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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
歌舞伎座、「芸術祭十月大歌舞伎」昼の部を見た。
先週の土曜日。歌舞伎座、「芸術祭十月大歌舞伎」昼の部に。十八世中村勘三郎七回忌追善公演。売れ行きから推察すると、人気は仁左衛門が助六を演じる夜の部のほうだろうか。筋書も秋の雰囲気。時の経つのは早いなあ。

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お昼の花篭食堂は一杯で予約が入らなかったので、団体客が多いのだろうか。二階のソファは開場直ぐに一杯になるのだが、この日は割と空いている。何時もの客層と違うのかもしれない。

最初の演目は、河竹黙阿弥作、「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」から大川端庚申塚の場

黙阿弥の七五調の名セリフに乗せて、春の朧月が浮かぶ大川端。たまたま顔を合わせた同名の悪党3名が意気投合して、最後は義兄弟の契りを結ぶという、歌舞伎の様式美に満ち溢れた場面。

「月もおぼろに白魚の、篝もかすむ 春の空」の語り出しは有名。隅田川での白魚漁は当時は春の風物詩だったのだろう。昔は白魚の寿司なんてものも絵に残っている。弁天山美家古でも出してたっけ。「こいつは春から 縁起がいいわえ」というセリフも歌舞伎を離れて慣用句化している。

七之助のお嬢吉三は美しく、女の風情から、夜鷹から百両を強奪する場面で急にドスの効いた男の悪人の声に変わるコントラストが印象的。ただ、夜鷹が金を取られる所はえらくアッサリした段取りで、鶴松はあまり抵抗する間もなく川に消える。

お坊吉三の巳之助、和尚吉三の獅童共に歌舞伎のアイコニックな作品で頑張っていると思うが、以前見た、海老蔵、松緑、菊之助の「三人吉三」のほうがより鮮やかで印象的だったかな。着物の紋や台詞の端々にも八百屋お七があれこれ投影されている物語とはイヤホンガイドの説明。

次の演目は、「大江山酒呑童子(おおえやましゅてんどうじ)」

松羽目物のしつらえ。花道の出などには「勧進帳」のイメージが投影されている。四天王を従えて、扇雀の源頼光は義経の如し。鬘桶の蓋で酒吞童子が酒を飲む場面などもそうだ。

酒吞童子、最初の登場は白塗りの童子姿。勘九郎は来年のNHK大河ドラマの関係で減量したと聞いたが、確かに顔がほっそりしたような。身体が絞れたからか舞踊の動きも心なしか大きく迫力があり、キレが増しているような。酔いが段々と回りつつ、軽妙に踊るところはなかなか面白い。

酒をしたたかに飲んで酩酊した酒吞童子は酔いつぶれて休んでいる停でいったん舞台から消えるのだが、後シテとして鬼神の姿で再び登場。酔いと毒が両方さんざんに回ってふらつきながらの立ち回りが面白い。勘九郎の舞踊には親父のDNAが流れているんだね。

鬼は最後に退治されるものと物語では決まっている。しかし、歌舞伎では見物がガッカリするから、主人公は死なない。酒吞童子は討ち果たされた後、またムクリと起き上がり、赤い台に乗って大見得を切って大団円。竹本に語らせるのが趣向だというが、歌舞伎らしい派手さで飽きさせない舞踊だった。


最後の演目は、「佐倉義民伝(さくらぎみんでん)」

初代吉右衛門の当たり役で、18世勘三郎もコクーン歌舞伎で主演。下総佐倉の領主の厳しい年貢と圧政に苦しんだ農民のために、名主、木内宗吾が命を掛けて江戸の将軍に直訴した事件を扱った歌舞伎。

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歌舞伎座2階ロビーには、主人公のモデルになった佐倉惣五郎を祀る、千葉成田市の宗吾霊堂ご本尊が出開帳しており法要も行われたとか。

荒廃する村とそこに残った農民の塗炭の苦しみに胸を打たれ、領主に訴えるが容れられない。かくなる上は、たとえ死を賜っても江戸の将軍に直接訴え出なければならないと決死の覚悟をする木内宗吾男を白鸚が印象的に演じる。

奥方のおさんが七之助で年齢的には若干つり合いが取れないが、これはまあ仕方がない。歌六の渡し守甚兵衛は、実のある親父として木内宗吾に人情をかけ、印象的に成立している。

「子別れ」のところでは子役が盛大に「泣き」を入れて大奮闘であった。ただ派手さのない筋書であるから、あんまり泣きばかりだと全体に舞台が暗い感じになるのは致し方ないか。

木内宗吾も、自らの死だけではなく罪が一族郎党に及ぶ事も腹の底では覚悟しているはず。正義は一種の狂気でもある。村人を助けるために直訴したなら、今、自分との別れを泣いている妻も子供達も罪を得て死ぬ事になる。子供と抱き合う涙だけではなく、そんな黒光りした覚悟が一瞬でも見えるともっと凄みが増したと思うが。

封建社会では直訴はご法度。訴状を返したように見えて実は返したのは表書きだけ。中身は受け取ったという、知と情に溢れた貫禄を見せるのが高麗蔵演じる松平伊豆守。 これも面白い作劇の手法だが、イヤホンガイドで聞いていたから分かったものの、何も知らずに見ていたら分かったかな。

最後の場面では、勘九郎が白塗りで江戸の殿様、徳川家綱役。ただ、あまりしどころのない役柄という印象あり。






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