97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座、「六月大歌舞伎」夜の部
先週土曜の夜は歌舞伎座「六月大歌舞伎」夜の部を。

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今月の興業の目玉は大幹部が顔を揃える「新薄雪物語」の通し上演なのだが、お昼の部が「詮議」までで一旦途切れ、夜の部で続きの「広間」「合腹」と続く。夜の部入場の際に、昼の部あらすじを書いた紙を入り口で配布していた。確かにまだ昼の部を観ていなかったり、夜の部しか観る予定なければちょっと筋書きが分からなくなる。

余計な話だが今月の「筋書」は誰が書いたか文章が大層下手で、やたらに「誰の誰をなにした誰の娘が~」と固有名詞による修飾だらけで、読んでも話がちっとも分からない。この「あらすじ」はもっと簡潔にしたようがよいと思うなあ。歌舞伎は筋書きを知って観るのが普通だから、落ちまで書いてもネタばれと言う訳でもない。

昼の部で語られるのは、恋に落ちた若き二人が陰謀に巻き込まれ、謀反の咎を受け詮議を受けるところまで。このままでは六波羅探題に捉えられて死罪に。そこでそれぞれの父親が相談して、たがいの娘と息子を交換して家に預かり、自分たちで詮議しますというところで昼の部の終り。ここまでではお話として大したカタルシスはない。

夜の部は「広間」から。物語はここから一気にテンションが高まってゆく。

息子の恋人である薄雪姫を預かった園部家では、疑いを晴らす手立てが無いことを案じ、姫を密かに落ち延びさせる事にする。泣いて嫌がる姫を、親代わりに預った我々の意見が聞けぬのかと叱咤する園部兵衛(仁左衛門)は、息子が愛した相手の命を逃がしたならば自分に咎が及ぶことを承知しながら、そうすることを決意したのだった。

そこへ交換で息子を預けた幸崎伊賀守(幸四郎)の家から刀を持った使者が来る。その伝言は「あなたの息子園部左衛門は謀反を自白したので斬首しました。この刀で娘の首も切ってください」というもの。

これを聞いて狂乱し自殺を図る奥方(魁春)。園部兵衛(仁左衛門)も血が逆流する思いで刀を見る。「俺は死を覚悟して貴様の娘を逃がしたのに、なぜ貴様は」という薄雪姫の父親、幸崎伊賀守(幸四郎)への激怒。しかし憤怒の顔で刀を見た園部兵衛がハッと何かに気づく。得心した兵衛は頷いて決意を決め、何故か晴れ晴れとした顔で裏へ入って行く。

やがて伊賀守がヨロヨロと首桶を手にして屋敷を訪れ、兵衛もまた首桶を抱えて奥の間から出てくる。「首実検は全部当人ではない」、「しかし首実検が出ると常に面白い」という「歌舞伎あるある」はまったくもって真実(笑)

伊賀守は、兵衛の息子をわざと逃がし、六波羅探題には、自分の落ち度で取り逃がしましたと申し出るつもり。既にその罪を被るために腹を切ってから兵衛の自宅に来たのだった。そして先に使者に持たせた刀は自分が切腹した際に使ったもの。武士が見れば明らかに首を切ったものではないと分かる。

そして兵衛もまたそのメッセージに気づき、既に陰腹を切ってから対面場所に現れる。無実の罪ではあるが子供たちを助けるには自分が命を落とすしかない。語り合ってはいないが、それぞれ預かった子供を無事に逃がし、腹を切った覚悟が、まさにお互いに割譜の如く一致した。その事に安堵と快哉を叫んで「三人笑い」となる。この場面は、魁春を扇の要に、仁左衛門と幸四郎が対峙し。木村庄之助が東西横綱の立合いを仕切る大相撲千秋楽の如し。死にゆく苦痛と封建の不条理を受け入れる覚悟と、しかし子供たちを助ける事ができたという親としての喜びが入り混じってたっぷりと見せるが、歌舞伎の大時代なカタルシスに溢れてまさしく圧巻。

惜しむらくは前の段「詮議」が昼の部の演目であり、「通し」とは言えず流れがブチ切れていること。続けて観たかったなあ。

もっとも、その後の段である「正宗内」は、吉右衛門、最後の所作事「夕顔棚」は菊五郎と、大看板が次々と機嫌よく演じてる訳で大変豪華な興行。「新薄雪」だけを考えるなら、観客としては昼か夜にまとめてやってもらったほうがありがたいが、これだけ大幹部揃い踏みでは、あれこれ興行としての事情もあるのだろう。

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幕間はいつも「ほうおう膳」を食していたが、今回は気が変わって「握り寿司」を頼んでみた。まあ、そんなに悪くないが、仕事した種は無し。寿司食べたければ寿司屋に行かなくては。

この日の歌舞伎座夜の部、打ち出しは8時15分。何時もこれくらい早いと良いなあ。

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