶴八」以下、「まつもと」「ほしやま」まで集まるらしい。破門を解く話などしたというから、まるで「コーサ・ノストラ(血の盟約)」、「ゴッドファーザー」の如き話(笑) 「しみづ」の弟子がデンマークに今回進出したし、一門は世界へ広がる(笑) ちなみに「しみづ」出身と称して水天宮で売出し中の某店は、破門ですらなくクビだと五十嵐親方が。O氏と私以外はお客さんがいないので、他にも色々と書くのはどうかと思う話も聞いて面白かった。

ホタテは煮切りを塗って軽く炙りつまみに。磯辺焼き風に海苔も添えて。子持ちヤリイカの煮付け。個人的には、つまみには小さなヤリイカをアナゴ風に煮付けるのが好きなのだが、この店の仕事は塩味で煮付けて醤油をつけるやり方。肉厚で卵もびっしり入っているが。

タコとカツオもつまみで。カツオは鹿児島で揚がったもの。「み富」でもカツオが好きな仲卸があって年中置くと言っていたが、今頃でも南のほうでウロウロしてるカツオがあるんですな。

この辺りで握りに。普段なら5時の開店直後から握りを食する客がいるのだが、この日はつまみでダラダラやるO氏以外に他のお客はおらず、7時位にようやく酢飯を切り始める。硬めの炊き上がりながら、米の旨味を残したふっくらした酢飯だが、普段よりも若干温度が高いかな。勿論、この温度辺りが好きなお客もいるだろう。

握りの最初は昆布〆。昆布の旨味が染みたヒラメの身と酢飯の相性が実に良い。温度計で酢飯の温度を測る寿司屋もあると聞くが、いつもより若干だが温かい酢飯と合わさった種の美味さも、またあるなあとしみじみ感じた。

マグロヅケ。赤身の旨味が十分ある。仲卸は「内藤」だとか。頭を下げてようやく良いものを分けて貰うようなマグロ屋では買いたくないとか。「マグロを売り物にする寿司屋にはなりたくありません」という、師匠の現「神保町鶴八」石丸親方の哲学とちょっと似ている。

五十嵐親方によると「寿司屋で儲けるやり方は分かっている。だけど「鶴八」の暖簾を継いでいる以上、それはやらないですよ」との事。石丸親方の教えが伝わっているのは実に良い事。儲けるには、高い種を仕入れて開始時間と終了時間も設定した、おまかせのコースだけを、高い値段でやればよいのだ。

もっとも一人で仕込みから寿司の提供までやるのは大変。師匠の石丸親方も弟子を雇えと言っているが、なかなか実現していない。「鮨竹」の二番手やってるような奴なら何時でも雇いますけどねえ、などと言っていたが、これまた縁もある。

出禁になった客の話も聞いたし、せっかく横に大常連O氏もいて他の客が居ないので言っておいたのだが、ここの店はO氏が長時間滞在するので、頼まなくても長居して良いのだと了見違いをしているような一人客がたまにいる。「お好み」で頼んで長時間以上居るのは本来おかしな話。サッと腰を上げるのが粋だと思うけどなあ。

ここに来ると私も他の店よりは長い時間いるのだが、それは何時も大常連O氏の隣に座らされて、注文ができず店のペースで「おまかせ」しかないから。これは私の責任ではないのだ(笑)

赤貝は肉厚。コハダは大型を鶴八伝来の技でネットリと仕上げる。これまた酢飯との相性良し。最後はツメを塗った漬け込みのハマグリ。本家よりも若干軽めの味付けか。しかし大ぶりのなかなか良いハマグリだ。

お茶を貰う頃にもまだ他のお客さんは来ない。親方、大常連O氏とずっと雑談していて、握りに以降しても、ガリが出てないよとか、まるで居酒屋営業の如しであったが、まあ、これはこれで面白かった。6時前に入って、勘定したのは7時半位かな。ちょっと居過ぎた。大常連O氏は、まだまだカウンタ一番奥で居座る気配。年も年なのに、元気で凄いよなあ。

スポンサーサイト