97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「ゼロ・グラビティ」を観た
「ゼロ・グラビティ」を観た。



スペースシャトルでハッブル望遠鏡を修理中のクルーが、ロシアの老朽衛星爆破による破片の襲来に見舞われ、シャトルは帰還不可能な損害を受け、2名以外の飛行士は全て死亡する。サンドラ・ブロック演じる科学者は、プロの宇宙飛行士でもないのに、この極限状態から果たして地球に帰還できるのか。

冒頭の宇宙空間の映像は実に素晴らしい。3Dで観たが、まさに大スクリーンで宇宙空間に自分が浮かんでいるが如く体験できる映像。

どんな危機にあっても、軽く笑いながら軽口叩いて沈着冷静なベテラン宇宙飛行士をジョージ・クルーニーが演じるのだが、この口調は、「ザ・ライト・スタッフ―七人の宇宙飛行士」に出てきた伝説のテスト・パイロット、チャック・イェーガーから、宇宙飛行士に代々受け継がれているという口調を思い出させるもの。

実質的なキャストは全編、ブロックとクルーニーの2人というずいぶんチャレンジングな映画作りだが、しかし結果として成功している。いったいこの後はどうなるのかと息を呑む、サスペンスに溢れた90分。

映画の冒頭で、「宇宙空間では音を伝えるものがない」と出てくるだけあって、音声の扱いは科学的に正確。空気の無い宇宙空間では音は伝わらない。飛行士間の無線通信の音以外は、宇宙空間の破片との衝突もまったく無音。主人公が宇宙船内の空気がある環境に入ると、船体を伝わった振動や爆発音がきちんと聞こえてくる。そして船体を切り離すと、切り離された本体の爆発音はまったく聞こえなくなる。エア・ロックが開き、船内の空気が無くなると音声が消失。そして扉が閉まり空気が再び戻ってくると音が再び聞こえてくる。なかなかキッチリ作ってあると感心。

宇宙船の中の無重力の描写も素晴らしい。シャトルの実写映像で見る通り。水滴も電気パネルがショートした火花もすべて空中を漂う。CGの進化には感心する。

しかし慣性モーメントの扱いについては若干疑問あり。地球周回軌道の自由落下状態を「無重力」とは言うけれども、別に質量がなくなる訳ではない。あんなにクルクルと勢いよく回っては、ぶつかって大怪我するのでは。エアロックのハッチも人間が掴んだ状態で、とんでもない勢いで開くが、あの加速度では取っ手をそのまま掴んで保持できる人間はいないだろう。

ジョージ・クルーニーが自分を結んでいるケーブルを自ら外すシーンも疑問。ブロックの足に絡みついたケーブルで一旦動きは止まっており、動きが止まった時点で最早宇宙船から遠ざかる加速度はゼロになっている。あそこでバックル外しても、クルーニーは遠ざからず同じ位置にいるのが正しい。ブロックがちょっと引っ張ってやれば、宇宙船に向かってゆっくり動き出すはずなのだ。

また、破片の衝突でちぎれたクレーン・レバーにバックルで縛り付けられたブロックが、バックル外すとあらぬ方向に飛んで行くが、レバーに縛り付けられて回っている状態ですでに同じレバーと同じ角運動量持ってるはずで、バックル外してもどこかに飛んでゆくのは解せない。空気の抵抗が凄まじいスカイダイビングと間違えているのでは。全体に宇宙空間での動きがドタバタして速過ぎて真実味がない。全てがスローに動く「2001」のほうがずっとリアルだった。

まあ、ともあれ、そんな微妙なアラはあるものの、隔絶された宇宙空間とそこから観る地球の美しさを体験することのできる素晴らしい映像。荒唐無稽なところもあるが、地球への帰還劇は、ずっと手に汗握り、言葉も無い圧巻。そして、生命が存在できない宇宙空間から、全ての生命を育んだ母なる美しい地球にたった一人帰還した、歓喜に満ちた最後のカタルシス。奇妙なテイストの映画ではあるが、劇場の大スクリーンで、しかも3Dで見るべき体験型映画。


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