97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座六月大歌舞伎、夜の部再び
土曜日は、歌舞伎座六月大歌舞伎、夜の部に。

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過去ログにも書いたように、今月は既に初日夜の部に一度行ってるのだが、その時座ったのが三階A席6列24番。で、前の座席に座った男性の座高がとんでもなく高かった。また座高高い人はなぜか姿勢がよいもので、一度座ると微動だにしない。前の客の頭で舞台中央部分がまったく見えないというのはなかなか厳しい事故(笑)

一応、狂言は鑑賞できたのだが、あれでは観た事にならんなあということで、もう一度一階席を取って観る事に。エライ物入りだ(笑)

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今回の席は一階の7列21番。ここは舞台の真正面で距離も近くオペラグラスは不要。小道具でいうと、煙管で一服する時の煙までよく分かる。まあ煙が見えたからどうという事ないんだけど、それだけ舞台に近いんですな。ツウは三階席や幕見席だと言うが、素人だからやはり一階の「とちり」席位が観やすくて良いなあ。

ただ、21番は、中心線にあまりにも近く、実際には左右にもう少し外れたほうが、舞台正面の芝居は、人の頭の間から見やすい点もあるかもしれない。また座席列の真ん中は左右どちらからでも席に着くのがちょっと大変。七月大歌舞伎の席も予約したのだが、二階西側桟敷席と二階最前列。前回の「座高男」がトラウマになり過ぎて前に人が来ない席を(笑) まあもうちょっとあちこちの席からの観え具合を試してみよう。

「蘭平物狂」は三階で観た時とは迫力が格段に違う。30分に及ぶ派手な大立ち回り。孝と忠、父子の情愛がせめぎ合う大詰め。ここに蘭平を演じる四代目松緑と、その長男が三代目尾上左近を襲名する舞台であるという現実世界が重なり合う。

松緑は堂々たる声もよいが、近くで見ると眼の迫力が凄い。刃物を見ておかしくなる際の舞踊も綺麗に決まっている。そして大立ち回りも実に貫禄あって立派。

あと一年で実父の三世松緑が亡くなった年齢になるとか。父親を早く亡くした息子はその年に近づくとあれこれ複雑な感情が湧き出てくるのだろう。TV取材で「蘭平」を演じるのもこれが最後かもしれないと述べていたが、それも関連あるだろうなあ。しかし、あの凄まじい立ち回りは体力必要なのも事実。息子の眼に自分の姿を焼き付けようというような凄みも感じる舞台だった。しかしまだ老けこむ歳ではない。まだまだ蘭平役もやれるのでは。

立ち回りでは若い者が実に頑張っている。最後まで怪我なければよいが。8歳の尾上左近が切る見得にも客席からの大拍手が続く。隣の老人は、尾上左近の花道の引き上げや最後の見得を切る時に「豆音羽!」と大音声で。実際に声出してる人が横にいるなんて初めてだから、思わずまじまじと顔見ちゃったよ(笑)。一階で声かけるのはルール違反との説も聞いたが、まあおめでたい時だから別によいのかもしれぬ(笑) 近くにもう一人いたなあ声かける人。

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「蘭平物狂」最後は、尾上左近襲名の口上。菊五郎の口上は実のこもった暖かいもの。初日よりも松緑の口上がしっかり落ち着いている。8歳の御曹司は、これからグレたりもするかもしれないが、踊りや三味線や長唄を稽古して、歌舞伎の世界で生きて行くんだねえ。

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30分の幕間は、三階の食堂で一杯やる。勿論、三越地下辺りで弁当買って持って入ってもよいのだが、21番の席では左右大勢人がいて座席でゴソゴソ包み開けて弁当使うのも面倒なんだよねえ。半券持ってさえいれば自由に外に出てもよいらしいから、外に食べに出てもよいが、慌しい。三階の食堂でもゆるゆると日本酒飲んでいたら幕間はあっという間だ。

「素襖落」は、落とした素襖を隠しながらふざけて踊る、彌十郎、左團次の滑稽味が実によい。ただ太郎冠者というのは、能狂言では粗忽で間抜けな役柄であるから、幸四郎にはあんまり合ってないのでは。特に昼の部で、死に淡々と臨む大石内蔵助を演じ、午後の部で間抜けな太郎冠者を演じるというのは、なかなか切り替えが難しいと思うなあ。

「名月八幡祭」は初夏の江戸、深川の風情がよい。深川の芸者は「辰巳芸者」とも呼ばれ、気風がよく情に厚く男勝り。芸は売っても色は売らない心意気が江戸の粋を象徴したという。売れっ子の美代吉に惚れ込んだ、真面目で初心な田舎者、縮屋新助は、美代吉に翻弄され、結果的に裏切られて自我が崩壊してゆく。

もっとも美代吉も悪女という訳でもない。新助には「運命の女」だが、美代吉はいつも通り遊女らしく、計算無しに能天気に生きているだけ。所詮実直な田舎者が付き合える相手ではなかったのだ。「田舎の人にはうっかり物も言えないねえ」と開き直って笑う美代吉のセリフが、哀しきストーカーの精神を崩壊させる。吉右衛門が実に上手い。最後「わっしょいわっしょい」と担がれてゆく時の狂乱の表情は一階席ではやはり見えない。最初に三階で一度観ておいて得した気分(笑)

無人の舞台に無情な月が昇る。打ち出しとなり席を立つ観客から、「これが最後の演目というのはどうよ」という声あり。確かに陰惨で救いのないラスト。個人的にはアンチハッピーエンドの映画も好きだから大丈夫だが、明るい世話物が最後のほうが気分よく帰路につけるのは確か。もっとも最後の祭りの場面で「本水」を使うから、最後の演目にしないと片づけが大変なんでしょうな。

「蘭平物狂」の段取りが早くなったからか終演は予定より若干早い。初日は15分くらい押したから、なんだかずいぶん早く帰宅できる気がした。帰り道、現実の空にも満月。

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