97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
メルトダウンは、予想されてたが。
先週末、東電が一号機でのメルトダウンを認めてから、「メルトダウン」という言葉だけが一人歩きし、恐怖を振りまいたように思える。

もちろん深刻な事態だが、しかし、このニュースの本質は、作業員が1号機の原子炉建屋内に入ることができ、水位計を補修できたため、炉心の状況がより明らかになったということ。むしろよいニュースで、炉の状態それ自体が急に悪くなった訳ではない。1号機の圧力容器底部は現在では100度以下に安定的に冷却されている。(まあ、この温度も実は計器が壊れていましたということになるとまた話が違うのだが、他の計器とも整合性があり、そんなに大きく違ってないだろう)

メルトダウンというのは専門用語ではなく俗称だが、炉心溶融と同義といってよい。東電は「燃料棒損傷」と称し続けていたが、露出して空炊きされた燃料棒が水素を発する高温になったのは確実なことから、もともと早い時期から、かなりの部分はグズグズになって既に溶融していると予想されていた。メルトダウンでしたと言われても、大した驚きではない。

しかし11日の夜の段階で既に全部溶融していたという発表については、それから圧力容器がよく壊れずに耐えていると若干の驚きを禁じ得ない。もちろん溶けた燃料はある程度格納容器に出ており、部分的には壊れているだろうが、それでも大規模な炉心貫通(メルト・スルー)は起こっていないとのこと。

メルトダウンとチェルノブイリ事故を関連付けるネットでの言論もあったが、メルトダウンは、チェルノブイリ事故の途中で起こった事象ではあっても直接の原因ではない。チェルノブイリの爆発は反応度事故での炉の暴走が主原因。軽水炉での電源・冷却材喪失事故の場合、スクラムによる停止がかかれば、再臨界に至る前にメルトダウンがまず起こる。これが今回起こったこと。そして溶けた燃料が高温で圧力容器・格納容器を溶かして沈み込んでゆき(炉心貫通・メルトスルー)、炉外の水に触れて水蒸気爆発を起こす、いわゆるチャイナ・シンドロームに結び付くことが怖いのだ。

しかし、メルトダウンと爆発は常にセットではなく、現にスリーマイル島事故ではメルトダウンは起こったが、溶けた燃料は圧力容器内にかろうじて留まり、爆発は起こっていない。チェルノブイリで起こった爆発はいわゆる「チャイナ・シンドローム」とは関係ないので、今のレベルで炉の冷却が続く限りは、メルトダウンが既に起こっていようがいまいが、爆発による大規模な放射性物質放出に結び付く可能性は少ないだろう。

そういえば、4号機爆発は使用済燃料プールの燃料棒損傷ではなく、途中から排気管を共有していた3号機からの水素逆流が原因との説も東電から出ている。これは4号機の使用済燃料が以外に健康なのではというある意味よいニュース。

東電や政府が情報を隠蔽しているという「陰謀論」もあるが、個人的には信じていない。よいニュースも悪いニュースも、脈絡なく、まるで原子炉に注入された冷却水のごとくダダ漏れに出てきているのがその証拠。情報がコントロールされていないところに意図的な遮蔽など存在するはずがないのでは。

東電も政府も、ただ混乱し、時間を浪費し、十分な解析の時間が取れず、分かった都度たとえ矛盾する情報でも、前後の脈絡を考えずにただ発表を続けているだけのように思える。

福島第一原発の現場は目先の事故対応だけで一杯一杯。例え東京から頼まれても、事故の解析に使用する正確なデータを新たに取る余裕などないだろう。計器や配管もズタズタで復旧にはほど遠い。しかし、放射線にまみれた瓦礫と建屋、更なる爆発や異常事態を心配しなければならない劣悪な環境の中で、最前線は危険を顧みず精一杯頑張っていると思う。正確な情報は大事だが、事故対応よりも情報収集を優先させる命令を出して彼らの邪魔をすることは、事故の収束を遅らせるだけだ。

今後、壊滅的な事態が起こる可能性は少ないと思うが、注水はこのまま続けるとして、原子炉の安定とダダ漏れの汚染冷却水の処理が課題。果たして行程表通り処理が進むのかどうか。

そういえば、広瀬隆は早速、「福島原発メルトダウン」という新書を出したらしい。「原子炉時限爆弾」では、一度原発事故が起きれば日本全体が壊滅すると書いてたはずだが、家族と一緒に海外に出国しなかったのか。本まで書いてる余裕があるとは。まあ、彼は原子力の専門家ではなく、期を見るに敏な、ライター兼反原発運動家だからなあ。

関連記事
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
うーん…
関西電力やスリーマイル島の原子炉は加圧水型。制御棒を上部から出し入れするタイプで,圧力容器下部は密閉されている。ところが,東京電力の福島第一は沸騰水型。下部から制御棒を出し入れする。メルトダウンが起こって高温の核燃料が落下するとこの下部構造物の溶接部分が溶ける恐れがある。現在の「水漏れ」はそのことが原因では。スリーマイル島事故と同一視はできないと思いますが。
2011/05/16(月) 23:08:24 | URL | Jack #3v1sqfKU[ 編集]
そうですね、もちろん、沸騰水型は下部に配管が密集してるようなので、メルトダウン起こすとそこが壊れますが、圧力容器底部の温度からすると、これ以上の壊れは起こらないのではないですかね。

原子炉サイトのモニタリングからも、最近は大きな放射性物質放出は無いようなので、それを信じたい気持ちです。

まあ、TMIやらフェルミ炉もそうですが、事故が収束してから、炉を空けてみると、アッという知見があるでしょうねえ。

まあ、なんにしろとりあえずの安定まで早く行き着いてほしいですが。


2011/05/17(火) 00:05:28 | URL | Y. Horiucci #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック