97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
小津の「秋日和」と下ネタ
過去日記でも書いたが、最近、自宅で時間があると、小津DVDボックスを再チェックしている。

日曜夜は一杯飲みながら、小津安二郎晩年の作、「秋日和 」を再見。

学生時代からの悪友仲間を演じるのが、佐分利信、中村伸郎、北竜二の3人組。社会的にも成功し、初老に差し掛かった彼らは、若くして亡くなった親友の美しい未亡人(原節子)に密かな思慕を寄せながら、その娘(司葉子)の縁談を世話することに。その顛末を都会的で軽妙なタッチのコメディとして描く。

出てくる俳優も、セットも、設定も、ああまたかという予定調和の小津節なのだが、安心して見ていられる静かで手堅くそして端正な演出。

映画の基本設定は、やもめの父親(笠智衆)が娘(原節子)の縁談を気にするという、1949年の名作「晩春」の母親版。「晩春」では嫁ぐ娘役だった原節子が10年を経て、今度は娘の嫁ぎ先を気にする母親役に。調べるとこの映画の時、原節子は40歳だったから、26歳の娘を持つ未亡人としてはまだ若く美しくても当然といえば当然のキャスティングなのだった。

佐田啓二や渡辺文雄、沢村貞子などの脇役陣もよいのだが、中でも一番光っているのが若き日の岡田茉莉子。美人で正義感が強く、カラっとした江戸っ子で、物怖じしない勝気な性格。とんでもない策を弄したオヤジ3人組の仕事場に単身乗り込んで行き、コテンパンにとっちめる場面が実によい。

「晩春」とは違い、基本的にコメディであるから全編に渡って笑わせる場面が多いのだが、見直してみて印象的なのは下ネタが多いこと。

料理屋のおかみとの、旦那は長生きするだろうという話、再婚を巡って繰り返される「痒いところ」の話やイモリの黒焼きの話など、どれも初老のオヤジ連の下ネタギャグ。年月を経て今見ると、割と上品にも聞こえるのだが当時の観客にとってはどうだったのだろうか。

下ネタで言うと、岡田茉莉子の実家である寿司屋で独酌のオヤジを映す場面も印象的。酒を飲みつつ「ハマグリは初手」と呟いた後、思い出したように赤貝を注文する。これは、その後、悪友3オヤジが同じ寿司屋に来た場面でも、佐分利信がトロを頼んだ後、中村伸郎が「ハマ。ハマグリだ」と頼んだ後、北龍二が「赤貝」と注文する場面でも登場人物を変えて黙示的に繰り返される。

これは司葉子の縁談に引っ掛けて、「ハマグリは初手、赤貝は夜中なり」という江戸川柳(下ネタなので興味ある方は各自御自分でググるヨロし(笑))を下敷きにした脚本なのである。それにしても、下がかった江戸川柳というのは、今で言うオヤジのセクハラネタの世界だよなあ。まあ、世の中変わらんというか(笑)

ただ、さすがに年月が経ったからか、もはや意味の分からない場面もある。母娘で食事した際、原節子がタラコの事を口にして、周りを憚るような表情を見せる。小津があえてつけた演技なのだから、きっと何か意味があるはずなのだが、これはちょっと意味不明。全体の演出からすると、原節子の母親の顔以外に、女としての顔を垣間見せるシーンではとも思うのだが。

しかしやはり、小津映画は実に面白い。小津安二郎というお釈迦様の手の上で役者が繰り広げる、ある意味破綻のない箱庭的世界なのだが、それがまた、そのリズムに慣れると見ていて実に心地よいのだ。欧米で評価されたのも、もちろん彼がフィルム上に描き出した、古今東西を問わない普遍的人間的感情もあるだろう。しかし、ある意味彼らは、小津映画に、水墨画や盆栽のような東洋的世界観を見たのではとも思うのだが。




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コメント
この記事へのコメント
ハマグリ と 海苔巻き
「麦秋」でも、ハマグリと海苔巻きが出てきますね。
佐野周二が淡島千景をからかう。

2011/03/08(火) 11:24:26 | URL | oduyasu #RtpTHa0g[ 編集]
「麦秋」のその台詞はちょっと思い出せませんでした。もう一度見ないと(笑)
2011/03/08(火) 19:52:10 | URL | Y. Horiucci #-[ 編集]
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