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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
銀座「鮨 み冨」初訪問。銀座新富寿し修行の職人が、新たな船出に。
「銀座 新富寿し」を初訪問したのは2001年。池波正太郎も昔通ったという、江戸前の古式を残す昭和元年創業の老舗。静かな店内。「お次は何を」などと客を急かす事もなく、静かに放っておいてくれる店。

当時は、週末の夕方、早い半端な時間に入店すると、ほとんど客は居ない。70歳を超えたと思しい老齢の職人と若い職人のコンビがおり、若い職人は手塩皿や飲み物を運ぶ係。握るのは老齢の職人だったが、あれこれ教えてもらって面白かった。店は、その上にもう一人二番手の職人がおり、そして店のオーナーである親方という4名体制だったかな。

そのうちに老齢の職人が引退。その後私は5年ほどアメリカに居たからブランクがあるが、帰国してまた訪問再開。やがて二番手だった壮年の職人が病気で引退。店は経営者の親方と、昔は一番若かった職人が一人前の職人になり、つけ場に立つ2名体制になった。カウンタに他の客が居ない暇な時には、あれこれ雑談もしたものだった。

ここしばらくご無沙汰していたのだが、最近、銀座で寄ってみるかと前を通ると「新富寿し」には営業している気配がない。ググっても情報無いので、Twitterで検索してみると、あの一番若かった職人のアカウントがあり、22年の修行の後、昨年末で独立のため退店し、7月30日から銀座で店を開くとの記事が。

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「銀座 鮨 み富」
中央区銀座5-10-11川島ビル2階
電話03-6263-9889

電話番号も掲載されていたので、開店の週金曜日を予約。仕事帰りに寄ってみた。

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「新富寿し」から一筋三原橋交差点寄りに入った通り。年季の入ったビルの2階。店内は新店らしく清々しい白木のカウンタ、8席のみ。席につくと独立した三橋新親方は「どうもご無沙汰しました。予約の電話のお声でひょっとしてと思っていたのですが」とちゃんと覚えてくれていた。何も知らせずに「新富」を退店したので、もう来ては貰えないと思っていた由だが、ネットの力は素晴らしいですな(笑)

カウンタは立派なヒノキ。資金に余裕ある訳ではないが、つけ台だけは寿司屋の看板なので良いものを使いたかったと。寿司職人としては確かに一生モノ。ガラスケースも種札も無し、寿司種は白木の箱、生姜が入れ物ごと出てくるのは新富寿し流。しかしメニューもあり、握りだけのコースやつまみと握りのコースもリーズナブル。お好みの注文でもよいか確認すると「勿論です」と三橋親方。

「新富寿し」退店の経緯を聞いてみると、22年の修行を経て昨年末で退店する旨を伝えたのだが、特段慰留されるでもなく淡々としたもの。後は一人でやるか、誰か雇うか等、親方は決めかねていた様子。

ただ、ツメやカンピョウの仕込みは何十年も雇った職人達に任せきりだったので、親方自身が忘れており、「もう一度教えてくれ」と頼まれて退店前に教えたと。これも恩返しというのでしょうか(笑) まあ、モノに拘らない飄々とした感じの人ではあった。結局、今年になって「新富寿し」は営業していないようだが、最近まで気が付かなかった。

お酒はメニューにあるもの以外に月替りのお勧めがある。新潟だったかの生酒を所望。ふっくらスッキリとした酒。まずタイ。湯引きにした皮目に旨味がある。シマアジも上質。煮アワビは「新富」伝来。煮貝とも言うべき古式の仕事だが、ツメをつけずにつまみで食すと酒のツマミによろしい。タコもつまみで。塩や醤油は塩は必要ない仕事加減。

お酒もおかわりして、三橋親方とも「新富」時代の事など仕事の合間に雑談。なんと、以前病気で退店したと聞いた、二番手だった兄弟子は、体調は復活しており、昼はこの「み冨」の仕込みを手伝ってくれているのだとか。店名の「み富」の「冨」は勿論「新富」から貰ったのだが、「み」の方は自分の「三橋」と手伝ってくれている兄弟子の名字も「三」で始まるので、それにちなんだのだとか。その前に引退した爺様職人もまだ健在だとか。雇われの職人弟子同士の繋がりというのも、なかなか良い話。

つまみは続いて漬け込みのハマグリ。結構しっかりと味がついているのが古式を残す新富流。タイラギもあったが、石垣貝もお勧めというのでそれも生で。クリーミーな甘味。

この辺りで軽く握りに。

勿論、お好み、1貫ずつでもまったく問題無し。昆布締めも新富流の強い締め。中トロを1貫。コハダは3匹つけの新子。身肉は薄いが爽やかな新モノの香り。1匹丸づけの新イカは仄かな甘味が良い。良き頃の「新富寿し」を思い出すなあ。アナゴも柔らかな煮上げで濃いツメがつく新富流。最後はカンピョウ巻。最近のカンピョウしか知らない人はおそらく誰でも驚く、「鶴八」系よりも更に一段甘辛のカンピョウ。しかし、店に置いてある寿司種全体の仕事のバランスを考えると、やはりこれしかないと思わせる濃い味。

勘定は連れが居たので2名分だったが、銀座とは思えない実にリーズナブルなもの。ここも「新富寿し」を踏襲している。

三橋親方の言うには、最初に入って22年修行した「銀座新富寿し」の良い所を自分の店で残したいと。年中無休、昼から夜まで通し営業。お好みでもおまかせでもお客のお好きなように。値段もリーズナブルに押さえてと。有名店から独立する昨今の若い寿司職人は、市場から選り取りで最高級品を引いて「おまかせのみ一人25000円」の営業などというのもよく聞く話であるが、この銀座「鮨 み冨」の志は素晴らしいと思う次第。しかし、鮨種も営業形態も恐らくこれから自らの商売として微調整がまだまだ入ってゆくだろう。

古き酒を新しき革袋に入れて担いだ、伝統の技を身につけた新しい水夫が、自らの新しい船に乗り込み、遥かな未来へと続く海原に漕ぎ出したのだ。応援すると共に成功を祈りたい。

【店舗情報】
「銀座 鮨 み富」
中央区銀座5-10-11川島ビル2階
電話03-6263-9889


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