97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「横綱」を読んだ
「横綱」読了。

第45代横綱、初代若乃花から第70代日馬富士まで、歴代の横綱へのインタビュー集。ただしインタビューは2006年から行われており、すでに物故した横綱は勿論登場していない。初代若乃花は力士にしては長命だったからなあ。

現役引退後のインタビューであり、力士全盛から引退までの軌跡を振り返る様が、人によって様々でなかなか興味深い。結局優勝することなく24歳で廃業となった双羽黒の淡々とした述懐も印象的。同期で素質では何段階も劣った北勝海が、横綱として立派な実績を残したのとは対照的な相撲人生。

大器晩成型で年取ってから横綱になった隆の里の変人ぶりも興味深い。千代の富士は同時期に活躍したライバルだが、千代の富士人気が沸騰する頃行われたご当地の北海道巡業での力士トーナメント。地元の大声援を浴びて決勝まで進出した千代の富士を、隆の里は本気を出してつり出しで破る。大きな落胆の声が上がる会場。

兄弟子の初代貴乃花に「お前、負けてやらなかったのか」と聞かれて、隆の里は、「僕は勝ちに行きました」と答える。巡業でのトーナメントは花相撲で、勝ちを譲っても八百長ではない。むしろ地元力士に「花をもたせる」のが力士の心栄え。無骨で真面目ではあるが、ちょっとKYなところがある力士だったんだなあ。

逆に相撲という狭い世界の秩序を慮るような初代貴乃花の発言は、後年、自分の息子2人が優勝をかけて対戦する前夜、弟である二代目「貴乃花」に「明日は分かってるな」と声をかけたと伝えられているエピソードを思い出させるもの。この発言は逆に若貴兄弟の間に禍根を生み、やがて花田一家崩壊へとつながってゆくのだが。

武蔵丸のインタビューも、気は優しくて力持ちの素顔を彷彿とさせるもの。右膝を大怪我して決定戦に挑んだ二代目貴乃花が鬼の形相で勝利した一番でも、怪我人相手になぜか力が入らなかった、終わった後は相撲を止めようと思ったと語るところも印象的。

相撲取りは、関取になるだけでも大出世。そして横綱とは、その地位に登り詰めたら後はもう引退しか残っていないという、栄光と苦しみが交錯する相撲界最高の地位。伝統の残る古い社会で勝負に生きた成功者達の語る人生が、実に興味深いインタビューとなって鮮やかに描かれている。










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