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歌舞伎座「二月大歌舞伎」、夜の部。高麗屋三代同時襲名披露公演。
日曜の夜は、歌舞伎座「二月大歌舞伎」、夜の部。

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歌舞伎座百三十年を寿ぎ、松本幸四郎改め 二代目松本白鸚、市川染五郎改め十代目松本幸四郎、松本金太郎改め 八代目市川染五郎の高麗屋三代同時襲名興行の二ヶ月目。

出かける前に録画していた、新幸四郎と草間彌生の対談番組を録画で。草間は今回の襲名祝幕の作者である前衛芸術家。

草間彌生の語りはパワフルで実に壮大だ。小さい頃から幻覚や幻聴に襲われていたというが、普通の人間が忘れ去った、神秘で原初な異世界とのチャネルが開いていたのだろう。既に老境に入った今でも、その存在感と作品の力強さには圧倒される。草間と新幸四郎が選んだデザインだという祝い幕に草間がつけたテーマは「愛を持って人生を語ろう」。歌舞伎座の大舞台でも違和感なく「歌舞いて」いる。

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この日は団体客が多く入場前から歌舞伎座前はごった返している。入場後も実に劇場のあちこちが賑やか。三階食事所「花篭」も予約受付直後から既に借り切り状態で食事予約が入れられなかった。後の幕間で確認すると、旅行会社のツアー、農協の団体、なんとかフレンド会などで満杯。

最初の幕が開く前に、二階の売店で弁当を買い早めの腹ごしらえ。

最初の演目は、一谷嫩軍記「熊谷陣屋(くまがいじんや)」。人形浄瑠璃から歌舞伎に移された名作。幕が開く前、「ウニャワラワ~」という鶏が絞められる断末魔のような鶏爺さんの声。久々だな(笑) NHKの高麗屋三代襲名ドキュメント、お練りの場面での「高麗屋あ~ぁぁぁぁぁ」という声も、この鶏爺さんだと聞いたが、あれはカメラの近くだったからか結構声は聞こえた。しかし広い歌舞伎座では、蚊の鳴くような声にしか聞こえないのだよなあ。

「熊谷陣屋」は菊五郎の義経、魁春の相模、雀右衛門の藤の方、左團次の弥陀六、鴈治郎の堤軍次、芝翫の景高と超弩級のラインアップが脇で新幸四郎の熊谷を支える。襲名披露ならではの豪華な配役で悪かろうはずはない。余談ながら、子供の頃から神戸は須磨の隣、塩屋と御影に住んだ身としては、舞台設定がなんだか懐かしいな。まあ源平合戦の名所でもあるのだが。

菊五郎は柔らかく高貴ながらも「一子を切らせる」侍の顔を描く。相手への同情と母の情が交錯する雀右衛門と魁春も堂々たる出来。脇が揃い過ぎると主役が食われるものだが、幸四郎は隈取りの迫力ある顔での出も印象的。見得も立派でしっかりとこなした印象。

二ヶ月続けての襲名披露公演、新幸四郎は、先月は「車引」に「勧進帳」。今月は「一條大蔵譚」、「熊谷陣屋」と、高麗屋のみならず播磨屋の持ち役にまで芸域を広げる気概を見せて実に多才なラインアップ。器用な「歌舞伎職人」ぶりを観客に見事にアピールした。どうせなら「暫」もやったらよかったのでは。それは海老蔵が怒るか(笑)

この日、ちょっと困ったのは、上演中、後ろの婆さん二人がずっとヒソヒソと喋っている事。そもそも話す者などいないから、声を潜めているつもりでも回りに随分と聞こえる。聞こえた話の内容では、歌舞伎役者の血筋や家系など結構詳しいのだが、観劇のマナーだけは、お気の毒に誰にも教わらなかったものと見える。

30分の幕間の後、「壽三代歌舞伎賑(ことほぐさんだいかぶきのにぎわい)」木挽町芝居前

木挽町の芝居小屋前、高麗屋三代襲名披露を楽しみに待つ座頭や鳶衆、手古舞が並ぶ中、高麗屋3名が到着。男伊達と女伊達が両花道に並び、ツラネを渡り台詞で朗々と語って見せる。江戸奉行も登場して賑やかに観客と手締めをして襲名披露を寿ぐ。

菊五郎、仁左衛門、玉三郎、左團次、又五郎、鴈治郎、錦之助、松緑、海老蔵、彌十郎、芝翫、歌六、魁春、時蔵、雀右衛門、孝太郎、梅枝、東蔵、秀太郎、猿之助、楽善、我當、梅玉、吉右衛門、藤十郎、綺羅星の如く大看板が揃って襲名を祝う祝祭の一幕。今回の襲名披露興行は、新歌舞伎座開業以来一番出演俳優が多いのだとか。

番頭役の猿之助はずっと左手に風呂敷を持っていたが、やはりまだリハビリが続いているのだろうか。もっとも4月のワンピースでは復活するようであるが。役者魂には頭が下がる。我當さんも久しぶりに見た。退場は左右を人に介助されるが、それをそっと隠すように手古舞の二人が後ろに続くのも粋な気配りの演出。

賑やかな祝祭が終わると、舞台は一点して木挽町芝居小屋の内部の想定。二代目松本白鸚、十代目松本幸四郎、八代目市川染五郎の3名だけが静かに舞台に現れ、襲名披露の挨拶を。賑やかな芝居前と対照的に、飾り気の無いすっきりした口上が良かった。

最後の演目は「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)祇園一力茶屋の場」。いわゆる「七段目」。実は見物するのは初めて。

祇園花見小路入り口にある一力茶屋は、以前「鮨まつもと」を訪問した時に前を通ったが、史実で大石内蔵助が遊んで居たのは別の場所であったとのこと。

奇数日と偶数日で「七段目」の平右衛門/お軽の役者が「仁左玉」と「海老菊」と交代になる趣向。実は何の考えもなく偶数日を押さえたのだが、年期の入った観巧者は両方観るのだろう。人気としては奇数日の「仁左玉」のほうで、既に席は空いていないのであった。

白鴎の襲名披露演目であるが、「七段目」は、白鴎自家薬籠中の本役。祇園で風雅に遊ぶ酔態に色気も気品も感じられ、酸いも甘いも噛み分けた大人物であるが、実は討ち入りの本心をひたすら隠すという重厚な腹もある。秘密を悟られてはお軽を殺さねばならぬという暗い決断、しかし平右衛門の妹、勘平の妻であると知って夫の敵討ちをさせる侍としての大きさ。古今の名作であるから作品も良く出来ているが、白鴎の役者としての骨格の大きさも見事に舞台に映える作品。

お座敷遊びの部分は実に賑やかで昔の観客は自分もお座敷遊びをしているような感覚を楽しんだのだろう。「見立て」のお座敷遊びでは高麗屋三代同時襲名をもじった楽屋落ちが。

お軽は、一心に夫の早野勘平を思い続ける恋女房であり、夫の本懐の為と郭に売られて今は遊女であり、そして平右衛門の可愛い妹でもある。これは結構難しい役であるが、菊之助は可憐に、柔らかく、印象的に成立している。

平右衛門、海老蔵は、腰の軽い奴で軽妙な役どころ。可愛い妹と再会した嬉しい思いもあるが、討ち入りの事情を知った妹を、忠義のためには殺さねばという、暗い感情も湧き出る。海老蔵の眼力はなかなか印象的。

菊之助も海老蔵も、きちんと成立していたと思う。ただ、お軽を菊之助ではなく玉三郎がやる所は、なんとなくイメージできるが、仁左衛門が平右衛門やると海老蔵とどう違うかというのは、ちょっと想像できない気が(笑)勿論、二左衛門のほうが唸るほど巧いのに決まっているとは思うけれども。

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