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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
わかっちゃいるけど、やめられない!
「植木等伝~わかっちゃいるけど、やめられない!」は、昨年亡くなった植木等が生前に行ったインタビューを、戸井十月がまとめた半生記。

破天荒に生きた親父。終戦後、ジャズへの傾倒から芸能界を目指した学生時代。ハナ肇との運命的な出会い。創成期の「渡辺プロ」との関係。才能の煌きに圧倒された谷啓や青島幸男との交友。「スーダラ伝説」での見事な復活。

本人の口から飄々と語られるその人生は、波乱に富み、そして実に興味深い。
「チョイト一杯のつもりで飲んで、いつのまにやらハシゴ酒。気がつきゃホームのベンチでゴロ寝、これじゃ身体にいいわきゃないよ。わかっちゃいるけどやめられない」

このスーダラ節は、「バブル」ではなく、日本が本当に経済成長していた頃の大ヒット。ヨッパライを収容するトラ箱が警察にあり、夜中になると土産の寿司折を手に千鳥足で歩くオッサンが大勢いた頃だよなあ。

高度成長期や、植木等やクレイジー・キャッツの活躍を、リアルタイムで見た訳ではないが、能天気な「無責任男」のキャラクターは、当時の世相を映して、今でもスクリーンに燦然と輝いて残っている。

もっとも、実際の植木等は、スーダラとは逆の真面目な人間。酒も飲まない仕事人だった。

黒澤明の映画「乱」に出た時のエピソードが印象深い。黒澤組の撮影では、夕食の席も名札がついて決まっている。主役の仲代達哉や居並ぶ俳優を差し置いて、黒澤監督の目の前の席を指定された植木は、皆が敬遠するから、この席が自分にあてがわれたことに気づく。

黒澤組に君臨する黒澤「天皇」は、いつも好き放題の発言。しかし、「我々の仕事は、時間に拘束され、スタッフにも気を使わなければならない 実に寂しいもんだね」と黒澤が語った時、植木は、「好きなメンバー集めて、好きな仕事をしてるのに、何を甘ったれたことをいってるんですか」と直言し、黒澤天皇は憮然として部屋に戻ってしまったのだという。

植木は権威や権力が嫌いで、他人にも決して威張らない。映画やTVで「無責任男」を演じた彼が、実に真面目な「責任男」であったことがよくわかる話。付け人だった小松政夫の独立の段取りを自分で全て手配してやり、「もうすべて決めてある。明日からは来なくていいんだよ」と語ったという話など、植木の心優しさが分かるエピソードも随所に。

昭和20年から40年頃まで、クレイジーキャッツ全盛期を彩った人物達も、実に多才で興味深い人間多し。敗戦直後、進駐軍のクラブを回るバンドマンの生活と、コメディアンへの道が描かれた、いかりや長介の自伝、「だめだこりゃ」も思い出した。

借りた楽器で何日か練習して、そのままステージに。それでも音が鳴ってれば通用して、見よう見真似で覚えながら本番で練習。なんだか分からないうちに、そのうちなんとかなって、ムヤミに忙しく、仕事も所得もどんどん増えてゆく。いや、もちろん才能ない人間は淘汰されたに違いないのだが、こんな時代に生きるのも、なかなか面白かっただろうなあ。

しかし、日本にはもう、そんな黄金の日々は再び巡っては来ないのだろう。今ならさしずめ、中国やインド、ブラジルに、それぞれの「植木等」が誕生して、高度成長を背景に、スチャラカと「スーダラ節」を歌ってるに違いない。
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