97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
日本の宇宙飛行士選抜試験
「ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験」読了。2008年、日本の宇宙開発を主管する機関JAXAによって、宇宙飛行士を選抜する試験が日本で10年ぶりに行われた。その選抜の模様に密着取材したNHK記者によるドキュメント。

アメリカの宇宙開発初期の飛行士選抜を描いたノンフィクションには、トム・ウルフの名作「ザ・ライト・スタッフ」がある。米国では、初期の宇宙飛行士は、軍隊のテストパイロットを中心に、ベスト&ブライテストな人材を選抜。何事があっても動じず、沈着冷静に状況判断を行い、瞬時にして勇気ある正しい判断を下せる稀有な能力が、宇宙飛行士に必須の資質(The Right Stuff)であったのだ。

「ザ・ライト・スタッフ」で印象的なのは、初めて音速を超えたパイロット、チャック・イェーガー(彼は結局宇宙飛行士にはならなかったのだが)を始めとする軍に所属するテスト・パイロット達の物語。

巨大なジェット・エンジンを積んだ戦闘機に一人乗り込んだパイロット達は、アフター・バナーと共に天空を一気に駆け上がる。成層圏をも突き抜けて更にその先の高みに機体が届いた時、コックピットの周りからは青空も音も消え、機体をつつむのは真っ暗なバックに星が光る静寂の宇宙空間。軍のテスト・パイロットこそが、神の如く天空を自由に駆け、人類で初めて宇宙空間を一瞬にしても垣間見た人々であったのだ。このシーンは、映画化された「ザ・ライト・スタッフ」でも実に見事に再現されている。

今回の本は、日本での飛行士選抜に密着しているのだが、日本での試験は10年ぶりということもあって応募総数は史上最高の963人。その中から厳しい選抜を経て選ばれるのはたった2名。

たとえ選抜されても、宇宙に行けるのは何年先か分からない。先輩宇宙飛行士には12年待った人もいる。宇宙飛行士に選ばれても、金銭的な待遇は決してよくない。今の職を投げ打ってアメリカに移住して訓練を続け、何年も搭乗を待ち続ける必要あり。しかし、現職の飛行機パイロットや医者、エンジニア達が、宇宙への憧れから多数応募して過酷な選抜試験に臨む。

日本で最初に行われた選抜試験から、ずっと挑戦し続けているエンジニアの話が印象的。彼は最初の選抜の2次試験でうまく行かず、会場帰りにたまたま一緒になった同じく受験者の女性に「もうダメかもしれない」と弱音を吐く。その女性は、「そんなこと絶対にないよー!」「一緒に宇宙に行こうよー!」と満面の明るい笑顔で励ましてくれたのだという。この女性が、日本人女性として最初の宇宙飛行士になった向井千秋。やはりこんなポジティヴな人でないと宇宙飛行士にはなれないのだなあ。

向井に励まされたエンジニア福山は、それからも全ての選抜試験を受け続けている。もう50歳を超えた彼だが、今回の選抜も落選。しかし、向井との約束を果たすため、可能性がある限り挑戦し続けるのだという。宇宙に魅せられた人々の物語は、どれも情熱にあふれ、そして清々しい。



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