97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」夜の部を観た
金曜夜は歌舞伎座、「團菊祭五月大歌舞伎」夜の部観劇。外は雨がポツポツと。席は花道近くのA2ブロック。中央に向かっての前列に座高高い人がおらず実に快適。こればかりはどの席取っても運だからなあ。

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最初の演目は、「勢獅子音羽花籠(きおいじしおとわのはなかご)」。そもそも曽我物に題材を取った祝祭舞踊劇だが、今回は菊之助の長男、「寺嶋和史初お目見得」という目出度いイベント事に。

菊五郎の息子菊之助が吉右衛門の娘と結婚して生まれた孫であるから、音羽屋と播磨屋が縁戚に。寺嶋和史は両方の祖父が人間国宝という、歌舞伎界にあっては正しく「Born with a silver spoon with his mouth」と呼ぶべき御曹司。歌舞伎の世界は血脈があれこれつながっており、全員が親戚みたいなものだなあ。

元々の背景は山王祭だが、菊之助に縁の深い場所ということで、神田明神に背景が変更されている。吉右衛門は29年ぶりの團菊祭出演。菊五郎と祖父同士の掛け合いあり。松緑、海老蔵も連れ舞を。鳶と手古舞の群舞。梅枝、右近、種之助などの若女形に、雀右衛門、時蔵、魁春の立女形も総出演。松也と巳之助の獅子舞もあり、実に派手で目出度い祝祭劇。大向うからも矢継ぎ早に声がかかって賑やか。

祝祭が最高潮になったラスト、梅玉に先導され、菊之助が長男を腕に抱いて花道から登場。全員揃った所で相好を崩した両祖父の口上に手締。正面に座ってしばらくは、寺嶋和史君も前を向いていたのだが、吉右衛門爺に抱かれると途端に身体の力が抜けて顔を手で隠す。やはり舞台で客席に正対するというのは、3歳に満たない子供には慣れないイベント。ご挨拶もグデグデになって名乗りは無し。しかし幕引きの直前、菊之助に抱かれると、客席のあちこちに手を振って立派にご挨拶。客席は大いに沸いていた。

二番目の演目は、「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」大川端庚申塚の場

隅田川沿いで偶々出会った同名の悪人たちが義兄弟の契を交わす一夜。菊之助のお嬢吉三は艶やかな美しい女形の衣装で登場しながら、夜鷹殺しの場では凄みのある男の声に戻る所が印象的。海老蔵のお嬢吉三、松緑の和尚吉三の「三人吉三」は、團菊祭がこの世代に引き継がれて行くという象徴的な顔合わせ。黙阿弥の七五調の台詞は、歌舞伎を離れて一般に有名になったものもあり、背景に浮かんだ朧月と共に流麗で実に印象的。

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30分の幕間に花篭で、「青葉御膳」。季節感もあり、マグロ刺身はそんなに悪くなかった。

次の演目は、「時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)」

鶴屋南北の作。本能寺馬盥の場と愛宕山連歌の場。織田信長に嫌われて度重なる屈辱を受け、謀反を決意する明智光秀の物語。物語では武智光秀と名付けられた主人公を松緑が演じる。

馬盥(うま用のたらい)で酒を飲まされるのはそれは大層な恥辱だろうが、この盥は漆塗りで立派な家紋も入っており、馬用に見えない。まあ大名はたとえ馬用であっても立派な物を使うんだなあ(笑)切髪のエピソードも、偏執的な信長のパワハラぶりが異様な迫力。

屈辱に耐えに耐え、最後にキレる明智光秀には、ブログなどでみる松緑の実生活での、自分は正当に評価されていないという鬱屈やこじらせたプライドと屈折が投影されているかのようで、底光りした迫力があり、実に印象的だった。

現代の会社生活でも、才気走る部下でもなんだか面従腹背に感じたり、生意気に感じたりして理不尽にパワハラする上司はいる。頭が良い事を見せつけたり、上司が気付いてない事を進言したりすると、かえって逆効果になる事も会社生活では知っておかなければならない知恵。戦国時代も結構一緒だったんだなあと妙な感慨が。光秀は能ある鷹だったがツメを隠すのを忘れた。愛嬌があってゴマすりで馬鹿に見えたほうがパワハラ上司に対しては安全。秀吉はこの辺りの機微が良く分かったタイプだったのでは。しかしこのタイプは自分が上になると威張り散らして大変なことになったりするけどねえ(笑)

最後の演目は「男女道成寺(めおとどうじょうじ)」

清姫の道成寺伝説を題材に取った舞踊劇。白拍子桜子実は狂言師左近を海老蔵が、白拍子花子を菊之助が演じる。常磐津と長唄の掛け合いに、大勢の所化も舞台に登場。白拍子から狂言師だとバレる軽妙な舞踊に、引き抜きで次々変わる衣装も面白い。途中では大勢の所化坊主が客席に手ぬぐいを蒔く演出も。最後は鐘を中心に華やかな見得が決まる。結構時間が押して、打ち出しは9時ちょっと過ぎてたのでは。

外は傘が要るような要らないような微妙な雨。しかし、風が吹いてなくてよかった。

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