97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男」
「チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男」読了。

「チャイナ・ナイン」と同じ遠藤 誉のノンフィクション。中国で生まれた日本人として文革を経験し、ネイティヴ同様の中国語を話し、中国高官にも数々の太いパイプを持つ著者。彼女が読み解いてみせる中国政治の実像は実に新鮮で興味深いもの。

この著作は「チャイナ・ナイン」でも一部触れられていたが、妻が英国人を毒殺したとして訴追され、自らも失脚した中国の政治家薄煕来を中心に据えて、その来歴や政治キャリア、そしてなぜ彼が失脚したのかの謎を探るというもの。

薄煕来の父親は革命中国建国の元老。文革の一時期投獄されたこともあったが、薄煕来は父親の後ろ盾もあって、その後中国共産党での地位を固めてゆく。次々と高い地位を求める飽くなき権力欲、人を次々陥れて固めて行く権力地盤、手段を選ばない露骨な猟官運動、そして桁の違う不正蓄財。国が成長しているということもあるだろうが、このすさまじいまでの欲望にはあっけにとられる。

もちろん中国13億人に君臨する共産党の幹部となるには普通の人間では不可能。全員がとびぬけた野心家で、もちろん地位を利用した蓄財もしているのだが、それでも絶対にやってはいけないことがある。それは中国共産党を文革の昔に戻して現体制を壊すことだ。薄煕来はチャイナ・ナインのポストに上り詰めるため毛沢東の再来になろうとし、共産党権力維持が何よりも重要な目標であるチャイナ・ナインの逆鱗に触れ、全員の総意として粛清されたのだというのが著者の示唆する結論。

表紙には前回の全人代の会場で既に失脚が明らかになり、誰からも握手一つ求められず孤立無援で席に座っていた薄煕来の絶望に満ちた表情の写真が掲載されている。果てしない欲望の果てに落ちた煉獄での絶望をとらえてなかなか印象的。

妻の英国人殺害と共に語られる、中国高官はみんな子息を海外に留学させ、その海外を拠点として不正蓄財した金のマネーロンダリングをしているという話も印象的。つい先だっても温家宝首相の何千億もの蓄財が報道されたが、中国は不正蓄財のスケールも桁が違う。

そういえば、2度アメリカ西海岸に暮らしたが、気付いたことがある。最初は90年代の中盤。2度目は2008年から2010年一杯だが、近年、サンフランシスコ・ベイエリア近郊には明らかに富裕層の中国人が増えている。郊外のチャイナ・モールの駐車場には、ベンツ、BMW、ポルシェ、レクサスなどの高級車ばかりがズラズラと停まっている。そしてこのような場所に集まる中国人は、若い世代でもお互い中国語でしゃべっており、明らかに昔からアメリカにいる中国人の2世3世ではない。米国ではお金を積めば投資家ビザが出る。中国本土の富裕層が次々に、その子息を外国に移住させ、蓄財も外国に送金しているのだろう。そこには、チャイナ・マネーを取り込もうとするアメリカの戦略も透けて見えるような気がするのだった。


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