97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「新ばし 笹田」、久々に訪問。出会えてよかった。
月曜夜は、「新ばし 笹田」。実に久しぶりの訪問。2週間ばかり前の昼間、偶々店の前を通りかかると戸口から出て来た笹田氏とバッタリ。随分とご無沙汰してしまったので、この日の予約を取ったのだった。

カウンタいつもの席に着いて、昨今の店の景気など聞きながら。前の場所に開店したのが2005年の6月だったっけ。もう10年以上も有名店の地位を守り続けてて隆々と。そう誉めると、笹田氏は「もうやっとです」と謙遜するのだが。「新ばし しみづ」の親方も先週訪問した由。

客足には、時折ばらつきがあると言うが、この日もカウンタ、個室とも一杯。笹田氏は何にでも手を抜かないので、満席だと大変だと思うが、中で働く弟子の「海老蔵」と「松山ケンイチ」がもうすっかり慣れて手際よく働く戦力に。全員キビキビ働いて、料理出しもスムースに進む。

最初のお酒は宮城の大吟醸「宮寒梅」。ふっくらした優しい飲み口で癖はなく、サラリと上品な吟醸香と共に口中で呆気なく無くなる感じ。大吟醸の良い酒は肴要らずで酒だけ飲んでも旨いから、逆な意味で料理に合わないという気もするほど。

二杯目からは「伯楽星」純米吟醸に切替。

先付けは、まず涼しげな小さいガラスの器で供される冷やしトロロ。じゅんさいとキュウリが食感のアクセントに。今まで他の場所で食した冷やしトロロとは一体何だったのかと考え込むほど旨い。山芋を摺って出汁と合わせる普通の料理だが、出汁の具合が素晴らしい。笹田氏に「丼一杯でも食えるね」と云うと、「お代わりしますか」と笑われたが、こればかり食べる訳にもゆかない(笑)なんでもそうだが、もう少し欲しいくらいが程良いのだった。

笹田氏が、後で出しますがどれを焼きますかと、艶々と光る鮎が入った容器を見せてくれる。例年広島と島根を使っているのだが今年は雨の具合かあまり入荷せず、この日は熊本と高知。しかし笹田氏が選び抜いた素材。食べ比べで一匹ずつ焼いてもらうことに。

穴子の棒寿司。これもこの時期定番だが、江戸前のふっくら旨味のある穴子と関西風の甘味のある酢飯が押し寿司として絶妙に完成している。江戸前の寿司屋ではお目にかかれない味。

昨シーズンから始めたと思ったが、アワビの唐揚。揚げたての熱々が供される。表面だけに軽く粉を打ってから揚げ、香ばしい香りをまとった身肉には旨味が凝縮している。鶴八系の塩蒸しにもちょっと風味が似ているが、寿司種ではない一つの料理として昇華した逸品。

まだ立て込んでいないので、先週の台湾出張のことや、お店の夏休みの事など笹田氏や奥さんと雑談。「笹田」は8月11日から16日まで夏休みだったかな。11日が山の日で祝日とはつい最近まで知らずに営業する予定だった由。

ウニと湯葉のゼリーかけ。接待などで個室和食店などに行くと、「いつ作り置いたのか」と思う、気の抜けたような同工異曲の一品を出されることがあるが、ゼリーの深い旨さは眼を見張るもの。鯛の骨で濃い出汁を取っているのですと笹田氏の解説。真面目に作るとちゃんと何でも旨いという基本を思い知らされる。

壬生菜と油揚げの煮物は必ず供される定番。しかしまったく飽きない。お惣菜メニューであるが、実はお惣菜よりももっと手をかけているのがプロのプロたる技。しかし、この店に戻って来たなと安堵する味なのだ。

次はお造りが供される。塩釜のマコカレイ、高知天然のシマアジ、皮目を炙ったカツオ。どれも上品なポーション。シマアジもマコカレイも旨味があり、醤油が汚れない実に稠密で繊細な脂が身肉に。皮目を炙ったカツオは爽やかな旨味と初夏の香り。こちらは生姜の薬味醤油で。

お椀は幅広の器。鱧と新玉ねぎ、九条葱を合わせたしゃぶしゃぶ風だとか。新玉ねぎと鱧の組み合わせは初めて食したが、なかなか合う。最近取り入れた新機軸ですと笹田氏が。添えられた柚子胡椒を入れると、また味が変わって旨い。出汁は、溶け出す鱧の脂と野菜の旨味を受けとめ、しかし濃すぎず、なんとも具合が良い。

ここで先ほどからじっくりと焼いていた鮎が供される。熊本産と高知産。川の名前は失念してしまったが、もちろん天然。骨までしっかり火が通っており頭からガブリと食せる。香ばしい皮目、ホロ苦い藻の香りがするような内臓。ホロホロ崩れる淡泊な身。個体差もあろうが熊本産の方が若干香りが濃いか。ここで鮎を食したら、今年はもう他で頼まなくてよい気が(笑)松茸もそうだけど、一年に一度、きちんと旨いのを食すればそれでよいかなあ。蓼酢は眼の覚めるような鮮烈さ。鮎に合わせる事を発見した先人の知恵に感心。

煮物は、冬瓜と鴨の治部煮。この店で肉類が出るのは珍しい。冬瓜は、素晴らしく旨い出汁が隅々まで染みて、まさにトロトロに煮上がっている。極端な事を言うと鴨が無くても成立するね。

ここで食事となる。笹田氏自ら、炊飯土釜の炊き具合を時折香りでチェックし、お新香も供する直前に自分で切り分ける。大店では、ご飯付属のお新香など、下っ端が事前に切って盛り付けたものをラップかけて冷蔵庫に保存しているだろう。こんな積み重ねに、店主が真面目に自ら調理する店と、商売優先で量をさばく店との差が出てくるのだなあ。

ちりめん山椒、お新香、ワサビ漬け、赤出汁で炊きたてのご飯。日本人の至福。お焦げを入れたお替りも所望。最後はこれまた定番の冷製の白玉ぜんざい。薫り高い煎茶も結構。

どれもこれも実に旨い、陶然の2時間。勘定は前より若干上がったけれども、供される食材の質にもきちんと反映されており、納得のゆくもの。何時来ても裏切られることのないこの店に出会えてよかった。笹田夫妻の見送りを受けて、実に満ち足りた気分で家路に。


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