97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座七月大歌舞伎 夜の部を観た
3連休最終、月曜の夜は、歌舞伎座で七月大歌舞伎 夜の部を。歌舞伎座には祝日だけあって国旗が掲揚されておりますな。

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今回の座席は二階の西桟敷席。西4の1番というところ。桟敷席側に座るのは初めてだが舞台を斜め上から見ることになる。靴を脱いで掘り炬燵形式の座席におかれた座イスに座ると前は小さな机になっており、筋書きや飲み物も置ける。一杯やりつつ鑑賞できるのは便利だなあ。

花道は、座イスにもたれると見えないが、前かがみになり首をのばせば眼下に見える。普通の席では前かがみになるのはマナー違反だが、桟敷席の場合は身を乗り出しても左右には迷惑かけないので大丈夫。ただ、花道は上から見てもあんまり面白くないかな。舞台は斜め上から見る分、案外に遠い気が。やはり初心者が一番見やすいのは一階のA3ブロックの8列前後だろうか。もっとも前に極端に座高が高いのが来ると大変な災難となるのだが。

今回の大歌舞伎は、海老蔵、玉三郎に澤瀉屋一門で座組みされたもの。10年前まで7月というと猿之助一門が歌舞伎座で興行やったものなのだとか。 「大和田常務」市川中車は歌舞伎座に初お目見え。引退するまで「三階さん」と呼ばれる役者もいるのに、ポッと来ていきなり歌舞伎座で主役張るというのは、大相撲で言うといきなり十両付け出しでデビューするようなもの。猿翁の実子と言う血のつながり。歌舞伎の世界で血統というのは大変に重い。逆に西洋的合理主義の世界ではないから、裏ではやっかまれてあれこれドロドロがあるのだろうなあと妙な同情。まあ本人が選んだ道であるから他人がとやかく言う必要ないが。

さて一番目の演目は、猿翁十種の内 「悪太郎(あくたろう)」

大酒飲みで大酒乱の悪太郎が、酩酊して引き起こすドタバタを珍妙に描く舞踊劇。澤瀉屋市川右近が、酔いどれだが憎めない愛嬌を持つ悪太郎を演じる。ハタ迷惑な酔態は、こんな酒乱が確かにいるなあと頷かされるリアルなもの。酔った風でこなす軽妙な踊りだが、よく見ると難しそうだ。鉦を叩いて念仏唱えて練り歩く修行者智蓮坊の猿弥との掛け合いも軽妙な面白味あり。

第二の演目は「修禅寺物語(しゅぜんじものがたり)」

市川中車は天才面打ちの夜叉王を演じる。健闘していると思うが、他の歌舞伎役者と比べると、若干の違和感を感じる。普通の歌舞伎役者は子供の頃から芸事を習い、子役として初舞台を踏み、「勉強なんぞいいから芸の稽古しろ」と言われて育ってきた訳で、違和感が無いのも逆におかしいと思うけれども。

中車自身もインタビューで、人と変わったことやると「独創的だ」と誉められる世界と、「それは違うな」と言われる世界の差が大きいと述べているのだが、まあ歌舞伎の型というのは本来そういうものですわな。

夜叉王が源頼家に頼まれた面を渡さないのは、死相が出て不吉だからではない。生きた顔の面にならないのが芸術家として不満なのだ。彼は家来ではないし、頼家に忠誠心など最初から持ち合わせてもいない。頼家の死を聞いた時、自分の面打ちの技は相手の運命までも移し取っていたのだ、自分は天才だと豪語する夜叉王は、芸術家の狂気を感じさせてなかなか印象的。ただ、その直後、夜叉王が、頼家をかばい瀕死の重傷を受けた実娘桂の顔を観察し写そうとする鬼気迫る場面で、場内に笑いが起こるのがちょっと困ったところ。

「顔を写させてくれ」という台詞のトーンが、それまでとは違って若干唐突なせいもあるとは思うが、天才芸術家としての夜叉王の一念の狂気が一部観客には十分伝わってなかったかもしれない。ただ「天守物語」でも、「返したくなくなった」の玉三郎の台詞に笑いが来た。普通笑うようなところではないので、まあその日の客の質によるのかもしれないが。


最後の演目は「天守物語(てんしゅものがたり)」

姫路城が舞台の泉鏡花が書いた新歌舞伎。本物の白鷺城の改修工事が完了した折でなかなかタイミングよろしいw 

天守物語は歌舞伎の鳴り物はほとんど使わないし、背景のスクリーンに青空や移りゆく雲が投影されるという、現代劇のごとき演出。天守夫人富姫 玉三郎は、幻想的な設定に妖艶で艶のある魅力が際立って印象的。亀姫演じる尾上右近との掛け合いもラブシーンを思われる濃厚さ。海老蔵の姫川図書之助の台詞回しも、長い台詞が無いせいか、妙なところなく、凛々しく爽やかな武士としてきちんと成立。美しい異形の世界に生きる者とこの世の者との夢幻の恋。

中車は脇を固める役割だが、この役の重みでは違和感なくはまっている。

最後にカーテンコールが準備されてるのはちょっとビックリ。まあ、元々歌舞伎は何でもありだからなあ。これは劇場側の演出。幕が下りても照明がずっと明るくならないから観客は拍手を続けざるをえないのだったw

幕が開き、海老玉と最後に近江之丞桃六を演じた我當さんが観客の拍手答える。我當さんの登場はヨロヨロしており、健康が心配な感じであったが、声はえらく朗々と大音声。あれは肉声ではないような気もしたが。まあ、もうそろそろ80歳ですからなあ。そして幕が降り、またまた次のカーテンコールへと。豪華な終りですなw

本日の大向こうはずいぶん少なかった。ただ、鳥を絞め殺したようなヘナチョコな声をかけるいつもの爺様は健在。しかし声も通らず、何言ってるか分からない。いつでも消えそうな声で「タァヤ~」と言ってるとしか聞こえないのだが。まあご本尊の脳内では若かった昔の堂々たる声が今でも鳴り響いてるのだろうなあ。老残と呼ぶか年功を経た味と呼ぶかは聞く人にもよるだろうが。

打ち出しは9時ちょっと過ぎ。連休最後の日でもあったし、このくらいに終わると助かるなという感じ。

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