97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「屍者の帝国」 伊藤計劃・円城塔
銀座教文館で平積みになっていた、「屍者の帝国」をふと手にとってパラパラ読むと、「これは当たりだ」とピンと来たのでそのまま購入。日曜の午後に一気に読了。勘は当って、久々に実に面白い本を読んだ。

この世界ではない異形のパラレル・ワールド。メアリー・シェリーの書いた「フランケンシュタイン」の怪物は実在していた。その実験から100年後、霊魂の研究が更に進んだ19世紀末のロンドンでは、死者に擬似「霊素」書込機で汎用ケンブリッジ・エンジンをインストールすることにより蘇らせ、その「屍者」を単純労働の奴隷や兵士として利用している。

最初に蘇った屍者である「ザ・ワン」の秘密を追って、英国秘密諜報員ワトソンの、ヒマラヤ、日本、アメリカへと目まぐるしく舞台を変える奇怪なイマジネーションに彩られた冒険。

フランケンシュタイン三原則、アダムの墓、プレスタージョンの伝説、進化するネクロウェアを実装された屍者達の軍隊、ヴァン・ヘルシング、狂王ルートヴィヒ2世、チャールズ・バベッジの階差機関。これでもかと詰め込まれた実に奇怪な幻想と衒学に充ち溢れた、ゴシック・ホラーSF。

「フランケンシュタイン」と、「ディファレンス・エンジン」を橋渡しする異形で魅力的な世界。「あなたの人生の物語」収載の短編、「七十二文字」も思い出した。「フーコーの振り子」をどこか思わせる部分もあり。どす黒い魅力に満ちた奇想のイルージョンを紡ぐ物語は最後に、「魂は、意識は、あるいは言語は物質化するのか」という形而上学的な問いにまで到達する。

アクションシーンの描写は生硬で、あまり写実的ではないのだが、これには理由がある。この本の記述自体が、ワトソンにお供した生ける屍である従者、フライデーの視点で書かれている事を想定しているのだ。なかなか芸が細かい。

この物語は、映画にすると凄いだろうなあ。ハリウッドはゾンビ映画の伝統があるから、動く屍の描写はお手の物。ダークで奇想天外で異形のゾンビ物SFとして当たると思うのだ。シノプシスを英語化してハリウッドに売り込んではどうか。

本作は、そもそも2009年、34歳で夭折した天才SF作家、伊藤計劃が絶筆として未完で残した「屍者の帝国」のおよそ20枚の「プロローグ」にインスパイアされ、盟友である円城塔が残りの物語を描き下ろしたのだとか。確かに「プロローグ」だけ読んでも恐ろしく深い魅力を秘めた物語。本人が完成させてれば、どんな結末に辿りついただろうか。

伊藤計劃は恥ずかしながら今まで読んだことなかった。早速Amazonに、「虐殺器官」も発注。お勧めメールの作成ロジックについては先日ボロカス書いたが、書籍を思いついた時に発注するにはAmazonは実に便利。まあ、発注したものが届いてからしばらくすると、お勧めがあります、と「虐殺器官」購入を勧めるメールが到着するだろうけどね(笑)



関連記事
スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック