97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「原発事故を問う―チェルノブイリから、もんじゅへ」
本棚から、昔買った、「原発事故を問う―チェルノブイリから、もんじゅへ (岩波新書)」を発見したので、再度読み返した。

著者はNHKのディレクターで、チェルノブイリを現地取材した番組の内容を本にまとめたもの。1996年が初版。私が購入して読んだのは、99年10月の版だから、おそらく読んだのも10年近く前なのでは。細かい内容はだいぶ忘れていたが、チェルノブイリ事故の悲惨さは昔読んだ時の印象のまま。

チェルノブイリ当時、ソ連邦政府は、住民のパニックと巨額の費用負担を恐れ、住民には放射能汚染情報を公開せず、事故当初に退避を行ったのは、原発隣接のプリピャチ市と30キロ圏内のみ。その他の汚染地域の住民の多くを何年にもわたって放置し、被曝させてしまった。食品に対する規制も行われておらず、ヨウ素で汚染された原乳が無規制で流通し甲状腺ガンが多数発生したのも周知の事実。国際会議では、原子炉の欠陥問題を追及されることを恐れて、運転員の操作ミスが事故の原因だと主張した。

ネットの噂やデマでは、事故から何年も経った後のソ連の測定や対応を持ち出して、今回の福島事故がチェルノブイリ級だとか、日本政府の避難基準がソ連より何倍も甘いという話が拡散されているが、この本の取材記録を読めば、明らかにチェルノブイリ事故は福島よりも激烈なものであり、その被害は広範囲にわたり、ソ連政府は住民の保護など何も考えていなかった事が分かる。当時のソ連住民には誠にお気の毒な話なのだが。

まあ、過去日記でも書いたが、1986年当時のソ連邦が日本政府より国民を大事にしたはずがない。こんなことは、データ検索するまでもなく、常識があれば誰でも自明の事なのだが。

しかし、せっかくだから記録のため、この本から興味深いエピソードをいくつか要約・紹介しておこう。

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・ソ連邦が詳細な放射能汚染地図を発表したのは事故から3年後(事故発生は1986年4月)の1989年。この時放射能汚染が避難エリアの30キロ以遠を遥かに超えて広がっていたことを、そこに住んでいた住民は初めて知らされた。

・1991年のソ連邦崩壊まで事故調査の数々の記録は機密とされており公開されていない。

・爆発した直後のチェルノブイリ4号機付近の放射線量率は、一部で毎時3万レントゲン(300Sv/h)に達した。人が1分以上いれば死に至るレベル。最初に駆け付けた消防隊員や作業員の多くが急性放射線障害で数カ月のうちに死んでいる。(公式発表で31名)

・原発から2.5キロのプリピャチ市の住民4万5千人は、事故について当初は何も知らされず、パニックを恐れた市の上層部が州と政府の指示を待ったため避難が更に遅れた。避難が始まったのは36時間後。30キロ圏内を含めて13万人が避難。

・政府の厳しい情報統制にもかかわらず事故の噂は流れ、近隣の大都市キエフでは放射線を恐れたパニックが発生。多くの住民が街を離れた。

・事故から3週間後、ソ連政府は、新しい放射線防護基準として、「放射線量は、14歳以下の子供と妊産婦は年間10レム(100mSv)、一般人は50レム(500mSv)まで許容される」と通達。(さすがに500mSvはいくらなんでも高すぎるというソ連科学アカデミー副総裁の反論があり、一般人について後に10レムに引き下げた。それでも100mSvで、平常時国際基準の100倍)

・黒鉛炉の構造的欠陥を隠したかったソ連政府は、事故原因は全て運転員の過失とIAEAに報告。急性放射性障害を生き残った運転員達は国内で訴追され有罪判決を受け投獄された。

・事故より5年後の1991年、ソ連最高会議は、1平方キロ当たりセシウム137で15キュリー以上(55.5万ベクレル/㎡)の土地に住む住民の避難を追加で新たに決定(対象は27万人)。しかし事故後ずっと該当住民達は汚染された土地に住み続けていた。この時新たに設定された避難エリアは1万平方キロを超えている過去日記にも書いたが、この55.5万ベクレル/㎡の避難エリアは、福島事故の放射線積算マップで見る限り、30キロ圏内プラス飯舘村という日本の現時点での避難条件とほぼ等しい。そして、チェルノの強制避難面積は日本の10倍以上。)

・石棺作りを含む事故処理に投入された労働者は軍人含めておよそ60万人と言われるが、作業時の線量管理はずさんで、記録は改ざんされている。実際には500mSv以上被曝した者も多く、深刻な健康被害が発生しているとも伝えられるが、正確な追跡調査は行われていない。


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しかし、こうして書きだしてみると、「福島がチェルノブイリを超えている」とか、「日本の避難基準がチェルノブイリの4倍甘い」などというネットに流れる怪しい噂は、まったく信用するに足りないデマだという確信が沸いてくる。

今回の日本政府の対応に対して、まあ結構頑張ってるじゃないかと思えてくるのも、チェルノブイリの事故の規模と、ソ連政府の対応のひどさが、あまりにも際立っているからなのだが(笑)。

日本政府や東電が国民を「殺す」ために、わざと正しい測定値を隠してるなどという、トンデモの陰謀論もネットでは広がっている。もちろん、チェルノブイリ当時のソ連政府は、旧体制を維持するためなら人民の命など、何ほどにも考えていなかっただろう。確かにそんな国。しかし、日本で同じことをやって何の益があるだろう。今回の陰謀論は、いかにも世間を知らない連中(一部のエキセントリックな学者含む)が、ネットでお互いの恐怖をぶつけ合って、増幅してるだけのように思えるのだが。

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コメント
この記事へのコメント
旧ソ連の歌
大連立になったら、民主党と自民党の議員が一緒に歌うとよいかも。

http://www.youtube.com/watch?v=pxuRvmW0G8c&feature=related
2011/06/17(金) 19:33:56 | URL | はせぴぃ #U/TPeaSU[ 編集]
マーチ風ではありますが、なんとなく寂しいトーンもある、不思議な歌ですね。
2011/06/18(土) 00:21:31 | URL | Y. Horiucci #-[ 編集]
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