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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座、八月花形歌舞伎、第三部、第四部
コロナ禍により3月から歌舞伎座の公演は中止に。3ヶ月連続の予定だった海老蔵の市川團十郎襲名興行も含めて5ヶ月に渡る歌舞伎公演が吹っ飛んだ事になる。

しかし感染症専門家の指導を受け、歌舞伎座公演再開ならびに新型コロナウイルス感染拡大防止および感染予防対策についてにあるような感染防御策を施して、8月から歌舞伎公演が再開することに。三部と四部のチケットを試しに取ってみた。

公演時間を短くして四部制にして幕間なし。各部完全入れ替え制。幕の向こうでは、演者や関係者も各部ごとに完全入替えとなっているらしい。入り口では検温と手指消毒。チケットは係員目視の上、観客が自分で半券をもぎる。観客はマスク着用。大向うや掛け声は禁止。客席は前後左右を空けて配置。当日幕見席、桟敷席は販売なし。売店もアルコール、食事類は販売無しなどなどの対策は、大相撲両国国技館での興行と似ている。

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4日火曜日の第四部を見物。通常は開演30分前に入場開始だが、観客の「密」を避けるため40分前から入場開始。客席内での私語はお控えください、終演後は密集を避けるため規制退場を行いますなどのアナウンスは流れるが、通常の係員による声掛けは無しでパネルを観客に掲示して歩く形式。

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イヤホンガイドの貸し出しや筋書の販売も無し。入場すると演目を説明した薄いパンフレットが自由に取れるようになっている。

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販売した座席は、1800席余が800席余りとおよそ半減。しかし国技館の1/4に比べると若干座席間は詰まった感あり。もっとも当日見た限りでは2階席は結構空きがあった様子。

第四部の演目は「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」 「源氏店」の段。所謂「切られ与三」。

与三郎とお富が一目惚れで恋に落ち、与三郎が切られ、お富が身を投げる前の段はカットされている。勿論、ここはあったほうが「源氏店」での情緒の盛り上がりが良く分かるのだが、全ての演目を1時間以内にして観客の滞在を短くしようという意図とあれば仕方ない。

今月の興行はイヤホンガイドがないのだが、ネットでの観劇ポイント講座配信があり、春日八郎の「お富さん」がこの演目の歌だという事を知ってなかなか勉強になった。昔から、一体何を歌っているのか不思議に思っていたのだった(笑)

与三郎の幸四郎は、無頼な男の連れに身をやつしてはいるが、花道の出、外で蝙蝠の安を待っている所など、色気のある若旦那の素顔がふと出るのが良い。蝙蝠の安、彌十郎も軽妙で達者。

片岡亀蔵とお富役、児太郎は「ご時世ですから」とソーシャル・ディスタンスを取る演技で笑わせる。児太郎は初役だそうだが、妙に貫禄と度胸が全面に出過ぎて、仇な色気はあまり感じさせない気がするが、あれが普通の形なのかどうかは分かりかねる。お富を身請けした多左衛門、中車は「半沢直樹」の演技よりずっと大人しかった(笑)結果的にはあれよあれよと言う間のハッピーエンド。

最後はまた手ぬぐいで与三郎とお富が手を繋ぐ、ソーシャル・ディスタンスを意識した形できまって幕。観客は普通より少ないが、実に盛大な拍手がなかなか鳴り止まなかった。歌舞伎座の公演は、ほぼ半年ぶりだものなあ。

第三部は6日の木曜に取っていたのだが、5日の午前中に、第三部の舞台関係者に微熱がありPCR検査をするためこの日の第三部公演を中止する旨が発表に。演者も関係者も毎日検温しているからこそ事前に対策できたし、各部総入れ替えで消毒もするため、第四部は予定通り公演。むしろ歌舞伎座の対応がしっかりしている事が印象付けられた。

微熱のあった舞台関係者はPCR検査で陰性。チケットを取っていた6日の第三部は公演が再開。

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演目は、「吉野山(よしのやま)」。義経千本桜、狐忠信の物語「四の切」の前にある、静御前と佐藤忠信実は源九郎狐主従の「道行」を描いた煌やかな舞踊劇。

浅葱幕が切って落とされる演出が多かったと思ったが、今回は幕が普通に開くとそこは吉野山満開の桜。今年はコロナ騒動で花見もままならなかったから、舞台の桜が目に染みる。

七之助の静御前は、花道の出から凛として、かつ妖艶にも美しく、気品を持って舞台で輝く。「初音の鼓」を打つと猿之助の源九郎狐がすっぽんより登場。狐振りを交えて、静御前との舞になる。猿之助もブランクを感じさせない芯の通った動き。二人で踊る際は恋仲であるように見えてはいけないという先人の教えがあるらしいが、やはり「道行」の艶が垣間見える所がまた一興。

源平合戦の物語、音楽は清元から義太夫が加わった掛け合いに。音楽の演者は皆、黒い覆面のようなマスクをつけている。

手下を率いた猿弥演じる逸見藤太は、のり地の台詞にも、コロナ禍での楽屋落ちを含むいかにも滑稽な歌舞伎味を見せて、観客を沸かせる。立ち回りもなかなか派手。切りでは子狐の本性を現して蝶と戯れ、引き抜きで一瞬に衣装を変え、花道を狐六法で去る猿之助は実に印象的。最初から最後まで煌びやかで飽きさせない舞踊劇。

幕間無し、食事も酒も無し。七月大相撲もそうだったが、行楽的要素を排したストイックな興行。コロナ感染に配慮しながら行う興行としてはこれもまた一つの形態なのだろう。


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