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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座「二月大歌舞伎」、夜の部。
さきの土曜日は、歌舞伎座「二月大歌舞伎」夜の部。

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十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言。昼の部、夜の部に、片岡我當、秀太郎、当代仁左衛門の三兄弟とさらにその子息、松嶋屋一門の俳優が揃った公演。夜の部は短い演目が多く、バラエティに富んでいる。

最初の演目は、十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言「八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)」 湖水御座船の場

加藤清正が徳川家康から毒酒を賜ったが、豊臣秀吉への忠義を見せて生き抜いたという伝説に題材を取った一幕。十三世仁左衛門が最後に出演した名残の演目を長男の我當さんが演じる。

毒が回ってきているのだが、琴の音を愛で、更に悠々と酒を飲み、武将の品格と大きさを見せる。我當さんの右手はまだ不自由なようだが船上にしっかりと立ち、役を務める。声も以前より出ている印象。豊臣方の武将が何度も様子を見に舟で漕ぎ寄せ、元気なのを見て「はて面妖な」と首を傾げて戻って行くのが滑稽で面白い。

父の十三世が亡くなった際、松竹は営業政策として、長男の我當さんではなく人気者の三男孝夫に仁左衛門の名跡を継がせた。勿論、嬉しい訳は無かったろうが恬淡と受け入れたのは、身内で争いをしたくないという、長男としての責任感だったのではないだろうか。大病を得たが親父の追善狂言に出る事ができた。舞台では毒の回るのを隠す豪胆な武将に不自由な身体の自分を投影して。最後は大きく船が回転して客席近いところで幕切れの見得。立派に成立して万雷の拍手。

次の演目は能由来の所作事、「羽衣(はごろも)」

三保の松原の「羽衣伝説」に題材にしている。勘九郎も踊りは達者。羽衣を返してもらってからの天女は玉三郎ならではの幽玄な境地で花道の引っ込みまで観客をひきつけた。

ここで35分の幕間。花篭で芝居御膳。この日は客が何故か少なかったな。

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次は世話物。三遊亭円朝の落語を歌舞伎化した「人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)」

博打好きで宵越しの金を持たない江戸っ子だが、めっぽう善人の左官が繰り広げる人情噺のドタバタ。菊五郎はやはり下町の江戸っ子を演じると秀逸。成立は明治だが江戸生世話物の雰囲気を濃厚に残している。

吉原角海老の手代藤助を演じる團蔵は、酸いも甘いも噛み分けた男の人情を見せて好演。角海老の間では、寺嶋眞秀が登場。親父を救うために自ら身売りに来てしょげている、悲しい境遇の莟玉のお久が実に可憐に見える。立役もこなすが、若手の女形として、莟玉の今後の活躍に大いに期待。

菊五郎の左官長兵衛は、菊五郎が掌中に納めた役。娘が身を売った50両を、身投げしようとしている小間物屋の手代に投げつけてくれてやるというのは、よく考えると逆ギレした非合理な行動なのだが、世話焼きで粗忽者で根っから善人の江戸っ子というこの人物造形を菊五郎が見事に演じて成立している。

大詰めの長兵衛内の場、雀右衛門の女房お兼と菊五郎長兵衛の漫才のような喧嘩のやり取りも傑作で客席が沸く。雀右衛門は、お姫様や花魁などの色気ある役よりも、世話物で町場の女房役が合っているのではないかな。

最後は万事が上手く収まってハッピーエンド。前にも菊五郎で見たが、今回のほうがずっと面白く感じたのが不思議。

最後の演目は、「十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言」として、「道行故郷の初雪(みちゆきこきょうのはつゆき)」

上方歌舞伎の名作「恋飛脚大和往来」。「封印切」で公金横領した主人公が取り手に追われ、雪の中を故郷に落ち延びて行く「新口村」の段は歌舞伎でも有名。これを清元による所作事にしたのがこの作品。実父十三世の忠兵衛で梅川を何度も演じた秀太郎が実父を偲んで演じる。忠兵衛役は梅玉。これも風格があって上手い。秀太郎はさすがの芸力で、道行に落ちぶれ果てても、まだ匂い立つような傾城の色香をきちんと感じさせるのであった。

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