97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座 「秀山祭九月大歌舞伎」夜の部を観た
土曜日の夜は歌舞伎座に。秀山祭九月大歌舞伎夜の部、「伽羅先代萩」の通し上演。

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序幕の「花水橋」は実に短い幕で後の筋書きとあまり関係は無い。物語の題材、伊達家お家騒動の発端となった殿さまを亡きものにしようとする陰謀が描かれる。香木伽羅の木で履物を作って廓に通ったというエピソードが題名に反映しているのだが、梅玉がゆったりと雅やかで派手に放蕩をしているもののどこか品のある殿さまを演じて印象的。

5分の幕間があって「竹の間」。この前観た歌右衛門の「歌舞伎名作撰 伽羅先代萩 」 DVDでは「竹の間」は収載されていなかったが、御殿女中が大勢出る煌びやかな「奥」の風景。鶴千代君を守ろうとする政岡を陥れようとする陰謀が描かれて次の「御殿」の背景となる。菊之助の沖の井は、凛とした立ち振る舞いでなかなか印象的。子役はよく訓練されている。偉いもんである。

ここで30分の幕間。

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3階花篭で「長月御膳」。内容的には特筆すべきもの無く同じ値段なら「ほうおう膳」のほうがよいなあ。

幕間後が「御殿」。伊達藩お家騒動は有名な題材で様々な芸能で扱われており、この場面は人形浄瑠璃から逆移入されたとのこと。義太夫の語りに乗って演じる部分も多い。そういえばDVDの歌右衛門は、動きが心なしか人形浄瑠璃に寄せているような気もした。

子役二人と玉三郎だけが舞台で長時間演じる「まま炊き」は、子役もよく訓練されており丁寧にやるのだが、所々で船を漕ぐ客あり。歌舞伎での子役の発声は一本調子の甲高い声で、これは無駄な演技を排して誰にでもできるように設計されているのだとは思うが、延々と掛け合いでやられるとちょっと退屈でDVDの歌右衛門観ても何度も寝てしまった(笑)。

食物による毒殺を恐れた乳母がお茶の釜で米を炊くという場面。歌舞伎の演出として、本格のお茶の手前を見せる必要など無いとは思うが、そもそもの段取りが長いので、玉三郎の存在感あっても若干持ち切れない部分も。しかし今回の歌舞伎座では私自身は眠くならなかった。歌右衛門DVDでも米を研いだ後に水加減しないので不思議に思っていたが、あれは最初から沸いた湯に米を投入する「湯取り」で炊いているのだとはイヤホン・ガイドによる豆知識。なるほど。

その後、一子千松が主君を守るためにわざと菓子を蹴散らし、八汐に惨殺されるくだりは、大変に印象的。歌六は、憎々しげな悪女を凄みと共に演じている。義太夫の語りに乗って演じる部分も多いが、政岡の忠義と母親の心がせめぎ合う場面では、リアルさとも、伝来歌舞伎の型という様式美ともつかない、玉三郎にしかない独特の計算と感性を感じて圧巻。

「床下」は打って変わって江戸荒事の芝居。煙が出てスッポンからドロドロと怪しくも登場する吉右衛門の仁木弾正は、実に怪異で時代な大きさを感じさせ、最大級の悪玉の貫禄充分。面あかりと共に、雲間を行くが如き歩き方で消えて行く幕外の引っ込みも実に印象的。松緑の荒獅子男之助も短い登場ながらきちんと成立している。取った席が上手過ぎたがもう少し花道寄りで観たかったな。

15分の幕間挟んで「対決・刃傷」。ここでも、吉右衛門の仁木弾正は鮮やか。しかし何故か声はあまり大きく響かないね。体調の問題か。歌六は、憎々しげな逆臣側の八汐と、忠臣である外記左衛門、対象的な二役を演じて大奮闘。染五郎の細川勝元は弁舌爽やかに大逆転の評定をするのだが、カラッとし過ぎて仁木弾正と凌ぎを削る迫力には若干欠けるかな。

ただ、仁木弾正に止めを刺したものの、自らも腹を刺されて息も絶え絶えの爺様、外記左衛門に家督相続を許す書状と駕籠も用意して褒め称えるのはよいが、自分が謡うから「一差し舞いたまえ」と言うところは実にKYなひどさ(笑)。出血して重症の爺様が踊ったら死んでしまいますがな。いや、あれは結局最後幕が閉まる処で息絶えたという演出なのだろうか。

全般に渡って実に面白かった。五代目菊五郎が息子の誕生の連絡を電話で聞いた時「仁木弾正ができる顔か?」と訊いたと言うエピソードは有名だが、弾正は悪漢なるも、威風堂々として格好良い、座頭が勤める実に「おいしい」役なんですな。打ち出しは9時15分頃。変則的な幕間だったが通し上演するとやはり時間が長くかかる。



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