97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
壽新春大歌舞伎、昼の部を観た
先週土曜日は、歌舞伎座で壽新春大歌舞伎、昼の部を観た。結構団体客が入ってるような。

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最初の演目は、「大政奉還百五十年」と銘打った、「将軍江戸を去る(しょうぐんえどをさる)」

江戸城明け渡しと征夷大将軍辞任を直前に控え、謹慎中ではあったものの、主戦論者の意見に傾いて行く徳川慶喜に染五郎、将軍を諌める山岡鉄太郎を愛之助が演じる。刀のつば競り合いで火花が散るような真山青果独特の会話劇。

「松浦の太鼓」の殿様よりも、こちらの徳川慶喜のほうが、まだ染五郎には合っている印象。尊王と勤皇の違い、水戸藩の心得違いを命を掛けて箴言する山岡鉄太郎というのは史実とは違うらしいが、愛之助が口跡良くなかなか印象的に演じる。

ここで将軍が辞さなければ、大勢の無辜の江戸の民が戦火の犠牲になることになる。そう説得されて江戸を去る決意をする徳川慶喜。オリバー・ストーン監督の「ニクソン」。ウォーターゲート事件で罷免に直面したニクソンは補佐官に最後の打開策が無いか尋ねる。「軍を使いますか? そうした大統領も過去には居ました」と進言され、「それでは内乱だ」とニクソンは大統領職を辞する決意を固める。そんなシーンも思い出した。

栄華を誇った徳川家の将軍が、東京の外れ千住橋から江戸を去ろうとする寂しい朝。江戸から東京に変わろうとする新しい時代の夜明けに、ひっそりと消えていった最後の将軍。なかなか印象的なお話。爺さまの俳優でやるとまた味があるかもなあ。

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30分の幕間で花車膳。花篭食堂も大混雑。ほうおう膳よりも軽めでお昼には結構。

二番目の演目は、「大津絵道成寺(おおつえどうじょうじ)」

「京鹿子娘道成寺」を本歌に派生した道成寺物、河竹黙阿弥作の舞踊劇。愛之助が五役を早変わりで演じる。

大津絵というのは仏教画で、そこに描かれた絵が題材で、藤娘も有名な題材なのだとか。見たことないから分からないなあ。舞台のほうは、本家の狂言同様、引き抜きの衣装替えなどもあるが、「早変わり」や「傘下の入れ替わり」、「見台抜け」、「御簾への飛び込み」など、歌舞伎ならではのギミック満載。最後は「押し戻し」で染五郎演じる矢の根の五郎が登場するなど、飽きさせない演出に満ちている。

愛之助演じる藤娘の女形は初めて観たが、目元もクッキリ、結構印象的に成立している。その他、早変わりで鷹匠、座頭、船頭、鬼を演じ分ける。

最後の演目は、伊賀越道中双六「沼津(ぬまづ)」

呉服屋十兵衛を演じる吉右衛門は、花道からの軽妙な出が良い。駄賃稼ぎに荷物持たせてくれと持ちかけてくる雲助平作の歌六も、滑稽ながら味のある演技。客席に下りて楽屋落ちを取り交ぜて観客を笑わせながら歩く様も良い。そして花道に戻り、怪我をした平作に、十兵衛が印篭から妙薬を取りだして塗ってやるとたちどころに治り、雀右衛門のお米と行き会って家に招くところから、既に悲劇の萌芽が始まっている。

貧乏なあばら屋の風情に雀右衛門のお米のクドキが可憐に映えて、歌六の親父も実に人情味があり、安定感がある。雲助平作が実の父であると気付いた吉衛門十兵衛の思い入れも胸に響く。

最後は先に旅立った十兵衛に父娘が追い付き、暗闇の千本松原での、親子の情と義がせめぎ合う悲劇となる。ここでも吉右衛門の親を思う悲嘆が見事に成立している。近松半二作、義太夫狂言の名作。円熟の名優揃いで実に見応えがあった。

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