97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座「四月大歌舞伎」昼の部を観た。
本日は、歌舞伎座で「四月大歌舞伎」昼の部。高麗屋父子が主演する新作歌舞伎をメインにした座組。

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座席は花道寄り。ただ正面方向、斜め前前列にやたらに座高が高い細身の初老女性がおり、舞台中央に俳優が座ると何も見えない。これには悩まされた。まあ、劇場の観劇では仕方ないですな。

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最初の演目は、「松寿操り三番叟(まつのことぶきあやつりさんばそう)」

三番叟は、翁を入れて三人出てくるが、これは箱から出した人形が操られながら三番叟を踊るという趣向。能楽が元の三番叟は歌舞伎で様々なバリエーションが成立。箱から出てきた人形が踊るというのは、去年の8月納涼歌舞伎、七之助の「京人形」にも似ている。

染五郎が踊りっぱなしなのだが、生身の人間を上の糸で操られているかのように見せる舞踊のテクニックは凄い。太腿の内側の筋肉とか随分大変だよなあ。歌舞伎役者の舞踊稽古を通じた身体能力というものに感嘆。筋書によると顔の隈取は毎日変えているのだとか。踊り後見を演じる松也とも息は合っていた。人形感は充分出ていたが、空虚感まではどうかな。

二番目は、「不知火検校(しらぬいけんぎょう)」

宇野信夫が昭和35年に書いた新作歌舞伎。暫く上演が途絶えていたが、平成25年に幸四郎が復活上演し、その再演。生まれつき盲目で生まれた富の市が、自らの才覚と非情な度胸によって次々と犯罪を繰り返し、検校へと登り詰めて行くという一種のピカレスク・ロマン。

冒頭は、「親の因果が子に報い」という調子で富の市の少年時代が描かれる。幸四郎が演ずる場になると既に富の市は慇懃だが腹に一物あり、機を見るに敏な悪党。そしてその悪は次々とスケールアップして回りを巻き込んでゆく。

療治に通っていた旗本の留守に、金に困った奥方の手助けをすると見せかけて籠絡して力づくでものにする場面は、この身体的ハイディキャップのある悪党が、普通の人間よりももっと深い業を背負い、もっと深い欲望と悪の深さを持っていることを判らせる場面。

歌舞伎には、髪結新三や加賀鳶の道玄、直侍など、色気のある江戸っ子の小悪党は結構出て来て人気だが、不知火検校は凄みが一段違う。生首の次郎(染五郎)と出会って殺しの分前をやって意気投合する場面も実に印象的。

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ここで30分の幕間。花篭で「卯の花御膳」。作り置きの弁当であるから勿論制約はあるが、それでも随分と品数多く立派なもの。ただお酒も飲んで食事するのに30分というのは忙しないね。

後半の「不知火検校」では、富の市が検校へと登り詰め、犯罪スケールも更に拡大。しかし「針を打ってやろうか」などの場面では客席が沸く。愛嬌もある悪漢ではある。金のためだけに奥方になったおはん役の孝太郎は、旦那の不知火と愛人の房五郎に対する態度の変化をなかなか印象的に演じる。

最終的には不知火検校は数々の罪状でお縄に。縄をかけられて引き回される場面は、周り舞台を使った印象的な演出。ただ、不知火検校を「この人殺し!」「人非人!」と責めて石で打つ群衆役の大部屋俳優に、まったく迫力がない。

検校の権威にひれ伏していた民衆が、その権威がひっくり返ると掌を返して正義を振りかざし、石を持って検校を打つのが印象的な場面であり、だからこそ「てめえらみたいな、肝っ玉のない眼あきの能無しが、何を言ってやがる」と不知火検校が悪態をつくところが盛り上がる。群衆のリンチが盛り上がらないと最後のシーンでこの稀代の悪漢の凄みが出て来ないのだが。

大部屋俳優には、何も言わずに石だけ投げてたのが居たのはビックリ。普段はめったにセリフ無いんだから、こんなモブ・シーンこそ目立つチャンスじゃないか、なんで頑張らないんだ(笑)まあ、目立っても所詮「三階」だからどうしようもないという諦観だろうか。

切りの演目は「身替座禅(みがわりざぜん)」

小品ではあるが、ユーモア溢れる有名な松羽目物。仁左衛門は、地位も金もあり、しかし山の神が怖い大名を軽妙に演じる。逢引の後で陶然とフラフラと花道を舞台に帰ってくる風情は気品ある色気に溢れて見事に成立している。その後の、左團次演じる怖い奥方との出会いも軽妙にして面白い。立役が怖くてブサイクな奥方をやるからか、米吉も児太郎も普段より何倍も可憐に見えるなあ(笑)

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