97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
日本滞在寿司日記番外 Day2:六本木の割烹「小いわ」
日本滞在2日目となった土曜の夜は「しみづ」から紹介をしてもらった六本木の「割烹 小いわ」。六本木は守備範囲外なのでほとんど足を踏み入れないが、日比谷線六本木駅から徒歩3分。六本木の裏通りはこんな風になってるのかと興味深く歩くうちに、マンションの2階にある店の前に。小さな看板の字が達筆すぎて、これが「小いわ」かなあと一瞬思いながら扉を開ける。

ご夫妻でやられる小体な店は、カウンタ7席。一夜一回転しかしないとのこと。Webでの評判を事前に検索したところによると、小岩氏は昔「京味」で修行されたそうで、笹田のずっと兄弟子にあたるようだ。恰幅がよく、三代目若乃花(二代目貴乃花の言う「花田勝氏」ですな)にちょっと雰囲気が似ている。一見強面に見えるが、「今日は本当に寒いですねえ」と破顔一笑する笑顔は人懐こく、初回の客にもあれこれ穏やかに話しかけてくれる。奥さんも愛想よくきびきび働く。

最初にビール小瓶を飲みつつ、メニューから、一番安いおまかせ1万3千円を選択。予約すれば1万6千円から3万円までコース設定可能。値段の高いコースでは、すっぽんやマツタケなど季節の鍋が出るようだ。からすみ、口子などの珍味もアラカルトでメニューに。開店からもう二年たったとのこと。

冷酒を頼むと冷蔵庫から出してきたのは、灘の酒「仙介」純米吟醸しぼりたて。爽やかな酸味が心地よく、いくらでも飲めそうな気がする。これは危ない(笑)

最初の一品は、小さな器のこのわた茶碗むし。突き崩してこのわたを混ぜて食する。しっかり味がついており、これが美味い。次に供されるのは、煮凝りになった甘酢をかけた香箱蟹。身肉が全て外されて外子、内子と一緒に殻の中に。鋏になった前足だけは飾りとして2本皿に載せてある。これまた冬の日本海を代表する美味み。匙がつけてあるのは、最後に殻に残った外子を掬い取って食するため。殻は後に酒を入れて焼き、甲羅酒に。

3品目はあんきも。あんきもは、時としてくどい脂を感じることがあるが、ここのは脂はごく薄く、嫌味のないすっきりした旨みだけが身に凝縮している。尋ねると、塩で〆た後で蒸してかなり脂を抜いているとのこと。

次は赤むつ(ノドグロ)のお椀。上品な出汁は、味付けもごく軽く幽玄な旨みを感じるが、皮目を焼いた赤むつの身が解け崩れると、更に魚の脂の旨みが澄んだ出汁に溶け込み、旨味を加えてゆくかのよう。

店は焼き台も洗い場も全て客席から丸見えの「さらし」の商売。焼き場で時折火がはねるのか、小岩氏が、「あっちち」「熱い熱い!」と時折やたらに熱がっているのがなんだか面白い。プロは手の皮が厚くなって熱がらないと思ってたが、そうでもないのかなあ。あるいはウケを狙ってやってるのだろうか(笑)一見の店というのは、こちらも興味をもって店の細かいところまで見るから、あれこれ発見があり刺激的だ。

供されたお造りは、ヒラメ、赤貝、マグロ。青森のヒラメは上品な脂。塩昆布を乗せて食する。潮の香りがする赤貝は閖上産。マグロは赤身と中トロだが、ねっとりした旨みあり。どれも実によいものを入れている。食べログなど見ると、魚の刺身は出ず、獣肉の刺身を供しているとあるのだが、方針が変わったのだろうか。確かに刺身は、お椀や焼き物と同様和食の華だから、「うちでは置いてません」というのはやはり厳しいかもなあ。焼肉屋ではないのだし。

なんとかカレンダーとかなんとか食堂とかいう雑誌を見て、東に新しい店ができたと聞けばドッと押し寄せ、西にまた新店ありと聞くやその店を放り出して新しい店に駆けつけるような、「食い散らかすグルメ狩猟民族」にとっては、肉の刺身を供する和食店も、目先の趣向が変わってよいのだろうが、店も客と長いつきあいをしようと思ったら、やはりオーソドックスに回帰してゆくのではないかなあ。そんなことを考えながら。

焼き物は鴨、山芋の輪切りを豪快に炙ったものを添えて。詳しいことは聞き漏らしたが、醤油をムースにしたようなソースをつけて。鴨の脂が実に美味い。煮物は、かぶら、京にんじん、海老芋の炊き合わせ。風味を残してこっくりと炊き上がった野菜の滋味を引き立てる出汁。これまたよかった。

最後は炊飯土鍋で炊いたご飯と赤出汁。香ばしく、つやつやと固めに炊き上がっており、これが実に美味い。2杯目はおこげも一緒に。炊きたての美味い米の飯というのは、まさしく日本人に生まれた至福だなあ。米食文化が広範囲に広がったアジア全域を見渡しても、日本人なら日本の米を日本の炊き方で食するのが一番美味い。番茶の後で爽やかな煎茶の一服。水菓子が供された気がするが、酒が回ってたのでちょっと記憶が確かでない(笑)

全体に「新ばし 笹田」とよく似ている。修行先が一緒だからというより、和食の料理人には、叩き込まれたある種確固たる基本というものがあって、その同じDNAを感じるのではないかと思うのだが。

先付けでもう一品、酒塩で炊いた何かが出た記憶もあるのだが、これまた飲み過ぎたせいか、忘れようとしても思い出せないのであった(笑)

勘定は1万9千円。お酒の値段は若干高めのようだが、落ち着いた隠れ家のような店で、しっかりした技術に裏付けられた和食を頂く対価としては妥当と感じる。

奥さんが見送りに店外まで出てくれて、この道路に下りる階段が急なので危ないのですと語る。確かに酔っ払うとちょっと危ないような急な階段。注意してもらわなかったら、転んでいたかもしれない(笑)

実によい店であった。日本に帰国したらまた訪問しなくては。

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