97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
四代目中村鴈治郎襲名披露[四月大歌舞伎」夜の部を観た
先週の土曜日は、「中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名披露」と銘打たれた歌舞伎座の「四月大歌舞伎」昼の部に。一月二月と大阪松竹座で襲名披露公演を打った上方歌舞伎の大名跡「がんじろはん」が「東下り」で遥々とやってくるのだ。鴈治郎を襲名した翫雀は、昨年大阪松竹座で観たが、歌舞伎座で観るのは初めてだ。

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余談ながら昔は酒も洒落た文化や文物もみんな、西のほうから江戸に「下って」きた。価値がないつまらない事を「下らない」というのはそれが由来だという。ただ上方歌舞伎というのはちょっと廃れた感あり。

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今月の上演では上手側にも仮花道が設置され、両花道の舞台。これは初めて見た。席は本花道横。

歌舞伎座入り口前には襲名挨拶の大きな看板。実に福々しい福助のような体型。今回、四代目鴈治郎襲名を機に屋号を「成駒屋」から「成駒家」に戻すと聞いて、あの体型から「吉野家」を思い出した。覚えやすいね(笑)

最初の演目は「梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)」

「石切梶原」は昨年1月の歌舞伎座公演で、同じ幸四郎で観た。その時は鶴岡八幡宮をバックに実に派手な舞台だったが、星合寺を舞台にするのが成駒家型だそうである。歌舞伎座の大きな舞台でやると若干派手さと奥行に欠ける印象あり。幸四郎は手慣れたもの。囚人の酒尽くしの口上はなかなか面白い。錦吾の六郎太夫も手堅い出来だが、梢役の壱太郎がなかなかよい。最後は、名刀が名刀であることも分かり、めでたしめでたしの結末。

20分の幕間を挟んで、襲名を祝う「芝居前」、「成駒家歌舞伎賑(なりこまやかぶきのにぎわい)」

幕が開くと、ヘナチョコな声かける何時もの大向こうの爺様がおり、「うにゃわらやー」と鳥が絞殺されるような声を出すのだが、声もかすれてか細く、いったい何言ってるかも分からない。本人の脳内では、かつて血気盛んだった頃の自分の大向こうが鳴り響いているに違いないけれども。引退勧めるものはいないのか。

江戸木挽町に、襲名披露を行う中村鴈治郎が中村鴈治郎本人として登場。菊五郎 、吉右衛門、梅玉、秀太郎、幸四郎などの大看板も賑やかに勢ぞろい。 我當さんは先日の公演を休演したようだが、息子の進之介に支えられ、泣き笑いのような顔でヨロヨロ暖簾の奥から登場。襲名披露に出るのを励みに闘病していたとのことであるが、天晴れ。歌舞伎役者は死ぬまで舞台に上がり続けるという伝統を体現した、役者の執念ですな。

吉右衛門は台詞が若干モタモタしていた感あり。まあお祝いの場に賑やかしで出てきただけなのでそれでよいけれども(笑)

両花道を使った男伊達、女伊達の「つらね」は圧巻。男伊達は自分の芸名を「左團次」「歌六」、「染五郎」とそのまま言うのだが、女伊達のほうは台詞を粋にひねって、芸名が女名前に聞こえるようにしてある。まあ確かに女伊達の格好で「孝太郎」、「東蔵」、「萬次郎」、「友右衛門」などと名乗ると興ざめするよね。本花道横の席だったので男伊達の台詞は実に迫力あり。

芝居前が終わると、舞台が転換。藤十郎を筆頭に、翫雀改め鴈治郎、扇雀、壱太郎、虎之介、壱太郎と一族3代が勢ぞろいしてめでたい襲名披露。坂田藤十郎はきちんと張りのある声が出る。台詞もちゃんと考えられており、若輩になるごとに、だんだんと短くなってゆく。なかなか盛大に盛り上がった。

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30分の幕間に「花篭」で「襲名御膳」なるもので一杯。四代目鴈治郎の名前が入った小型便箋のおみやげつき。

次の演目は、「玩辞楼十二曲の内 河庄(かわしょう)」

歴代の鴈治郎が演じてきた成駒家、家の芸。近松門左衛門作「心中天網島(しんじゅう てんのあみしま」の前半部分にあたる。

「頬かむりの下に日本一の顔」というのは、初代鴈治郎が演じた紙屋治兵衛の男ぶりを称賛した言葉だが、四代目はちょっと太りすぎで「頬かむりの下に福助の顔」という感じがする。

ヨロヨロトボトボと歩く「花道の出」が有名だが、体型が福々しすぎて、放蕩で身を持ち崩して心中を覚悟した男の悲哀がいまいち哀切を持って出ない。

主人公の紙屋治兵衛と心中を約束した遊女小春が、治兵衛女房から手紙を貰い、夫を思う妻の情にほだされて別れを決意する。別れる為死ぬのが嫌になったと語る小春に激怒する治兵衛。

話としてはよくできていると思うのだが、主人公が陰気に拗ねてグチグチグデグデやるところにカタルシスがない。色恋沙汰中心の上方和事の味と言えばその通りなんだろうが、舞台上に3人で延々とやる処など、全体に劇が歌舞伎座の大きさに負けている気が。

治兵衛が怒って脇差を障子に突き立てたところで腕をしばられると舞台が回転し、しばらく背中をずっと見せているのだが、この背中の演技部分もちょっと持ち切れないような。個人的にはあまり合わなかった。今度行く昼の部「廓文章」も、なんだか似たような雰囲気の演目だが大丈夫かな(笑)

15分の短い幕間の後、「石橋(しゃっきょう)」

「連獅子」と同様、霊山の石橋に獅子の精が現れ、紅白の激しい毛振りで踊る。小獅子は襲名披露挨拶にも登場した成駒家の御曹司二人、壱太郎と虎之介。親獅子は本来ならば鴈治郎がやればお目出度い舞踊になったと思うが、あの体型では激しい踊りは無理だよねえ。

そんな事情がどうか知らぬが、染五郎兄さんが親獅子役。染五郎は実に元気で白い毛を激しく回す回す。そして壱太郎も負けていない。花道の見得も怪異で印象的だし、毛振りの激しさといったらどうだ。あれは体幹の筋力を要する。虎之介は、一番若いのに、あんまり元気がなかった。まあ、まだ役者が本業という訳ではないからか。

この日は必要無しと判断してイヤホンガイドを借りなかったのだが、観劇そのものには支障無し。しかし、解説がないと食事後の演目で眠くなる。今度観る昼の部はどうするか。

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