97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「十二月大歌舞伎」夜の部を観た
先週の土曜日は、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」夜の部に。演目は、「通し狂言 雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)」 「市川海老蔵五役相勤申し候」とある。

市川團十郎が定めた「歌舞伎十八番」のうち「毛抜」「鳴神」「不動」と3つが出るお得な興業.。

事前に、前に購入したDVD「歌舞伎名作撰 雷神不動北山桜 毛抜・鳴神」を再びチェックして予習(笑) なにせ初心者なので、何も準備せずに行くよりも、下調べしてから舞台を観ると、理解度が深まって何倍も楽しめる気がする。 

座席は10列16番。花道にも近いし、舞台正面は角度を持って見えるので、あまり前席の頭が気にならない。片しゃぎりが鳴って、さて始まりと思ったら、まず幕内から最初に口上人形が台座と共に出て来て、演目の解説を行う。この趣向は初めて見たのだがなかなか興味深い。

序幕は割と説明的な場面だが、一応これがあるので通し狂言としてまとまりがつくという体になっている。磁石と笄のセットを与えたり、序幕に小磯が殺されて短冊を奪われる場面があったり、干ばつの説明があったりなど、「毛抜」や「鳴神」の説明になっている。

もっとも、背景説明や事情が分かったからといって、後の「毛抜」が格段に引き立つという訳でもないのだが。この段だけ抜いて上演してもよかろうという先人の演出の知恵も、もっともな気がするのだった。

幕間を挟んで二幕目「小野春道館の場」が、歌舞伎十八番「毛抜」。これは今年、歌舞伎座で左團次が粂寺弾正を演じる舞台も観た。舞台中央で他の役者がゴチャゴチャやっている時に上手でのんびりと後見に出されたお茶を飲んで一休みする場面は、十二代團十郎が演じたDVDにはないが、荒事ならではの大らかな演出。

お家騒動と姫様に降りかかった奇病という難事を、主人公、粂寺弾正がバッタバッタと好き放題に活躍して解決するという、古風でおおらかな荒事。荒事は成田屋の「家の芸」であり、海老蔵は、幕外の引込みもゆったりと見得を切って堂々たる主人公を演じる。

市川右近に関しては、白塗りのお公家様役はあまり似合わない。やはり「奴(やっこ)」顔なんだなあ。

第三幕の第二場からが、いわゆる「鳴神」。龍神を封じ込め、天下を旱魃に導いた封印を解くために、色仕掛けで海老蔵演じる鳴神上人を籠絡する雲の絶間姫を玉三郎が演じる。

TVや映画でエロ・グロにまみれた現代に観るとさほどでもないが、白雲坊、黒雲坊と掛け合いで艶かしくもエロティックな場面を語る絶間姫の「クドキ」は、江戸時代には相当観客の興奮を誘っただろう。白雲坊の亀三郎 、黒雲坊の亀寿が見せる息の合った軽妙なつっこみもお見事。素知らぬ振りで聞き耳立てていた上人が引き込まれて興奮し、庵から転がり落ちるのも頷ける(笑)

玉三郎は実に印象的。竜神を閉じ込めるという凄まじい法力を持った高僧、鳴神上人を色香で惑わしてガタガタにする魔性の女性として見事に成立している。高僧がメロメロになって堕落するという設定は、いわゆる久米の仙人の寓話にも似て、江戸時代のエロティック・コメディーなのだ。還俗した名前が「市川海老蔵」等という辺りの海老蔵の軽妙な演技も、DVDで観た九世海老蔵(11代團十郎)の演技とよく似ている。騙されたと知って憤激し、鬼神と化して絶間姫を追う、最後の花道での飛び六法も圧巻。

DVD「歌舞伎名作撰 雷神不動北山桜 毛抜・鳴神」の「鳴神」には、花道を去ってゆこうとする鳴神上人を、粂寺弾正がいきなり出てきて花道から舞台に戻す珍しい場面が入っている。これは「押し戻し」といって、これまた歌舞伎十八番に挙げられている、演目というよりもひとつの場面。この「押し戻し」があると一つの通し狂言に4つも歌舞伎十八番が入るという実に豪華な通し狂言になったのだが、舞台では鳴神上人も粂寺弾正も海老蔵が演じているので、演出上はちょっと難しかったんだなあ。

通しで上演すると、話がだんだんと拡散して訳がわからなくなってくるのだが、大詰めの派手な大立ち回りは観客を飽きさせずに実に凄い。花道で梯子を使った演出は「蘭平物狂」を思い起こすもの。最後の「不動」は、歌舞伎十八番とはいえキチンとした形が現存してないらしいが、筋書きではなくシーンを表すものらしい。最後は幻想的な演出で切りとなる。

「雷神不動北山桜」通り狂言は、海老蔵自身が五役主演で組み上げて何度も演じており、妙に上ずったり、心ここにあらずという部分が無い、なかなか堂々たる出来。成田屋の「家の芸」である荒事の魅力が随所に光る通し上演であった。

鶏を絞める時のようなヘナチョコな声をかける爺様の大向こうには気づかなかった。この日はお休みだったろうか。しかし「成田屋」という女性の声が何度か一階後方からかかる。女性の大向こうはルール違反などとも聞くが、このダイバーシティ確保の時代には考えなおしたほうがよいのでは。少なくとも鶏声の爺様よりは聞き苦しくないものなあ(笑)

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