97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座で「壽初春大歌舞伎」昼の部を観た
遅ればせながら新年明けましておめでとうございます。 もう6日。なんとか松の内にblog初更新できた(笑)

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正月休みは長いと思ったが、あっという間。年末年始は例年通りのんびり霧島で過ごして3日に帰京。空港から見る霧島連山は清々しかったな。

正月休み最終の4日は、歌舞伎座で「壽初春大歌舞伎」昼の部。本年の歌舞伎観劇始めということになる。 本日の席は花道寄りの第7列。前列には座高の高い人もおらず、舞台も花道もよく見えてストレス無し。ただ、隣席の人はとんでもなく座高が高く、またそういう人に限って小さくならず、威風堂々と背筋を伸ばしてドカーンと座っているので、後ろの人は大変な災難だったろう。まあ、こればっかりは運ですな。

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この初春は、歌舞伎座では「壽初春大歌舞伎」、大阪松竹座では「中村鴈治郎襲名披露壽初春大歌舞伎」、浅草では「新春浅草歌舞伎」、新橋演舞場では海老蔵の「初春花形歌舞伎」、国立劇場では菊五郎一座が「南総里見八犬伝」と歌舞伎の公演が目白押し。たださすがに浅草は、韓流スターの如き若手イケメン達が主演で、おじさんが観に行く感じじゃないんだよねえ。

歌舞伎座昼の部では、所謂大物は、玉三郎と幸四郎だけという、若干軽くも感じる座組だが、中村屋兄弟や染五郎が立派に主役を張る時代になりつつあるというべきか。

最初は時代物の義太夫狂言、祇園祭礼信仰記「金閣寺」。 桜が咲き乱れk豪華絢爛たる金閣が舞台。人形浄瑠璃から移した狂言だが、金閣全体が沈みこむなど色彩も舞台演出も派手に魅せる。

主役である悪漢の松永大膳は、 染五郎が演じているのだが、なかなか堂々たる押し出しで、勧進帳以降、時代物の荒事系譜につながるような立役を意識的に演じているかのよう。あの隅取りは、誰が演じてるか分からないほど凄みがある。そういえば染五郎は、二幕目で坂田金時として演じるのも「歌舞伎十八番」にも挙げられた一場面である「押し戻し」。高麗屋の世代交代計画が着々と進んでいるのか。

雪姫は「三姫」に挙げられる有名な役だというが、七之助が華麗に健気に、そして端正に演じる。美しいね。昔の作品らしく、ストーリー展開は荒く若干ダレる部分もあるのだが、どの役にも見せ場が用意されており、豪放で派手な演出を楽しむ時代物狂言。

ただ、倶利伽藍丸をかざしたところに出る龍は昔の「鳴神」のDVD映像でも見た、「エッ? あれが龍なんですか」というショボイもの。龍とはあれを使うべしという決まりでもあるのだろうかね。

松永大膳は悪役ではあるが、人気役者が演じる大役。最後に彼の奸計は頓挫するのではあるが、殺されずに、この決着は戦場でつけよう、それまでさらばさらばと三者が派手に見得を切って、時代物定番の見事な終わりとなる。悪役とはいえ主役が倒されるのはあまりめでたくないからなあ。此下東吉を演じる勘九郎 十河軍平を演じる男女蔵もそれぞれに印象的。

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ここで昼食の幕間。三階食堂花篭での「新春ほうおう膳」も、金箔あしらった黒豆に子持ち昆布、紅白なますにイクラと新春の祝い膳。いつも丹念に調理されていると感心するが、正月4日に刺身はさすがにちょっとだけ苦しいかね。悪いとまで言わないけどね。

幕間の後は舞踊劇「蜘蛛の拍子舞(くものひょうしまい)」花山院空御所の場。

七之助は今度は紫の病鉢巻をした若き武将、源頼光。妖艶な玉三郎が土蜘蛛の精、美しき白拍子としてスッポンから登場。渡辺綱役の勘九郎と共に拍子舞を演じる。蜘蛛の糸が派手に投げられるのだが、舞台に映えて綺麗なもんですな。玉三郎がスッポンに消える際にも派手に蜘蛛の糸が舞う鮮やかな演出。

スッポンから登場する葛城山の女郎蜘蛛は、人が四つん這いで演じているのだが、この造形が実に奇怪で迫力あり。再登場して鬼神の如き顔を見せる玉三郎の化粧が怪異で迫力があり。壮麗な立ち回りも見どころ。物の怪が花道を去ろうとするラスト。染五郎演じる坂田金時が登場し、物の怪を舞台に豪快に押し戻して成敗する。歌舞伎十八番にも挙げられる有名な場面「押し戻し」。これも印象的に成立していた。

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二回目の幕間にスパークリングワインを一杯。歌舞伎座内の装飾も正月風味あり。ロビーでは幸四郎の奥さんが贔屓筋と談笑。歌舞伎役者の奥さんというのも大変だ。

最後の演目は、「一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)」
   
長谷川伸の新作歌舞伎だが、有名な作品で名前は昔から知っている。「一本刀」というのは、大小二本差しの侍ではなく、一本だけ刀を差した博徒や侠客を指した言葉だったというのは知らなかった。メモメモ(笑)

幕が開いた冒頭、取手茶屋旅籠の前、仲居の役で小山三が登場して観客が沸く。ちゃんと台詞もしゃべれて元気ですなあ。舞台となった我孫子やら取手、利根川の周辺は昔は大層寂しいところだったんだろうなあと思わせる。

幸四郎演じる前半の朴訥な下っ端相撲取り駒形茂兵衛が、10年の歳月を経て、横綱になる夢は破れ、いつしかどこか青光りする凄みのある渡世人になっているという対比が演出の妙。

魁春は、貧乏ながらも同情深く優しくも気風のよい酌婦お蔦を印象的に演じている。昔受けた恩が忘れられず、お蔦を探し当てた茂兵衛が目にするお蔦の苦難。与太者を散々に叩き伏せて退治し、お蔦夫妻と子供を逃し、「これがあっしの土俵入りでござんす」と万感の思いで見送る。彼はある意味きちんと恩を受けた時の約束を果たしたのだ。

自らも貧しい酌婦が、身寄りのない素寒貧の取的を気の毒に思い、全財産入った財布やかんざしを与えて励ますというのは、世の中全体が貧乏だった時だからこそあった人情。原作の長谷川伸は赤貧の環境に育ったそうだが、その貧苦が実に印象的に物語に反映している。

錦之助は達者で、女たらしの小悪党のような役がなかなかよく似合う。

このお蔦と茂兵衛の話で思い出すのは、先日まで日経で連載していた「私の履歴書」で連載していた萩本欽一の奥さんの話。萩本欽一が浅草のストリップ小屋で売れないコメディアンとして貧乏していた頃、何くれとなく面倒を見てくれ、一緒に住まわしてくれ、旅に出る時には自分のアクセサリーを「困ったら売って何かのたしにしなよ」と手渡してくれた年上の優しい踊り子さんがいた。しかし欽ちゃんがだんだん有名になるにつれ彼女は身を引いて姿を消す。TVで大成功してスターになった欽ちゃんは、八方手を尽くしてこの「お姉さん」を探し出してプロポーズし、「もっと若くて綺麗な子と結婚しなよ」と躊躇う彼女をついに妻にして子宝にも恵まれた。萩本欽一は、「一本刀」ではなく、最初に自分が目指したコメディアンの「横綱」となり、見事に恩を返し、幸せを手に入れたのだった。あれは凄い話だった。「萩本欽一土俵入」ですな。

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正月の東京は心なしか空気も澄んでいる。富士山がシルエットになった休日最後の夕暮れを一枚。

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