97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
小津安二郎DVDボックス
先週末は雪模様であったので、金曜に「しみづ」訪問した以外は大した外出予定も無く、部屋で小津安二郎DVDボックスから昔の名作を再度チェック。

原節子が小津映画に初主演した1949年制作の「晩春」、そして同じモチーフを使い、さらにエピソードも追加して、岩下志麻で豪華にリメイクした小津の遺作、1962年制作の「秋刀魚の味」を続けて観賞。どちらも印象深い小津映画の名作。

妻を亡くした父親と、その娘の縁談を巡って、父親の心配や親娘の情愛を静かに描く。「晩春」は原節子の美しさを端正に画面に切り取り、ホームドラマにおける「小津スタイル」を確立した小津の代表作。「秋刀魚の味」の岩下志麻の美しさと、東野栄治郎、杉村春子、中村伸朗、加東大介など豪華な俳優陣に割振られた完成された端正な小津演出も見ごたえ十分。

20歳後半で既に「行き遅れる」、「まだ片付いてない」と言われて周りに心配される若い女性像というのも、やはり隔世の感あり。しかし、この映画で縁談を巡って繰り返される、「行かないのかい」、「早く行かないと」等などのセリフは、若い娘の縁談が当時はコミュニティで共有される一大関心事であったことをよく現わしている。

最近では少子化や若者の晩婚化が話題になるのだが、逆に婚活ブームを見ると、この非婚傾向は必ずしも当事者である若者の意識によるのではなく、欧米化と個人主義の進展、プライバシーの確立に伴い、若者の結婚というものが、コミュニティで共有しうる重要事ではなくなり、周りの大人があんまり熱心に見合いや結婚の世話をしなくなった影響があるのではという気もしてくる。

もちろん、実の親はそれでも子供にはうるさく言っているかもしれないが、小津映画に出てくるように、親父の友人までが寄ってたかって、「君ンとこの娘はまだ行かないのかい」、「実はいい話があるんだがね」等と娘の縁談を心配するような風潮は、世間にはもう無くなってしまったのではないだろうか。

まあ、この映画に描かれたのが、失われた古き良き日本だったといえばその通りだし、それが女性の権利や自由に配慮のない封建的世界であったといえば、それもまたその通りかもしれない。

しかし、親子の情愛や、旧友達の友情、家族の紐帯といった、どこの世界でもおそらく時を超えて普遍的であろう演出は、今でもきちんと胸を打つのだった。小津が海外で評価されたというのも、まさに得心のゆく名作。

関連記事
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
秋刀魚の味
『秋刀魚の味』は、岩下志麻が初々しくて好きです。
軍艦マーチの敬礼も印象的。
2011/02/16(水) 07:19:58 | URL | oduyasu #RtpTHa0g[ 編集]
素晴らしい名作でしたね
「君ンとこの娘はまだ行かないのかい」、「実はいい話があるんだがね」

との台詞を読むだけで、役者の声と口調がわかります。
小津監督は自分の映画のスタイルを完璧に確立した人だったと思います。

軍艦マーチは泣かせどころでもあり、笑わせどころでもある名場面であり、私もひさしぶりにこの映画をまた観たくなりました。
2011/02/16(水) 09:29:29 | URL | 九州人 #mQop/nM.[ 編集]
小津の名作でした
復興から経済成長へと移行してゆく日本の世相を端正な演出で捉えた、小津スタイルの名シーンでした。岸田今日子も良かったですね。
2011/02/16(水) 10:56:50 | URL | Y. Horiucci #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック