97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「アメリカン・スナイパー」を観た。
先週末、「アメリカン・スナイパー」を観た。



ネットでチケットを取ると1,100円と安い。座席も何時になく埋まっている。映画の割引デイなのだそうだが、1,100円で混んだ場所で観るのなら普通料金で空いた場所のほうが良いなあ。

主人公は、イラク戦争に派遣された海軍特殊部隊シールズの射撃手。湾岸戦争の頃、呑気に隊列を組んでクウェートに進軍していたイラクの戦車部隊は、米軍の空からの徹底的な空対地攻撃であっという間に壊滅したが、民家に潜むテロリストを掃討してゆくという殲滅戦では米軍のハイテク兵器は効果が無い。地道に歩兵が展開して虱潰しに敵を排除してゆく血みどろの戦い。

映画は、ふとした事から愛国心に目覚め、射撃手としての才能が開花した主人公の、派遣された戦場と帰国した母国での生活を交互に丹念に追う。

平穏でのどかな米南部での幸せな家庭生活と、砂埃舞うイラクでの血みどろの市街戦。神の眼の如きライフル・スコープから標的に死を与える神業の如き射撃と、扉を蹴破って撃ち合う血腥い掃討戦。画面は何度も転換しながら、静かに戦場の狂気に取り憑かれて行く主人公を捉える。「アメリカの正義」が中東で増幅させてゆく憎悪。

スコープに映る女と少年が、武器を隠し持っているのなら撃たねばならない。しかしまだ武器は見えない。指示を求めた上官は淡々と無線で「Your Call(お前の判断で撃て)」と伝える。生殺与奪を全て任されたスナイパーにのしかかる恐ろしいプレッシャー。PTSDにかかるのも納得だ。

クリス・カイルを演じるブラッドリー・クーパーは、根が善良で呑気な愛国的テキサス男が、戦場に取り憑かれPTSDへと陥って行く様子を克明に演じており、実に印象的な出来。奥さん役シエナ・ミラーもよい。敵と戦う戦場でも携帯電話で家族と話ができる現代の戦争を描いた側面も実に興味深い。

事実に基づく映画だが、映画のラストまで事実をなぞっているとは正直なところ思わなかった。アカデミー賞の後で報道があったが、実在のクリス・カイルはアメリカ帰国後、自らと同じくPTSDに苦しむイラク帰還兵を助けようとする活動の中で、その帰還兵に撃たれて亡くなっている。

クリント・イーストウッド監督が、目の前にドンと投げ出してみせた、冷たく重い現実。最後まで無音のエンドロールがまた効いている。重苦しい気分で映画館を出ると、帰りは土砂降りの冷たい雨。




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