97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「メッセージ」と「あなたの人生の物語」
「メッセージ」を観た。映画の原題は「Arrival」。原作は、テッド・チャンのSF短編。「あなたの人生の物語」。



原作が収載された同名の短編集を読んで、新鮮な衝撃を受け、感想を過去ログに書いたのが2004年。SFの世界では、ヒューゴー賞、ネビュラ賞ダブル受賞という作品はまず外れがない。

原作は、エイリアンとのファースト・コンタクト物。地球に飛来したエイリアンとの意思疎通を図る女性言語学者が、時制を超えリニアな時の流れに束縛されない異星言語を調査、解読してゆくうち、自らの認識に変容を起こし、時空を超えた一種の超感覚知覚を身に着けることになる。全ての未来を知った上で織りなす娘との関係が詩情に溢れて描かれている。

最初にこの原作を映画化すると聞いた時、本当に映画化ができるのかと危惧したが、映画化は、原作をかなり忠実に踏襲しつつも、新たなエピソードも加えて成功している。原作を先に読んでいてもある意味深く感心する出来。むしろ原作を読まずにいきなり映画を観ると、ちょっと意味が分からない部分があるのでは。

もちろん、若干のモディファイはある。映画版「メッセージ」では、主人公母娘の関係についての描写は、若干薄くなっている。

しかし、最初から物理学者を登場させたのは正解。原作ではエイリアンとのコンタクトに出てくるのが言語学者のみ。クック船長が南洋の島で原住民と最初に交流するのなら、自分の顔を差して名前を呼ぶのから始めるだろうが(それでも大変な間違いが起こるのは映画でもカンガルーのジョークとして扱われている)外宇宙から飛来した人類と全く違うエイリアンと意思疎通するならば、英語を書いたりしゃべるよりも、やはり宇宙を統括する真理、純粋数学や元素周期律表等の情報交換から始めるのが普通だと思うものなあ。

原作で言う「ルッキング・グラス」の向こうに登場する霧に煙る巨大なタコ型エイリアンと彼らが投影する「異星文字」もなかなか印象的に映像化されている。主演のエイミー・アダムスも、原作の透明感をそのまま投影して実に素晴らしい。

そして原作が優れている場合、映画で原作にないエピソードを挿入すると大概失敗するものだが、「メッセージ」に新たに挿入されたエピソードは、印象的に作品全体の分かりやすさを高め、作品に深い陰影を与えている。

エイリアンが去った後、悲劇に終わりかねなかった中国軍のエイリアンへの総攻撃が何故回避できたのか。パーティーでの中国軍元帥と主人公の出会いは、映画の伏線を一気に回収するエピソードとして鳥肌が立つほど素晴らしい。脚本家が実に優れていたな。

最初から調査に同行する物理学者イアンと主人公との関係についても、原作を補完して、物語を実に分かりやすく俯瞰できる映画的な効果を上げている。自分の過去と未来が全て同時に俯瞰できるようになっても、悲劇に終わる愛娘との物語を選択する主人公。DVDが出たら必ず買わなくては。あ、まだ劇場でもやってるか(笑)


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