97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「The Joneses」と「Mother and Child」
サンフランシスコーサンパウロ間の機内で見た映画など。どちらも大作ではないのだが、なかなか面白かった。

「The Joneses」は、SFO-ORDの機内で。

ジョーンズというのはごくありきたりな姓で英語で「The Jones」というと、「月並みな一家」という意味なのだそうである。



裕福な層が住む郊外の町。業者によって事前に完璧に整えられた豪邸に、ジョーンズ一家がアウディの高級車に乗って引っ越してくる。美貌の妻、ハンサムな夫、そしてこれまた美男美女のティーン・エイジャーの息子と娘。

彼らは町の社交コミュニティに受け入れられ、次々と友人を増やして行くが、実際は本当の家族ではなかった。富裕層への商品のマーケティングと拡販のため、周りの人間に次々と商品をみせびらかして勧めるのが役割の、「ユニット」と呼ばれる金で雇われた偽家族だったのだというプロット。

誰もが名前で呼び合うメンバーシップのゴルフ場で、ナイス・ショットを連発して、仲間に新しいクラブを見せる夫、パーティーで冷凍食品を紹介し、コスメ関連製品を使ってみせる妻、子供達もそれぞれの仲間に、携帯やTVゲームやファッションなど、自分達が所有するガジェットをそれとなくみせびらかす。定期的に彼らが紹介する商品の売上げが調査され、彼らに下される査定。

この設定は、ちょうどジム・キャリーの「トゥルーマンショー」を引っくり返したようなもの。マーケティングのためフェイクの世界が主人公を覆う「トゥルーマンショー」に対して、この映画は、フェイクの家族が現実の世界に働きかけを行って行く。

偽家族の妻役、かつ「ユニット」のボスである、デミー・ムーアのいかにも作り物臭い美貌というのが、この虚飾の職業によくマッチして実に印象的な好演となっている。夫役は「Xファイル」に出てた男性だが、名前は何だったか。

戯画化されてはいるが、アメリカ人が新しい場所に引っ越してきて、新しいコミュニティにどのように受け入れられて行くのかが、彼らの商品売り込みを背景として丹念に描いてあって、実に興味深い。

大作ではないのだが、欲望が欲望を生むアメリカ物質文明や、アメリカの家族制度、隣人との飾り立てた交流への風刺が効いて、ラスト・シーンもカタルシスを持って印象に残る。

なかなか面白いコメディなのだが、日本公開は未定とか。現実のアメリカ・ライフを知らないと、若干面白みが減ずるところもあり、日本の映画会社は買い付けしてないのかもしれない。

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帰りのフライトで見た「Mother and Child」は、母性と養子縁組を巡る物語。日本では「愛する人」という題名でこの正月に公開予定なのだそうである。



14歳で妊娠した子供を養子として手放さざるをえなかった女性(アネット・ベニング)は、50歳を超えた今もそのことを忘れられず、誰にも心を開かずに老母と2人で生きている。

養子縁組で手放した娘(ナオミ・ワッツ)は、母を知らず、その後弁護士となるが、養子として捨てられたトラウマから、家族関係に懐疑的で、結婚せず、奔放に男達を誘い、そして捨てる。しかしその彼女もまた、上司との不倫で妊娠する事になる。

子供を授かることができず、養子縁組を受けようとする黒人夫妻、そしてその夫妻に、生まれてくる子供との養子縁組を望むなら、条件をかなえなさいと次々と要求をつきつける出産予定の黒人少女。

養子縁組の斡旋が社会に定着しているアメリカ故の設定ともいえるが、母性と子供、そして養子縁組を巡る物語は、これらの主人公の間を巡り、彼らの運命は、時には断絶し、時には交差して、物語の輪は次第に繋がってゆく。このあたりの脚本は実にお見事。

全編に渡って、ほとんど役に立つ男が出てこないという女性映画なのだが、監督のロドリゴ・ガルシアはこの手の映画がお手の物なのだとか。アネット・ベニングもナオミ・ワッツも実に美しく、そして演技が上手い。

サミュエル・L・ジャクソンは、対して印象に残らず、いったい何しに出てきたのという感じだが、元々が、黒人であれば誰でもよかったという風な、添え物な役であるから、あれはあれ以上膨らませようがないのかもしれない。

重たいテーマであるが、それぞれの登場人物の運命が交錯した上で、きちんと生への救いを与えた結末も印象的だった。


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