97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「いい加減、人生録 市川左團次」
「いい加減、人生録 市川左團次」を読んだ。

四代目市川左團次の自叙伝。電子版でのみ配信。Kindleで購入してiPad Airで読んだ。そういえば最近、Kindle Fire HDめっきり使わなくなったな。

市川左團次はいきなり、「面白くないですよ、私の話なんか。今までいい加減に、何も考えずに生きてきたんですから。後で面白くなかったと文句言っても、お金は返せませんよ」と豪快にぶちかましてから語り始める(笑)

「私なんか芝居下手で何も知りませんから」と韜晦を交えて淡々と語る芸談も妙な味わいがある。市川團十郎は、市川團十郎になるため、市川團十郎というものを追い求めて大変な刻苦勉励をしなければならなかったと思うが、左團次の役者人生は色々な意味でそれとは違っている。

単純なお人よしではないと思うが、何事も割り切って恬淡として生きてきた役者人生が垣間見えて面白い。楽屋が相部屋になって、入口にどっちの暖簾かけるかで揉める役者がいるが、気がしれない。私なんか「顔をする(化粧する)」のは風呂場でも便所でも大丈夫ですよ、と気楽に語るその裏には、おそらく、歌舞伎の世界をこの年齢まで生き延びてきた左團次の、処世の秘訣が隠されてるような気もするのだった。

左團次は、歌舞伎座の公演でも重要な脇役で登場することが多いのだが、私が歌舞伎を観出してからの短い期間で印象に残っているのは、主役の粂寺弾正を演じた、五月歌舞伎座團菊祭の「毛抜」。豪快な主人公がやりたい放題やるという、実におおらかで豪放な「荒事」の雰囲気に満ちた一幕。劇中で運ばれてきたお茶を飲んだり、本人のタイプにも合っている「当たり役」のひとつ。

代々の市川左團次のエピソードや三代目が継いだ経緯、四代目である自分は三代目の実子ではなく、実の母は祇園の芸者であったことなど、名跡の継承についてあっけらかんとあれこれ語る部分も歌舞伎の世界が垣間見れて興味深い部分。

歌舞伎の舞台裏や自らの生い立ち、再婚した奥さんと犬との生活、昔の学校時代の友人との交流など、語られるエピソードは常に具体的でリアル。気楽に読めるが、実に面白い自叙伝だった。


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