97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「芸術祭十月大歌舞伎」夜の部
土曜日は歌舞伎座、「芸術祭十月大歌舞伎」夜の部に。二世尾上松緑追善公演でもあり、孫の松緑が昼も夜も大きな役を演じる。

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タクシーに乗ると運転手がこの週末は随分と人出が多く、朝に高島平への客を乗せたら道路が大混雑で大変だったとの事。まあ秋の行楽シーズンという事か。運動会なども行われているはずだが、私は歌舞伎へと(笑)

夜の部開場前の歌舞伎座は普段より一段と人が多い。入場しても随分と団体と思しい人でごった返している。食事予約精算も長い列。なんだか珍しいな。秋の行楽シーズンだからか。

座席は1階A3ブロックの4列目。舞台は実に迫力を持って見える。逆に舞台を俯瞰するには近すぎる感も。席というのはどこでも一長一短あり、前に座った他の客にも影響されるので、なかなかどこが一番というのは難しい。

最初は「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)。いわゆる「阿古屋」の段。 平家残党狩りの最中、七兵衛景清の愛人、遊君阿古屋が詮議にかかる。詮議の指揮を執る重忠は、拷問を避け、阿古屋に琴、三味線、胡弓を順に弾かせその音色で詮議しようとする。いわば裁判音楽劇。

赤っ面の岩永左衛門、亀三郎は浄瑠璃人形を模した「人形振り」。人形のように動く造り物の眉と人形のような動きが面白い。ここまで徹底して模していなくても、人形浄瑠璃から移された義太夫狂言では、人形の影響ではと思える動きが時としてある気がする。秩父庄司重忠を演じる菊之助は、品格あり凛とした人物をしっかり演じているが、玉三郎が主役のこの段ではやはり脇役に過ぎない。

玉三郎花道の出と舞台正面での見得は大変に華麗で優美なもの。一番の見所、聞き所は、玉三郎が実際に、琴、三味線、胡弓を演奏する部分。正面やや下手で演奏するのだが、座った席から玉三郎がほぼ正面間近に見えて実に迫力あり。

勿論、歌舞伎役者であり楽器演奏のプロではないのは当然だが、いわゆる素人の技という範疇は優に超えている。立女形としては歌右衛門が得意にしていた役だそうだが、大変な苦労で練習するのではないか。

三味線の伴奏と合わせた琴の幽玄な音色に合わせて玉三郎の物悲しい歌が響くと、客席は咳き一つ聞こえない静寂に包まれる。そして次の楽器は三味線。昔々にエレクトリック・ギターの速弾きなど練習していた経験から類推すると、三味線は、運指とバチのピッキング(って言うのかなw)の組み合わせで何種類ものテクニックがあるようで、左手の指で弦を弾いて音を出す奏法等ギターに共通する部分もあり演奏を見るだけでも興味深い。伴奏の三味線と大部分はユニゾンで、時には掛け合いのように演奏を繰り広げる。所々ちょっとリズムを取るのに苦手な節があるようには感じるが、他の歌舞伎俳優の誰があそこまでやれようか。

最後の胡弓は伸びやかな音。ほとんどミスを感じさせない演奏で、誠に圧巻。竿を左手で回転させて弦に当てる角度を変えている奏法など、なかなか興味深い楽器だ。言葉の説明ではなく、楽器の演奏と歌そして演技だけで、阿古屋が確かに嘘をついていないと納得できる場面が成立していた。玉三郎恐るべし。他にこの演目をやる立女形が、いずれ出てくる可能性があるだろうか。

40分の長めの幕間。花篭で「神無月御膳」で一杯。松茸、銀杏、栗など秋の味を配した吹き寄せの一皿、御飯はキノコ御飯と秋の雰囲気。

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続いて「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)」。いわゆる「髪結新三」

二世松緑の追善演目。二世の当り役だった江戸の粋な小悪党、新三を孫の松緑が初役で演じる。冒頭には仁左衛門も追善供養の出演で万雷の拍手を。

当代の松緑は眼力鋭く、永代橋での番頭忠七足蹴や弥太五郎源七親分との対決では、くっきりとエッジの効いた悪党の凄みあり。反面、軽みには若干欠け、勘三郎のような、ワルなのだが人を惹きつける、粋な悪党の愛嬌や色気までは出ていない感あり。大家との軽妙な掛け合いでは、左團次のとぼけた味のほうが目立つ。元々、松緑は下剃勝奴のほうに合ってるような気もする。

勿論、まだ始まって間が無いし、この辺りはこの後修正されてゆくはず。松緑は、着物の脇見ても、緊張があったのか、随分と汗をかいていた模様。ブログ読んでも、元々が陰々滅々と考えこむ真面目な人なのではないかと思うのだが、全体として狂言そのものの面白さもあり、「髪結新三」としてきちんと成立していたと思う。

丁稚役で松緑息子の左近も登場して客席の暖かい拍手を受ける。初夏の江戸の粋を描く世話物でもあるが、カツオ売りには菊五郎御大自ら天秤棒を持って登場し万雷の拍手を。一門の松緑が爺様の追善する公演の賑わいに、興を添えるために端役のカツオ売りで出てやる。菊五郎親爺の粋な心意気ですな。

最後は髪結新三と弥太五郎源七の閻魔堂橋元での立ち回り。ここで舞台が明るくなり、いわゆる「ちょんぱ」の終わりだが、口上には移らず、そのまま立ち回りを続けるうちに幕が引かれて打ち出し。

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本日は深川辺りをブラブラ散歩。門前仲町から清澄通りを北にちょっと行くと、そこが昔の閻魔堂と閻魔堂橋があった辺り。小さな公園には「髪結新三」の一場面が描かれたパネルが。しかし、昔の閻魔堂はコンクリートになってしまったし、永代橋も巨大建築で落ちそうにないし、深川から船で鉄砲州の船宿に飲みに行くなんて風情も消え果ててしまったのではあるが。


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2015/10/05(月) 23:30:00 | | #[ 編集]
歌舞伎を観ていると、特に食事の後など、やはり眠くなる時があるものですが、さすがに四列目だと、役者とまともに目が合う距離なので眠気感じませんでしたw 阿古屋凄かったです。
2015/10/06(火) 21:24:32 | URL | Y. Horiucci #-[ 編集]
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