97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「インテリジェンス 闇の戦争――イギリス情報部が見た「世界の謀略」100年」
Honoluluで半分読んでいたのだが、この週末に「インテリジェンス 闇の戦争――イギリス情報部が見た「世界の謀略」100年」の残り半分を読了。

著者は、諜報関連の著作が多いイギリスのジャーナリスト。今までの取材や、各国諜報機関幹部とのインタビューに基づいて、各国諜報活動の実態を描き出してみせるノンフィクション。

「イギリス情報部が見た」と副題がついているものの、扱っている組織は、CIAやKBB、モサドなど幅広い。「事実はスパイ小説より奇なり」と帯にあるが、CIA本部を自ら訪ねて寝返りを申し出てきたKGB幹部やら、MI6に潜んだKGBの二重スパイ、相手国大使館地下にトンネルを掘っての秘密通信盗聴、水爆技術を盗み出したスパイなど、まるで映画に出てくるような諜報活動が、現実の世界で起こっている事実が次々に呈示されている。

各国の諜報機関が、自国権益の確保のため、時には同盟国をも欺き、水面下でどのようなつばぜり合いを演じているのか、具体的なエピソード集といった感じだが、どの話もなかなか読み応えがあった。

各国の諜報機関は時として非合法でもある汚い工作にも手を染めているのだが、そこには国際社会における自国権益を最大化するという明確な目的がある。

MI5やMI6の諜報機関要員のリクルートは、一部は軍人から、またオックスフォードやケンブリッジ等の卒業生からも行われているが(余談ながら、ジェームス・ボンドはオックスフォード卒業という設定だったな)愛国者であることがまず第一の条件。バックグラウンド・チェックも厳しく行われるが、それでもなお敵国と通じる二重スパイを完全には排除しきれていない。生き馬の目を抜く各国諜報機関の凄まじい騙しあいも興味深い。

東西の冷戦構造下では、諜報活動は基本的に欧米の白人社会を主な舞台に行われてきたのだが、9.11テロ以降は、欧米対イスラムの対テロリズム戦争という図式に。反面、中国の台頭もあり、諜報の対象や舞台が更に多極化している。

イギリスではイスラム社会に対する監視活動が強化され、アラビア語の翻訳者や通訳を増強しているが、増やせば増やすほど、隠れイスラム教徒の二重スパイを身内に抱え込む可能性が高くなるというジレンマ。中国では情報部の予算で欧米一流大学に留学する学生が大勢おり、彼らは卒業後に中国に帰らず欧米一流企業に入社し、情報を中国に流すよう勧められると書かれている。どこまで本当かは分からないものの、中国がそんな工作をやっていてもまったく不思議ではない。

しかし、様々な国が登場するものの、本書には日本がほとんど登場しないのが残念なところ。まあ、外務省ですら、相手の政府の実情を把握しておらず何の交渉もできないのが日本外交の実力。表の実力がこうなら、裏街道である諜報の世界ではもっと実力が無いのは火を見るより明らかだろう。

おそらく国際的諜報の世界では、日本の諜報力など、どの国にもまともに相手にされていない。

どこの国も自国の権益を守るためには、裏で汚い手段を使うことも含め、必死の努力をしている。本書で読む世界の諜報活動の裏側は、実に面白いのだが、日本の実力を鑑みるに、国際諜報の世界においては、赤子の手をひねるように日本の国益が損なわれ続けているのではないかと、ちょっと暗澹たる気分になるのだった。


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