97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「WORLD WAR Z」を読んだ
映画、「ワールド・ウォーZ」
Amazonで、
「WORLD WAR Z(上)」
「WORLD WAR Z(下)」の2冊をKindke本としてダウンロード。一度購入すれば、iPhoneでもiPadでもPCでも同じ本を共有し、前回までに読み進めた続きから読書を続けることができる便利さ。

著者のマックス・ブルックスは映画監督メル・ブルックスの息子。架空のゾンビ対応マニュアル「ゾンビ・サバイバル・ガイド」で小説デビューしたが、本書はその構想を更にふくらませ、インタビュー形式の小説に発展させたもの。

突然発生した死者をゾンビ化する疫病は、またたくまに世界に蔓延し、死者の大群が人間を襲い始める。

世界のあちこちで、都市が壊滅し、政府が転覆し、人々はゾンビに襲われ、そしてゾンビ化して人間を狩る存在になる。しかし破滅の淵まで追いつめられながら、人類は世界の各地で、ゾンビ達の掃討に向かって立ちあがる。

成功した地域も、失敗して滅んだ地域もある。ゾンビとの世界戦争にほぼ終結の光明が見えてきた時代、世界の様々な国で、ゾンビとの戦いに関与した、一般人や兵士、将軍や政治家など、あらゆる種類の人々を著者がインタビューするという体裁で、架空の物語をノンフィクション仕立てにした小説。

インタビュー集として、様々な人々が、自らの主観でゾンビとの世界大戦の悲惨と混乱を語るという着想が実にリアルで面白い。ゾンビが世界に蔓延しだした時、何が起こるかという思考実験が丹念に重ねられており、人々がそれぞれの視点で語る作品世界に深みを与えている。

映画でのストーリーとはかなり違うが、小説は小説で違った面白さあり。映画もこのようなドキュメンタリー仕立てで制作しても、奇妙なゾンビものとして立派に成立したとは思うが、そうするとブラッド・ピットが出演する見せ場が無くなってしまうからなあ。

読み終えた巻末に、「この本を着想する源となった三人」への献辞が挙げられており、そこに「スタッズ・ターケル」の名前を見つけて、「ああ、そうだったのか」と納得。

ターケルはピュリッツアー賞受賞のノンフィクション作家。特に市井の一般市民に話を聞いたインタビュー集が有名。「仕事(ワーキング)!」は、市井のアメリカ人に自分の仕事を語ってもらうというインタビュー集だが、冒頭のレンガ積み職人の話は「神田鶴八鮨ばなし」に出てくる職人話のような趣があり、今でも覚えている。

「人種問題」でも、アメリカの人種差別問題について、市井の名もなき人の本音をインタビューで聞き出す。「街では走らないようにしている。何もしてなくても警官が追い掛けてくるからさ」と語るシカゴ育ちの黒人の話や、南部で生まれ育って生粋の差別主義者だったが、ある日、「俺は金持ち白人に利用されてるだけだ」と気付いて回心したレッドネックの話、話の相手が白人だからと気を許して有色人種をボロカスに言う白人など、実に興味深いインタビュー満載だった。

マックス・ブルックスは、ゾンビとの世界大戦という架空の世界に生きた人々のインタビュー集を、スタッズ・ターケルのインタビュー集を意識してフィクションとして作り上げているのだった。

献辞の最後に名前が挙がっているのはもちろんゾンビと言えば最初に名が挙がるあの監督。

「ジョージ・A・ロメロの天才と恐怖に」





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