97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「恋愛美術館」
「恋愛美術館」読了。以前読んだ、「絶頂美術館」とよく似た題名だなと手にとってみると、同じ著者の新作であった。

画家の恋愛遍歴を、その絵に投影して読み解いてゆくという試み。古典絵画については、アトリビュートという約束事があり、様々な象徴物を知ることにより、絵画の真の意味を知ることができる。しかし、画家の恋愛史をその作品への影響として語ろうというのはなかなか面白い。

ゴッホについては、書簡集まで読んだことがあり、その伝記については承知しているのだが、その他の印象派以後の画家については、どんな生活を送ったのか、ほとんど予備知識がない。画家達の伝記集としても面白い。

表紙に使われた、モディリアーニの恋人ジャンヌは、モディリアーニが死んだ直後、お腹にその子供をかかえたまま飛び降り自殺をしている。貧困と結核に苦しめられ、生きているうちにはまったく成功を収めることができなかったモディリアー二が、なぜ人物の瞳を描かなかったかの謎。

ピカソの華麗なる成功と繰り返す女性遍歴の数々も圧巻。繰り返す恋愛と結婚。関係のある女同士をわざと鉢合わせさせてそれを見物するという悪趣味。

60歳を過ぎたピカソが一男一女をもうけたフランソワーズは40歳下。しかし収まらないピカソの浮気癖にピカソの下を去り、ピカソを捨てた女と話題に。フランソワーズが再婚した画家の仕事を、既に大成功を収めて大物になっていたピカソは執拗に妨害。夫婦仲も悪くなった頃を見透かして、ピカソはフランソワーズに復縁をもちかける。そして、フランソワーズが、今の夫との離婚とピカソとの復縁に合意した時を見はからって、ピカソは孫ほどの年齢差があり、フランソワーズより10歳若い別の女性との結婚を電撃発表する。「私の勝ちだ!」とピカソは叫んだというが、ピカソの抱えたとてつもなく深い穴のような渇望と修羅には言葉もない。自分の中にかかえた地獄の大きさを、淡々と描いて見せたような自画像。

ジェロームの「ピュグマリオンとガラアテ」は、同じく最近発行された、「中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇」の表紙にもなっており、二つの本を比較して読み比べるのも面白い。

ドガの冷徹な眼がドライに見据えた、都会に生きる絶望と貧困。天才女性彫刻家カミーユ・クローデルとロダンの関係、そして彼女を襲った狂気。モネが描いた日傘の妻に関する物語。

どのエピソードも実に興味深く、まるで短編小説を読むかのよう。来週から開催の、ワシントン・ナショナル・ギャラリー展で日本にやってくる絵画も何点か含まれている。美術展に行く前に読み返しておかないと。

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